タッチパネルにより「物理ボタン」は消えゆく運命なのか?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2014年05月16日 09時11分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]
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インタフェースやローカライズの観点でも物理ボタンは不利

 まったく別の観点で、物理ボタンに加えてタッチパネルが優れている点がある。それはインタフェース設計の自由度の高さだ。

 例えばAndroid4.x端末では、端末を90度回転させると、それに連動してホームボタンや戻るボタンが画面の下部に来るようキーレイアウトが書き替わる。また画面の内容に応じてボタンの種類を差し替えたり、あるいはボタンそのものを非表示にして画面の領域を広く取るといったことができる。これらはいずれも、物理ボタンでは不可能な仕様だ。

 もう1つ見逃せないのが、ローカライズの容易さだ。製品を国外で販売する場合、機器本体の表示言語をその国の言葉に変える必要がある。例えばボタンに書かれた「戻る」というラベルを「Back」に変更するといった具合だ。作業自体の難易度はそれほど高くないが、在庫管理の観点では、国内仕様の製品と海外仕様の製品、同じハードウェアであるにもかかわらずシルク印刷だけが異なる2種類の製品を在庫として持たなくてはいけなくなる。

 そもそもボタンのシルク印刷は、製品が完成してから行われるわけではなく、部品を製造する工程の中に含まれる。そのため、シルク印刷の内容を変えるとなると完成品はおろか仕掛かりの部品までもが倍の在庫を持つことになり、よほどの量を売らない限りは、労力に見合った対価が得られない。物理ボタンをなくしてタッチパネルに統合し、ラベルもスクリーン上に表示するようにすれば、ソフトウェア上で切り替えられるようになり、こうした問題が一気に解決するのだ。

 一昔前まで、こうしたボタンのローカライズに対応するため、テキストラベルを使わずにアイコンを使ってユニバーサル化する試みがあちこちでなされていたが、うまくいっていたとは言い難い。その点、すべてがタッチ化すれば、根本的なところから一気に解決できるわけだ。後はソフトウェア上でラベルを変更できるようにし、出荷先の国に合わせて書き換えるか、あるいはユーザー自身に選ばせればよい。

物理ボタンはますます肩身が狭い世の中に

 以上、複数の要因を見てきたが、これらはいずれもタッチパネルの精度が上がって主インタフェースとして信頼に耐えうるものになり、製品を開発する側もノウハウがたまり、タッチパネルそのものの価格も下がり、そしてユーザーも慣れるといったサイクルによって実現したものだ。

 キーボードに代表されるように、物理キーであるがゆえのメリットはいまだ健在だが、ここまで見てきた数多くの要因が、タッチパネル化による物理キーの排除を後押ししている。この流れが後戻りすることは、今後はちょっと考えにくいだろう。

 では物理ボタンが今後完全に消え失せてしまうかというと、これもまた違う。いざ故障が起こった際に修理が簡単なのは物理ボタンのほうだからだ。それゆえ現場での素早い対応が必要になる工業用の機器などでは、物理ボタンからタッチパネルへの移行はごく限定的なものになると考えられる。

 また当然のことながら、タッチパネルに通電するためのボタン、つまり電源ボタンは、防塵防滴といった加工が施されることはあっても、基本的にこのままの形で残り続けるだろう。

 さらに民生用の機器でも、ここまで述べてきたメリットを上回る別の理由があれば、継続して物理ボタンが使われるはずだ。例えば「iPhone 5s」は、ホームボタンには今なお物理ボタンを用いているが、ボタンとしての機能に加えて指紋認証の機能が追加されていることが、タッチパネル化しない理由の1つとなっている。

 タッチパネルそのもので指紋認証を行う技術もすでに存在はしているが、まだ普及に至ってはおらず、コストなどもネックになるものと考えられる。タッチパネルでは実現できないプラスアルファを、可能なコストの範囲内で追加するために、物理ボタンを維持することが最善の選択肢として判断されたということだろう。

 もっともiPhone 5では、先日もスリープ/スリープ解除ボタンが良品交換の対象になるなど、まさに本稿で述べてきた物理ボタンであるがゆえのデメリットをさらけ出す格好になっている。そもそも無償交換という施策を、新製品が出るたびに繰り返していては、製品どころか事業の存続に関わってくる(こうした場合、部品の製造元である外注先メーカーに交換コストを全額負担させる可能性はあるが)。

 今回はホームボタンではないものの、ホームボタンで同じような不具合が繰り返し発生し、それが検品の強化や内部の改良で改善できないと判断された場合、たとえ機能的には後退しても、物理ボタンの廃止が行われる可能性はある。物理ボタンにとっては、ますます肩身が狭い世の中になっていきそうだ。

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