「FMV LIFEBOOK UH90/L(WU1/L)」を斬る――14型“3200×1800”IGZO液晶の新鋭Ultrabook店頭/直販モデルをガッツリ比較(3/5 ページ)

» 2013年07月24日 16時00分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

3200×1800ドットの超高精細なIGZO液晶ディスプレイを採用

14型ワイド液晶ディスプレイは、3200×1800ドットと非常に高い解像度を備えたIGZO液晶パネル。フルHDの約2.77倍もの高解像度を誇る

 液晶ディスプレイには、TFT回路にIGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素で構成される半導体)を利用したIGZO液晶パネルを搭載する。IGZOには、電子の移動速度が通常のアモルファスシリコンに比べて20〜50倍高速であるほか、リーク電流が非常に低いという特性がある。

 UH90/LとWU1/LはこのIGZO液晶の採用により、表示解像度が3200×1800ドット、画素密度が約262ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)という、いずれも現行のノートPCで最高となる高精細表示を実現した。これは他機種にはない大きな強みだ。

 262ppiという画素密度は、東芝の「dynabook KIRA V832」(約221ppi、13.3型2560×1440ドット)や、アップルの「13インチMacBook Retinaディスプレイモデル」(約227ppi、13.3型2560×1600ドット)を超え、ノートPCより視聴距離が近くなることを想定したiPad Retinaディスプレイモデル(約264ppi、9.7型2048×1536ドット)に匹敵する。

 最近増えてきた13.3型1920×1080ドット(約166ppi)くらいの解像度でも、机の上に置いて一般的な姿勢で利用するぶんにはドットを視認できないほど高精細だが、それでも精細さのレベルの違いは、はっきりと「感じる」ことができる。

左がWU1/L、右が下位モデルであるUH75/Kの表示。同じ14型ワイド液晶パネルに、1366×768ドットの画像を等倍表示してみたが、こんなに差がある。WU1/LはUH75/Kの約5.49倍もの高解像度だ
初期状態のアイコン表示をデジタルカメラで接写し、ほぼ同じサイズに拡大した画像。左がWU1/L、右がUH75/Kの表示だ。WU1/Lはアイコンの表示サイズがUH75/Kより小さいため、拡大したにもかかわらず、細部まで緻密に描かれ、文字の描画も整っている

高すぎる画素密度はどうカバーしているのか?

 もっとも、画素密度がこれほど高いと、Windows 8のスタート画面が滑らかで美しい一方、100%の等倍表示ではデスクトップ画面のアイコンや文字が小さすぎて見づらくなり、細かなカーソル操作なども難しくなってしまう。そのため、UH90/LとWU1/Lでは、初期状態の文字サイズ(dpiスケーリング)が「大」(150%)に設定されている。

 この150%設定でも通常のノートPCより表示はかなり細かく、精細な表示が好みのユーザーにはうってつけだが、アイコンや文字をより大きく表示したい場合もあるだろう。

 そこで富士通は専用ユーティリティの「かんたんサイズ設定」をダウンロードで無償提供しており、拡大率の違う3つのモードを手軽に選択できるよう工夫している(設定変更を反映するにはWindowsの再ログオンが必要)。かんたんサイズ設定のモードは、「情報量優先」(144%)、「バランス優先」(165%)、「見やすさ優先」(211%)に切り替えることが可能だ。

 それでも、Windows 8はMac OS Xほど高解像度への最適化が進んでいない(というよりは解像度のバリエーションが多すぎるうえ、古いアプリケーションが長く使われ続けている)ため、アプリケーションによっては表示がぼやけたり、崩れたりするものもある。しかし、デスクトップが広く使えることに加えて、高解像度の写真や動画などのコンテンツを表示させた際のインパクトはやはり別格だ。

Windows 8のスタート画面は5段表示で情報量が多く、滑らかに表示される(画像=左)。デスクトップ画面は文字やアイコンがかなり小さく映し出され、画素密度の非常に高い液晶であることが分かる(画像=右)
初期状態の文字サイズ(dpiスケーリング)は「大」(150%)に設定されている(画像=左)。ダウンロード提供の「かんたんサイズ設定」を使えば、3つの拡大モードを手軽に切り替えられる(画像=右)
かんたんサイズ設定の「情報量優先」は144%拡大表示、「バランス優先」は165%拡大表示、「見やすさ優先」は211%拡大表示となる(クリックすると、3200×1800ドットで等倍表示)。アイコンと文字のサイズ、Webブラウザの表示領域が大きく違う点に注目だ。拡大率が低いほうが、デスクトップの作業領域を広く確保できるものの、表示が細かすぎると視認性や操作性を損なうことにもなる

 そのほかの画質を構成する要素もレベルが高い。バックライト輝度は明るく、色鮮やかな発色で、色温度も少し高めながら適正に近いほうだ。視野角については、最近のIPSパネルほど広くはなく、上下左右とも角度がきつくなると少し白っぽくなるものの、TNパネルとは比べものにならない広さで、実用上問題ない。

エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1Pro」による計測結果から抜き出したガンマ補正カーブ(画像=左)。中間階調から明部にかけて青の線がわずかにずれている(青が強めに出ている)ものの、ノートPC用の液晶としては、RGBのガンマがそろっているほうで、階調の再現性はまずまずだ。作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示した(画像=右)。色がついている部分が内蔵ディスプレイで再現できる色域、薄いグレーで重ねて表示してあるのはsRGBの色域だ。sRGBの色域とほぼ重なっており、sRGB色域の再現性が高い良好な発色といえる。色温度の実測値は6880Kと、sRGB標準(6500K)より少し高めだった

 一方、1つ気になったのは、表示の追従性だ。スリープからの復帰の際などに、タイル状のブロック単位で描画が遅延するほか、後に言及するバッテリーテストの実行中も、同じように画面描画が遅延する現象が見られた。

 今回試用した限りでは、主にアイドル時や低負荷時、しばらく同じ画面を表示していた後に、こうした遅延を感じる傾向があった。IGZO液晶パネルの影響か、あるいは3200×1800ドットという超高解像度にIntel HD Graphics 4400のドライバ(あるいはハードウェア的な描画能力)が完全に対応しきれていない可能性などが考えられる。

 また、3Dベンチマークテストの解像度を切り替える際などにも意図しない解像度に設定される(再起動後、特定のプロセスを回避してやり直すことで正常に設定できた)こともあった。現状であまりに突出した解像度だけに、一般的な解像度のPCに比べて想定外のことが起こる可能性があることは覚えておくべきだろう。

液晶ディスプレイは滑らかなタッチ操作も可能

液晶ディスプレイはタッチパネルも装備。表面には指の滑りをよくするコーティングも施した

 液晶ディスプレイ左右のフレーム幅(端から表示領域まで)は、約11ミリと狭額縁に仕上がっている。表面にガラスが装着されており、ユーザーの姿や照明はかなりはっきり映り込む。

 もちろん、ディスプレイ表面にはマルチタッチに対応する静電容量式タッチパネルも備えている。指の滑りをよくする「スーパーグライドコーティング」や、指で押した際に傾きにくいヒンジ設計も採用しており、ノートPCとしては滑らかなマルチタッチ操作が可能だ。

 サウンド面については、特筆することはない。本体前面のステレオスピーカーは、薄型ノートPCにありがちな傾向だが、パワーがいまひとつで、特に低音が弱めだ。高音質化技術の「DTS Boost」に対応しているが、エンターテイメントコンテンツを迫力のサウンド楽しむには、ヘッドフォンや別途スピーカーをつないだほうがよいだろう。

富士通 FMV LIFEBOOK UH

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