AMDは5月23日、次世代省電力APU(Accelerated Processing Unit)として、タブレット端末向けに“Temash”(テマシュ)を、ノートPC向けとして“Kabini”(カビニ)を開発してきた。この両APUのCPUコアには、同社にとって第2世代の省電力CPUコアとなる“Jaguar”(ジャガー)を採用し、アーキテクチャを刷新している。
Jaguarは、同社が「Catシリーズ」と呼ぶx86省電力CPUコアの第2世代製品で、現在AMD EシリーズやZシリーズで採用されている“Bobcat”(ボブキャット)コアの後継だ。このことは、これまでエントリーモデルとして展開してきたCPUコアを、メインストリーム市場にも展開することを意味する。
同社で製品戦略などを統括するリサ・スー上級副社長は、その狙いを「PC市場に新たに加わり、著しい成長が予想されるデバイスに注力するため」と説明している。つまり、タブレットや、クラムシェルタイプのノートPCにもタブレットにもなるハイブリッド機、タッチスクリーンを備えた小型のノートPCなどをメインターゲットにすべく、APUの省電力化を加速した形だ。
同氏はさらに、IntelのCPUも半導体エリアにおけるグラフィックス機能の割合を増やし続けていることを引き合いに、「これらの新しいデバイスでは、グラフィックス機能の重要性が増している」として、同社の持つ優れたグラフィックス技術を生かし、変革期に差しかかったPC市場における勢力拡大を図っていく意向を示す。
“Temash”は、おもにタブレット端末やハイブリッド型端末向けに省電力性を追求したAPUだ。その最上位モデルとなる「AMD A6-1460」は、CPUにJaguarコアを4基搭載し、2Mバイトの2次キャッシュを共有。グラフィックスコアには、現行のRadeon HD 7000シリーズと同じGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャを採用したCompute Unitを2基搭載し、128コアを統合しつつ、そのTDPは8ワットに抑えている。また、同社は同APUのカットオフ版として2 CPUコアモデルも用意し、特に「AMD A4-1200」は、グラフィックスコアの動作クロックは225MHzに下げられるが、TDPを3.9ワットにまで引き下げている。
同社でモバイルAPUの製品戦略を統括するケヴィン・レンシング氏は、「従来製品である“Hondo”(開発コード名、AMD Zシリーズ)に比べて、CPUコアでは最大20%、グラフィックスコアの3D性能では最大100%、演算性能では最大75%のパフォーマンスアップを実現し、タブレットでもジェスチャー認識や顔認証といった、最新のユーザーインタフェースを実現できる」と、その基本性能の高さをアピールする。
ライバルとなる“Clovertrail”ことIntelのAtom Z2760とのパフォーマンス比較を披露し、グラフィックス性能のみならず、暗号化方式であるAES(Advanced Encryption Standard)のハードウェアアクセラレーション、OpenCL、Webアクセラレーションなどでもアドバンテージがあると説明した。
また、Temashではプラットフォーム機能も強化されており、USB 3.0に対応するほか、DisplayPort 1.2に対応し、最大2560×1600ピクセルの2画面表示をサポートする。さらに、レンシング氏は「AMD Turbo Dockテクノロジに対応したドッキングステーションで、タブレットの冷却性能を向上させることにより、最大40%のパフォーマンスアップを可能にする」として、台湾のCOMPALと共同開発したAMD Turbo Dockテクノロジ対応システムも公開した。
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