Ivy Bridge-Eの最上位「Core i7-4960X Extreme Edition」を徹底検証22ナノ初の6コアCPU(2/3 ページ)

» 2013年09月03日 16時01分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

6コアのLGA 2011 CPUが持つ特性に変更はなく、性能向上はクロック相当

 比較対象には、Sandy Bridge-EのCore i7-3960Xと、HaswellのCoire i7-4770Kを用意した。LGA 2011側のマザーボードは共通だが、LGA 1150プラットフォームに対応するHaswellは共通化できないため、消費電力の計測値は主にLGA 2011側のみで比較し、LGA 1150の値は参考値として考えていただきたい。なお、クーラーやメモリ、ビデオカード、ストレージ、電源などは共通化し、誤差を抑えてはいる。検証環境の詳細は、下記の表を参考にして欲しい。

検証環境
比較対象 Core i7-4960X Core i7-3960X Core i7-4770K
メモリ(速度) 8GB×4、PC3-12800
メモリ CFD Elixer W3U1600HQ-8G
マザーボード ASUSTeK X79 SABERTOOTH ASUSTeK Z87-Pro
チップセット Intel X79 Intel Z87
GPU GeForce GTX 780(OC)
グラフィックスカード Galaxy GF-GTX780-E3GHD/SOC
ストレージ OCZ Technology Vector VTR1-25SAT3-128G
OS Windows 8 Pro(64bit)
電源 Seasonic SS-1000XP(80PLUS Platinum、1000W)

 まずはPCMarkで各シチュエーションに応じたパフォーマンスを見ていこう。

 PCMark 7では、Storageテストを除外すればすべての項目でCore i7-4960XがCore i7-3960Xを上回った。ただし、最高スコアの多くはCore i7-4770Kに取られ、唯一上回ったのはCreativeのみという結果だ。Light weightはその名の通り軽負荷な日々のアプリケーション、Productivityはオフィスソフトなど、Entertainmentはゲームや動画プレイバックといった具合で、4コア程度ならまだしも、6コアを使いきる場面が少ない。その一方で、Creative向けプリケーションでは、マルチコア/マルチスレッドへの対応が進んでいる点を反映した結果と捉えられる。

PCMark 7

 PCMark 8でもこの傾向は同様だ。テスト項目が再構成されたわけだが、Work、Home、CreativeでCore i7-3960Xのスコアを上回ったものの、WorkとHomeの最高スコアはCore i7-4770Kが出している。Core i7-4960Xが最高スコアだったのは、やはりCreativeのみとなっている。

PCMark 8

 Sandra 2013によるCPU処理能力のテストは、おおむねコア数、クロック相当の結果といえる。現時点で最高の演算性能を持つコンシューマー向けCPUであることは間違いないだろう。

 Sandraの暗号処理テストの結果は、若干の違いが出たもののCore i7-3960Xとほぼ同値という印象だ。

Sandra 2013のプロセッサ性能(画面=左)、マルチメディア処理(画面=中央)、暗号処理(画面=右)の結果

 Sandraのメモリレイテンシでは、グローバルデータメモリ、命令/コードメモリとも、Core i7-3960Xからは若干レイテンシを短くしているように見える。ただし、ほとんどの場合、Core i7-4770Kが最も短時間という結果だ。これは、進化の順ともいえるだろう。

 Sandraのメモリの帯域テストおよび、キャッシュとメモリーのテストでは、Corei7-3960Xに対して大きく帯域を広げている。CPU性能も影響することが大きく表れたと見てよいだろう。ただし、1次キャッシュの範囲ではCore i7-4770Kが最も広帯域で、2次キャッシュ〜LLCではCore i7-4960X、そしてメインメモリの容量域は、クアッドチャネルのLGA 2011対応CPUが大きく勝り、その中でCore i7-4960Xがさらなる差をつけている。

Sandra 2013の.NET演算(画面=左)、.NETマルチメディア演算(画面=中央)、メモリーの帯域(画面=右)の結果

Sandra 2013のメモリ帯域テストおよびキャッシュとメモリテストの結果

 CINEBENCH R11.5とMedia Espresso 6.7は実アプリケーションによるCPU処理能力を見るためのテストで、ともにCore i7-4960Xの高性能化が確認できた。CINEBENCH R11.5に関しては、Multi CPUで4コアのCore i7-4770Kを大きく上回り、同じ6コアのCore i7-3960Xに対してもコアクロックの向上分、スコアを伸ばしている。

 一方、Single CPUではCore i7-4770Kが最も良好なスコアとなった。Turbo Boost時のクロックで見ると、Core i7-4960Xのほうが100MHz高い設定だが、アーキテクチャの違いが影響しているともとれる。

CINEBENCH R11.5の結果

 Media Espressoでのトランスコードテストは、ハードウェアアクセラレーション機能なしの、純粋にCPU性能に依存するソフトウェアエンコードによる時間を計測した。今回の計測では、やや長めの映像データに切り替えているが、Core i7-4770Kで6分以上かかった処理が、Core i7-3960Xではおよそ5分半、Core i7-4960Xでは5分少々で完了した。ソフトウェアエンコードを、業務時間内に行うような場合、Core i7-4770KとCore i7-4960Xでは大幅に所要時間が異なるため、そうした用途では大幅な改善が期待できる。

Media Espressoによるトランスコードテスト

 3Dグラフィックス性能を見るための3DMarkでは、例えばOverallで見ると、Core i7-3960Xに対して若干スコアを伸ばしているようにも見える。ただ、GraphicsスコアとPhysicsスコアを確認すれば、それが単純にCPU性能の違いであることも分かる。3DMarkは4コアより多くてもきちんと活用している。そして、こうした点から3DMarkのスコアを競うためのCPUとしては、有効であると考えられるし、合計40レーンのPCI Expressを備える点でも、3DMark向けのプラットフォームであると考えられる。

3DMark v1.1.0の結果(Overall)

3DMark v1.1.0の結果(GraphicsとPhysics)

 このように、3DMarkのスコアは高いものの実質的にCPU性能である点が確認できたわけだが、この点が実ゲームタイトルにどう影響するかを確かめていこう。

 ここではバトルフィールド3、トゥームレイダー、Metro:Last Lightの3タイトル計測したが、おおむねねCore i7-4770Kに対して若干低いフレームレートで、基本的にCopre i7-3960XとCore i7-4960Xのあいだではほとんど差が出ないという結果になった。

バトルフィールド3(画面=左)、トゥームレイダー(画面=中央)、Metro:Last Light(画面=右)のベンチマーク結果

 ゲームにおいて6コアをフル活用する場面は少なく、今回計測したタイトルはおよそ3コア程度(もう1〜2コア使用率が上がるものがあるが、これはほかよりやや低く、OSなどバックグランドの処理を担っているように見える)の使用率が上がるのみで、クアッドコアCPUで十分ということになりそうだ。

 最後に消費電力についても触れておこう。結果をみると、Core i7-4960XはCore i7-3960Xよりも高クロックであるが、アイドル時、高負荷時とも消費電力はCore i7-3960Xよりもやや低い値になっている。22ナノプロセスに移行した恩恵として評価できるポイントだ。

消費電力比較

 なお、プラットフォームの異なるLGA 1150のCore i7-4770Kとあえて比較すると、TDPが示すとおり、50ワット程度の開きがある点に注意したい。ゲーム向けPCの自作を検討する際、シングルGPUで十分なのであれば、フレームレートはLGA 2011とLGA 1150で変わらず、そのうえ消費電力で不利なLGA 2011環境を選ぶ必要性はない。

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