“透ける”スキャナに興味津々のA4スリム複合機――「HP ENVY120」を試すこの発想はなかった(3/4 ページ)

» 2013年03月27日 12時30分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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充実したモバイル/クラウドプリント機能も魅力

 HPの複合機は早くからモバイル/クラウドプリントに着手してきただけに、ENVY120も豊富なネットワークプリント機能を用意している。

 ENVY120には従来からの「HP ePrint」(Eメールを介して遠隔地のプリンタでワイヤレス印刷する機能)、「Print Apps」(パートナー企業が提供するプリンタ専用アプリからさまざまな情報を印刷できる機能)、「HP Printer Control」(iOS/Android端末の写真や文書をワイヤレス印刷したり、スキャンしたデータを端末に直接保存できるアプリ)に加えて、「ワイヤレスダイレクト」と「スキャン to 電子メール」という新機能を追加してきた。

 ワイヤレスダイレクトは、Wi-Fi対応デバイスとENVY120を直接ネットワークで接続するための機能だ。これにより、無線LANルータやアクセスポイントがなくとも手軽にワイヤレスプリントが行える(同時接続は5台まで可能)。プリンタ側はワイヤレスネットワークとの接続を維持したまま、ワイヤレスダイレクトでの接続が可能だ。なお、この機能は初期設定でオフになっているので、操作パネルから設定する必要がある。

 スキャン to 電子メールは、その名の通りスキャンしたデータを指定のメールアドレスに送信するものだ。PCなどを介さずに複合機単体で送信できるため、FAXのような手軽さで利用できる。複数ページを1つのデータにして送信することも可能だ。スキャンの操作メニューから保存先を「電子メール」にすることで、この機能が利用できる。

「ワイヤレスダイレクト」の機能は初期状態でオフに設定されており、使うには手動でオンにする必要がある(写真=左)。「スキャン先の選択」で「電子メール」を選ぶと、スキャンしたデータを任意のメールアドレスに送信できる(写真=右)

 HPの独自機能以外にも、アップルの「AirPrint」、Googleの「Google Cloud Print」といった機能にも引き続き対応している。

 一方、PC用の付属ソフトは必要最小限の構成だ。Windows用はプリンタの設定やメンテナンスなどをまとめた「HP プリンタアシスタント」、Mac用はプリンタの設定やメンテナンスを行う「HP Utility」、スキャンユーティリティの「HP Scan 3」を用意している。

写真プリント/カラーコピー/スキャンの画質は?

 ENVY120の印刷品質も見ていこう。ここでは純正写真用紙へのカラー写真印刷、普通紙へのカラーコピー、そしてカラースキャンの結果を掲載した。ただし、印刷結果の掲載サンプルについては、印刷物をスキャンしたデータなので、色再現性は高くない。サンプルは参考程度にとどめ、評価は本文を確認してほしい。

 まず写真印刷では、HPの純正写真用紙である「アドバンスフォト用紙」のL判に対して、5枚の写真を最高品位の印刷設定でプリントした結果を掲載している。

・プリントサンプル1――カラー建造物(設定:最大dpi)

 細部の描写力は高く、絵画や装飾の細かな模様も再現できた。シャドーに締まりがないのは残念だが、カラーバランスは整っており、全体の印象は悪くない。

印刷サンプル(画像=左)と元画像(画像=右)

・プリントサンプル2――カラー風景(設定:最大dpi)

 微妙な色合いで再現が難しいサンプルだが、カラーバランスが保たれ、斜光の赤みも残せており、写真の雰囲気は保たれている。シャドーに力がないため、連なる木々の陰影が少し平坦になっているのは惜しい。

印刷サンプル(画像=左)と元画像(画像=右)

・プリントサンプル3――モノクロ風景(設定:最大dpi)

 シャドーに締まりがないのは、ほかのデータと同様だ。一方のハイライトでも白飛びが散見される。シアンがかぶっているほか、シャドーがマゼンタに転んでおり、こうしたモノクロ写真の再現性は高くない。

印刷サンプル(画像=左)と元画像(画像=右)

・プリントサンプル4――カラー人物(設定:最大dpi)

 カラーバランスがよく、人肌や蛍光色のブロックの色合いが自然に出せている。ただし、シャドーとハイライトの端ではかなり調子が欠落しているため、黒いタキシードのシワや白い毛布の質感が消失してしまった。

印刷サンプル(画像=左)と元画像(画像=右)

・プリントサンプル5――カラー静物&グラデーション(設定:最大dpi)

 ほんのわずかにシアンが乗っていることと、黒の締まりが足りない点を除けば良好な結果だ。細部の描写にも不満がなく、ラベルや色鉛筆のケースの文字も判読できる。総じて作品としての写真を出力するには向かないが、コンパクトデジカメやスマートフォンで気軽に撮った写真を印刷して周囲に配るといった用途では、十分対応できる画質を確保している。

印刷サンプル(画像=左)と元画像(画像=右)


 カラーコピーの出力については、A4普通紙に高画質モードで出力した結果を掲載している。出力した画像データは静物とグラデーションパターンを組み合わせたものだ。

・カラーコピーサンプル――カラー静物&グラデーション(設定:高画質)

 高画質モードでの出力サンプル。普通紙にしては濃淡がしっかりと出せている優秀な出力だ。写真用紙での印刷と異なり、普通紙では黒の締まりもよく、顔料ブラックインクが効いている。高濃度の部分でも紙にたわみが生じていないのは好印象だ。ちなみにドラフトモードの出力だともう少し色が浅く、粒状が目立つようになる。

カラーコピーのサンプル


 印刷物をスキャンしたサンプルは、静物とグラデーションを組み合わせたカラー写真を600dpiで取り込んだデータを掲載した。

・スキャンサンプル――カラー静物&グラデーション(設定:600dpi)

 ぱっと見は色鮮やかで見栄えがするが、一様にシアンが薄くかぶっており、シャドーにはグリーンも乗っている。階調もシャドーがつぶれがちで、果物などは立体感が損なわれてしまった。テキストやチャートの読み取りはともかく、高い色再現性を求めるような写真のスキャンは少々苦手のようだ。

スキャンサンプル(画像=左)と部分拡大(画像=右)。右の画像はクリックすると、600dpiのスキャン画像の一部を等倍表示

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