以上、法人向けのUSBメモリで利用できるさまざまな付加機能を見てきた。これらが利用できる具体的な製品は次回まとめて紹介するが、その前に法人向けUSBメモリを購入するにあたって、容量や形状、さらにウイルスチェック機能のライセンスの年数など、どのように選べばよいかをチェックしておこう。個人向けUSBメモリの選び方とはまた異なる、独自のトレンドがある。
USBメモリが世に登場して以来、その容量は数メガ単位からギガバイトへと急速にシフトしてきたが、ここ数年は容量帯にそれほど目立った進化はなく、落ち着いているのが現状だ。個人向け製品では128Gバイト以上の大容量モデルも登場しているが、法人向け製品の上限はほぼ32Gバイトであり、その中で売れ筋が4〜8Gバイトのモデルというのは、ここ数年ほとんど変わっていない。
理由はいくつもあるが、そもそもコピー対象となるファイルのサイズが変わらない以上、すでに実用上十分な容量に達してしまったというのが、1つの大きな要因だろう。オフィス文書はおおむね1Mバイト以下、画像ファイルにしても数Mバイトというファイルサイズの“相場”が変化しない以上、容量だけが増えてもあまり意味はないというわけだ。最近はUSB 3.0対応モデルの登場で解消に向かいつつあるが、読み書きの速度が一定であれば、容量が増えれば転送時間がかかりすぎて実用的でなくなるという問題もある。
また法人ユースの場合、あまりにも大容量すぎると、必要以上のデータを持ち出す原因になりかねない。必要なファイルが収まらないのは困るが、余裕がありすぎるのも管理上問題があるというわけだ。むやみに大容量のモデルをチョイスしてコストが膨らむよりは、小容量のモデルを選んでおいたほうがローコストで済み、かつ万一の場合の被害を最小限に抑えられる。
ところで、法人向けUSBメモリで容量を選ぶ際に気をつけなくてはいけないのが、ウイルスチェックソフトなどが本体の容量の一部を占めているケースだ。メーカーおよびモデルによっても異なるので一概には言えないが、例えばウイルスチェックソフトのアップデートファイルだけで200〜300Mバイトの領域を占有しているケースはざらにあるので、総容量だけを見て購入したところ、目的のデータがすべてコピーできなかった、というケースが発生しうる。
これらソフトウェアが占める容量は、製品ページやパッケージに記載しているメーカーとそうでないメーカーがあるので、事前にチェックしにくいのが難点だ。コピー対象となるファイルの容量が明確に決まっている場合、ギリギリの容量を選ぶのではなく、ある程度の余裕を持った容量の製品を購入したほうがよいだろう。
USBメモリといえば、バリエーション豊かなボディデザインが特徴だ。それゆえキャラクターグッズやノベルティとしての製品も多数存在するが、法人用のUSBメモリは基本的にはどれも無骨なデザインを採用している。カラーバリエーションもほぼ皆無と言っていい。
また昨今では各社の製品に共通して、ある共通の特徴を備えるようになりつつある。その特徴とは「キャップレス」だ。本体側面のレバーをスライドさせることでUSB端子を露出させる構造により、コネクタを保護するキャップを不要にしている。これは主にキャップの紛失防止という観点によるもので、個人向け製品の一部にも見られる仕様だが、こと法人用のUSBメモリに限ると、キャップのある製品はほぼ絶滅しつつある状況だ。
また、個人向けではおなじみのUSBドングルに似た超小型タイプも、法人向けのラインアップには存在しない。これはハードウェア暗号化のためのコントローラを搭載するには、どうしてもそれだけの基板のサイズが必要になるのが主な理由だ。USBメモリ自体、本体サイズが小さくなればなるほど紛失のリスクも高まるわけで、法人向けとしてはある程度大柄な製品のほうが向いており、事実そのようなラインアップになりつつある。今後もこの傾向は大きくは変わらないだろう。
もう1つ、製品選びにあたって頭を悩ませがちなのがライセンスの年数だ。前回紹介したように、法人用のUSBメモリでは、ウイルスチェック機能が1つの目玉機能になっている。ウイルスチェック機能は一般的なアンチウイルスソフトと同様にライセンスの有効期限があり、それを過ぎるとパターンファイルが更新されない。大抵の場合、ライセンスは追加購入が可能だが、最初にUSBメモリを購入する際、何年分のライセンスが付属したモデルを買っておくかは、頭を悩ませるところだ。
これについてはさまざまな考え方があって一概には言えないが、ひとまず使い勝手を試すのであれば、最も短い1年ライセンスでよいだろうし、予算に余裕がある、あるいは期末の予算で一括償却したいなどの事情があるのなら、3年もしくは5年ライセンスというチョイスもありだろう。追加で予算が必要になることさえ許容できれば、追加のライセンスさえ買えば問題はない。
1つ念頭に置いておきたいのが、ハードウェアの保証期間だ。多くのケースではアンチウイルスソフトのライセンス期間と等しいハードウェア保証期間が設定されているが、追加購入が可能なアンチウイルスソフトのライセンスと異なり、ハードウェアの保証期間は延長できない場合が多い。そのため、アンチウイルスソフトのライセンス期間が長めの製品を購入しておき、ライセンスが切れると同時にハードも買い替えるというのが、賢い選択といえる。
「PC USER Pro」
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