一方、メインストリーム市場向けのAPUとされる“Kabini”(カビニ)は、半導体そのものはTemashと共通だが、TDPを引き上げることで、より高クロックで動作するようにしている。同社は、このKabiniの4コア製品をAMD A6またはAMD A4として、2コア製品をAMD Eシリーズとして展開する計画だ。そのラインアップは下の図版とおり、Kabiniの最上位モデルとなるAMD A6-5200では、CPUクロックが2GHz、グラフィックスクロックが600MHzと、Temashからは大幅なクロックアップが図られている。
レンシング氏は、「Kabiniは消費電力あたりのパフォーマンスに優れた製品」と位置付け、現行のTrinityの低消費電力版に比べても3D性能(3DMark 11)で66%、プロダクティビティ性能(PCMark 7)でも42%の“電力効率”を発揮するというベンチマーク結果を披露した。
ただし、この値は、TDP 22ワットのTrinityコアベースのAMD A4-4355Mと、TDP 15ワットのKabiniコアベースのAMD A4-5000を比較したもので、素のプロダクティビティ性能(ベンチマークスコア)では若干劣るが、グラフィックス性能は大幅な性能アップを実現していると見てよさそうだ。
AMDはさらに、AMD Aシリーズの上位モデルを、Trinityの改良版となるRichlandコアベースへと移行することで、さらなるパフォーマンスアップを図る。同社はRichlandコアベースの製品を、AMD A10と同A8として展開するとともに、ジェスチャー認識によるユーザーインタフェース機能や、顔認証によるログイン機能などを盛り込む。
Richlandは、半導体そのものは現行のAMD AシリーズであるTrinityと共通だが、パワーマネージメント機能の見直しなどを図ることで省電力性を向上させたほか、半導体製造プロセスの成熟度が上がったこともあり、高クロック化が果たされている。また、メモリもDDR3-1866のサポートが追加され、高解像度表示の際のグラフィックス性能向上に役立っている。
Richlandに統合されているグラフィックスコアは、TemashやKabiniで採用されたGCNより1世代古い、VLIW4世代となるが、それでも「グラフィックス性能におけるパフォーマンス差は歴然だ」(レンシング氏)としてデモを披露。SIMCITYなど最新ゲームタイトルでもストレスなくプレイできるうえ、ゲームプレイ中に一部のオブジェクトが描画されないなどのトラブルもないと、そのアドバンテージを強調した。
また、同社は“Lightning bolt”(ライトニング・ボルト)のコード名で開発されてきた、Display Port 1.2とUSB 3.0をシングルポートでサポートするThunderboltの対抗規格「Dock Port」や、描画遅延の少ないワイヤレスディスプレイ技術「AMD Wireless Display」を正式に発表した。
レンシング氏は、「今後のコンピューティングデバイスでは省電力性と優れた演算性能を両立するために、グラフィックスコアを利用したアクセラレーションや新しいアプリケーションが重要となる」と見ており、同社のAPUがそのトレンドを先取りしたものだと説明。同社は、これを受けてTemashなどのアーキテクチャ詳細や、グラフィックスコアを積極的に利用したOpen CLアプリケーションの現状などのアップデートも行なった。
アーキテクチャの詳細は、別の記事で改めて解説する。
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