AMDの新APUの純粋なCPU性能は、一般的なアプリケーションでの比較でみると、同社が競合に挙げているIntelのCore i3などに及ばないことも多い。
しかし、同社でソフトウェアデベロッパのサポートなどを統括するニール・ロビンソン氏は、「省電力プラットフォームでは、グラフィックスコアを有効に使うことでソフトウェアの高速化を図れるOpenCL対応がトレンドとなる」とし、Adobe Systemsの次期PhotoshopやCorelのAfterShot Proなど、OpenCL対応アプリケーションにおけるAMD APUの優位性を説く。
また、OpenCLによるグラフィックスコアを利用した汎用コンピューティングによって、タブレットでもジェスチャー認識やフェイス認証などのナチュラルインタフェースのサポートが容易になるとアピール。Temashでは、一般的なWebカメラを使ってジェスチャー認識を実現するeyeSightの技術デモを披露し、3Dカメラも必要とせず、かつ暗い場所でも、グラフィックスコアの演算性能を生かして正確なジェスチャー認識を行なうことができると説明した。

ジェスチャー認識のデモ。eyeSightのグラフィックスチップを利用した光量補正技術を使うことで、暗いところでも精度の高いジェスチャー認識を実現する。なお、スタンダードなWebカメラを使ったジェスチャー認識では、ビデオ処理の負荷が高くなるが、グラフィックスチップを活用することで、CPUだけなら150ミリ秒かかる処理も、5ミリ秒で済ませることができるというさらに同社は、BlurStacksの技術を利用し、Windows上でAndroidアプリを動作させることができる「AMD App Player」や、AviaryのOpenCL対応写真編集技術を利用した「AMD Photo Composer」をタブレット向けに提供することも明らかにするなど、APU対応のソフトウェアエコシステムの拡大を図っていく意向も示す。
その背景には、PCにはなじみのないユーザーも多いタブレット市場において、AMD APUの優位性をアピールすることにより、先行する競合他社との差を一気に詰めようという考えが見て取れる。
そして、年末に市場投入される予定の次期主力APU“Kaveri”(カヴェリ:開発コード名)では、CPUとグラフィックスコアの連係をさらに高めることで、新しいソフトウェアエコシステムへの移行を加速させる計画だ。

AMDのロードマップ。年末にはCPUとグラフィックスコアの連係を高めた主力APUのKaveriを投入する計画だ(写真=左)。AMDと主要ARM陣営が推進するCPUとグラフィックスチップが密接に連携して処理を行なうヘテロジニアス・コンピューティング環境が2016年には多数を占めると予想(画面=右)
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