大型の工作機械の展示会、Euromold。その11番ホールにて3Dプリンタなど最新の3D造形技術を取材したリポートの第2弾では、3Dスキャナからモデリング用ソフト、そして方式の異なる3Dプリンタなど、これからの3D造形業界を形作る主要なツール群を紹介したい。
2Dプリンタで年賀状を作る場合でも、プリンタとPC本体だけではなく、デジタルカメラやスキャナで取り込んだ写真、専用ソフトで入力した文字、といった素材があってはじめて完成する。それと同様に、3D造形技術も3Dプリンタという花形製品の回りを固めるように、3Dスキャナや3Dマウス、モデルリングソフト、解析ソフトなど多彩な製品が存在する。
20年も前からあった3Dプリンタが、最近急速に注目を集めている理由は、クリス・アンダーソン氏の著書「Makers」の世界的ヒットもあるが、それだけでなく、こうした周辺のハードウェア/ソフトウェアも含めた環境が急速に整ってきたことは大きく関係があるはずだ。
そこでこのリポートでは、筆者が2日間のEuromold取材で見てきた3D造形技術の生態系を構成する製品群を、おおまかに「入力」「編集」「出力」の3部構成に分けて紹介していきたい。
なお、当然ながら、すべての製品をカバーできているわけではなく、時間の都合で主要な製品でもいくつか取材もれがあることはあらかじめお断りしておきたい。また、取材後、米政府によって世界シェア1位の3Dプリンタメーカー、StratasysとObjetの合併が正式に承認された。記事中で触れているObjetの製品は、今後はStratasysのObjetブランドの製品として展開される予定だ。
ここ数年で3Dプリンタの技術も大幅に進化してきたが、同時に立体物をスキャンして、PC上で加工可能な3Dデータに変換する3Dスキャナもかなり充実してきた。
3Dスキャナの多くは、被写体の上に3種類前後のフリンジパターンと呼ばれる光の縞を投影したうえで撮影し、形状を取り込む仕組みになっている(縞模様の歪みを見て被写体の起伏を計っている)。
被写体を1枚撮影しては角度を変え、もう1枚撮影するという形で、写真を数枚撮影していくと、PCの側で画像を認識して1つの3Dオブジェクトとしてつなげてくれる。3Dスキャナによっては、ドライヤーのように片手で持って撮影するタイプのものや、ロボットアームで撮影するものもあり、製品によってはリアルタイムで形状を認識して(カメラを動かすと、どんどんPC上の3Dオブジェクトの形が整ってくる)ものまである。
3Dスキャナの用途には、すでに形としてできている物体をデータ化し、PCに取り込む「リバースエンジニアリング」と呼ばれる用途で使うこともあるが、精密なスキャナは工業製品などにゆがみなどが起きていないかを検知するための測定システムとして使われるものも多い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.