パワーマネジメントは、AMDがアーキテクチャの開発とともに注力している分野だ。同社は、2012年2月の投資家向け会議「AMD Financial Analyst Day 2012」においても、パワーマネジメント開発に関するロードマップを示しており、TemashとKabiniでは新しい技術が採用されている。
同社でパワーマネジメントの開発を担当するサミュエル・ナフチガー氏(Senior Fellow)は、「CPUやグラフィックスコアが必要とする電力はアプリケーションごとに異なる」として、TemashとKabiniでも、AMD Aシリーズが採用しているTurbo Coreと同様に、CPUとグラフィックスコアが電力を都合しあうことで、アプリケーションが最大の性能を発揮できるようにしていると説明する。
しかし、ここで問題となるのがCPUやグラフィックアスコアの発熱だ。そこでAMDは、TemashとKabiniの半導体設計において、CPUとグラフィックスコアを隣り合わせに配置し、負荷の高いコアの発熱を、負荷が低く低温で動作しているもう一方のコアがヒートシンクの役割を果たし、分散できる構造を取っている。
しかも、ナフチガー氏によれば、同様の制御はCPUコア内部でも行なうことができ、「負荷が高いCPUコアに、そのほかのコアの余剰電力を渡すことで、より高クロックで動作させつつ、これらのコアを高負荷コアのヒートシンクとして利用することもできる」と語る。

Temash/Kabiniのコア配置と、アプリケーションごとの負荷(TDP)を示す資料(画面=左)。CPUコア同士でも、積極的にほかのコアの余剰分電力を都合しあうことで、高性能化を図る一方で、ほかのコアが熱を伝導することで放熱を補助する(画面=右)また、これら新APUでは、CPUコアやグラフィックスコアだけでなく、FCHやディスプレイコントローラにもハードウェアモニターを搭載しており、APU内のTurbo CoreマネージャーがAPU全体で効率よく電力を都合できるようにしている。さらに、TemashとKabiniでは、低負荷時にメモリの動作クロックを落とすことで、省電力化を図る機能もサポートしており、プラットフォーム全体で省電力化を図っている。
Temashでは熱設計の制約が大きいタブレットを、冷却機構を備えたドッキングステーションと接続することで、最大2倍のTDP(Thermal Design Power)でAPUを動作させられる「Turbo Dock Technology」もサポートしており、この機能もAPU内のTurbo Coreマネージャーが、APUの温度などを監視しながら、より高速に動作できるようにしている。これにより、ハイブリッドシステムでは、タブレット形態ではバッテリー駆動時間を優先し、キーボードを備えるドッグと接続したクラムシェル形態では、エントリーノートPC並みのパフォーマンスを発揮できるようになるわけだ。

ハイブリッドシステムでは、Turbo Coreマネージャを積極的に活用することで、冷却機構を備えたドッキングステーションと接続すると最大2倍の消費電力をAPUに供給し、パフォーマンスアップを図ることができる(画面=左)。Turbo Dock Technologyによるパフォーマンス向上幅(画面=右)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.