プレイステーション 4にも搭載される「Jaguar」コアって何だ?新世代APUでIntelとの差を詰めるAMD(2/4 ページ)

» 2013年05月29日 11時58分 公開
[本間文,ITmedia]

GCN世代の統合グラフィックスコアを採用、性能を2倍以上にアップ

 新APUに統合されたグラフィックスコアは、Radeon HD 7000シリーズで採用されたGCN(Graphics Core Next)ベースに変更され、DirectX 11.1をサポートした。GCNでは、16基のベクタ演算ユニットを4つ備えたCU(Compute Unit)を最小単位としているが、新APUではこのCUを2基、合計128グラフィックスコアを統合する。

 そのパフォーマンスは、Temashを例に挙げると、“Hondo”(ホンド)の開発コード名で知られるAMD Zシリーズの倍以上のパフォーマンスを発揮するという。

 GCN最大の特徴は、各CUに独立した命令発行・制御機能を備えるほか、スカラ整数演算ユニットも統合し、グラフィックス処理だけでなく、GPGPU(General Purpose Graphics Processing Unitの略)とも呼ばれる、グラフィックスコアを利用した汎用演算処理に最適化されていることだ。

 AMDではTemashとKabiniに統合したグラフィックスコアに2つのCUを用いているが、汎用演算処理のフロントエンドとなるACE(Asynchronous Compute Engine)を、Radeon HD 7970の倍となる4基搭載する。同社でグラフィックスのアーキテクチャ開発を担当するマイケル・マンター氏(Senior Fellow Architect)は、「各ACEが最大8つのGPGPUタスクを制御でき、TemashとKabiniでは合計32のタスクを実行できる」と説明。新APUの最上位モデルとなる「AMD A6-5200」では、グラフィックスコアが153.6GFLOPSの演算性能を実現しており、写真やビデオ編集、ジェスチャー認識などで、グラフィックスコアを汎用処理に利用できるOpenCLアプリケーションでは、大幅なパフォーマンスアップを図れるとした。

TemashとKabiniに統合されたRadeon HD 8000グラフィックス(画面=左)。GCNの中核をなすCUのアーキテクチャ(画面=右)

汎用コンピューティング処理を制御するACEは、単体グラフィックスカード最上位のRadeon HD 7970の倍となる4基に強化されている(画面=左)。TemashとKabiniのグラフィックスアーキテクチャを説明するマイケル・マンター氏(画面=右)

Radeon HD 800グラフィックスのビデオ機能

 なお、ビデオ機能については、同社がUVD(Universal Video Decoder)と呼ぶビデオデコーダと、VCE(Video Codec Engine)と呼ぶビデオエンコーダを搭載するのは、従来製品と同様だ。また、ディスプレイインタフェースはDisplay Port 1.2とHDMI 1.4、またはDsub 15ピン(アナログRGB)の2系統出力に対応し、4Kディスプレイもサポートする。

 一方、TemashとKabiniは、メモリコントローラにシングルチャネルのDDR3インタフェースを備え、1.25ボルトや1.35ボルト駆動の省電力DDR3メモリにも対応する。しかし、その転送速度はDDR3-1600との組み合わせでも10.3Gバイト/秒と、高性能なグラフィックスコアの性能を引き出すには十分とは言えない。

 そこで、AMDはグラフィックスコアからDRAMコントローラへのアクセスを2系統用意することで、ボトルネックの解消を図っている。従来のAPUでも採用されてきたこの手法は、具体的には、テクスチャの読み書きなどCPUとのデータの整合性が不要なメモリアクセスには256ビット幅のGraphics Memory Busを使い、CPUまたはグラフィックスコアが、もう一方も利用しているメモリ空間上のデータにアクセスする場合には、128ビット幅のFusion Control Linkを介し、キャッシュを利用してデータの整合性を取るというものだ。これにより、限られたメモリ帯域でも最大限のパフォーマンスを発揮できるとともに、省電力化を図れるという。

TemashとKabiniのノースブリッジ機能とメモリコントローラ。メモリインタフェースはシングルチャネルのDDR3対応で、DDR3-1600をサポートする(画面=左)。CPUとのデータ整合が不要なグラフィックスアクセスには専用のGraphics Memory Busを利用することで、より高速なアクセスを実現する(画面=右)

 TemashとKabiniは、同社がFCH(Fusion Controller Hub)と呼ぶSouth Bridge機能を完全に統合したSoC(System on-a-Chip)を実現しているのも大きな特徴だ。両APUで有効にされるI/O機能は製品ごとに異なるが、半導体そのものには、USB 3.0×2、USB 2.0×8、SATA 3.0×2、PCI Express x4、PCI Express x1×4、SDXCインタフェースなどが統合されている。

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