ハイエンドの850 PROは、MLC(マルチレベルセル)の3D V-NANDを利用しているのに対し、850 EVOではTLC(トリプルレベルセル)の3D V-NANDを採用している。
メモリセルに1ビットの情報しか記録しないSLC(シングルレベルセル)や2ビットの情報を記録するMLCに対し、TLCでは1つのメモリセルに3ビットの情報を記録できるため、メモリセルあたりに記録できる容量が多く、大容量化、低コスト化に有利だ。一方、電圧制御が複雑になるため、SLCやMLCに比べるとメモリセルの耐久性が短く(書き換え可能回数が少ない)、書き込みにも時間がかかる傾向がある。
850 EVOのTLCは、耐久性に優れ、書き込み性能でも有利な3D V-NANDを採用しているため、従来のプレナー型NAND TLCほどその傾向は極端ではないが、3D V-NAND MLCに比べればやはり不利な面はある。
それを補うのが「Turbo Write Technology」だ。これは、データ領域とは別に確保したTLC 3D V-NANDをSLCシミュレート動作させ、バッファ(TurboWriteバッファ)として利用する仕組みだ。つまり、3ビット記録できるセルに1ビットしか記録しないことでSLCと同様の高速書き込みを可能にし、書き込み時はこのバッファを経由して記録することで高速化する。
もちろん、TurboWriteバッファに収まりきらないデータの場合は、3ビットMLCの通常領域に直接書き込みが発生するため、その部分はバッファの効果は得られない。
850 EVOは、ターボバッファ領域外の書き込み性能も明らかにされており、それを下表にまとめた。840 EVOに比べてかなりの改善が見られ、特に1TバイトモデルではTurboWriteバッファなしでもシーケンシャルライトはバッファありと同じ数値だ。3D V-NANDの本質的なメリットに加えて、大容量のモデルは並列アクセスなどにより帯域を上げやすいためだろう。大容量データのコピーなどをしても性能は下がりにくいと言えそうだ。
TurboWriteバッファ外のライト性能 | ||||
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容量 | 120Gバイト | 250Gバイト | 500Gバイト | 1Tバイト |
850 EVO シーケンシャル(Mバイト/秒) | 150 | 300 | 500 | 520 |
840 EVO シーケンシャル(Mバイト/秒) | 140 | 270 | 420 | 420 |
850 EVO ランダム(IOPS) | 38000 | 70000 | 80000 | 80000 |
840 EVO ランダム(IOPS) | 36000 | 70000 | 80000 | 80000 |
テスト環境 | |
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CPU | Core i7-4770K(3.5GHz/最大3.9GHz) |
マザーボード | ASUS Z97I-PLUS(Intel Z97) |
グラフィックス | Intel HD Graphics 4600 |
メモリ | PC3-12800 4Gバイト×2(CFD W3U1600HQ-4G) |
システムストレージ | Crucial m4(CT128M4SSD2) |
ストレージドライバ | IRST 13.1.0.1058 |
OS | 64ビット版Windows 8.1 Pro Update |
電源プラン | 高パフォーマンス |
それでは、ここからは各種ベンチマークテストの結果を見ていこう。
今回入手した850 EVOの評価機は最大容量となる1Tバイトのモデルだ。比較対象として、先代の840 EVOも1Tバイトモデルを用意した。1Tバイトモデル同士の比較表を掲載しておく。
テスト環境は別表の通りだ。システムSSD、テスト対象のSSDともにIntel Z97チップセットのSerial ATA 6Gbpsポートに接続して計測している。OSは64ビット版のWindows 8.1 Pro Updateだ。
850 EVOと840 EVOの比較(1Tバイトモデル) | ||
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製品名 | Samsung SSD 850 EVO | Samsung SSD 840 EVO |
容量 | 1Tバイト | 1Tバイト |
コントローラ | Samsung 3-Core MEX | Samsung 3-Core MEX |
NAND | Samsung 32layer 3D V-NAND | Samsung Toggle DDR 2.0(19ナノメートル) |
キャッシュ | LPDDR2 1Gバイト | LPDDR2 1Gバイト |
シーケンシャルリード(Mバイト/秒) | 540 | 540 |
シーケンシャルライト(Mバイト/秒) | 520 | 520 |
4K、QD1ランダムリード(IOPS) | 10000 | 10000 |
4K、QD1ランダムライト(IOPS) | 40000 | 33000 |
4K、QD32ランダムリード(IOPS) | 100000 | 100000 |
4K、QD32ランダムライト(IOPS) | 90000 | 90000 |
動作時消費電力(ライト時) | 4.35ワット | 4.4ワット |
アイドル時消費電力 | 0.004ワット(Device Sleep時) | NA |
TBW | 150TBW | 44TBW |
保証期間 | 5年間 | 3年間 |
まずは定番のストレージ用ベンチマークテスト「CrystalDiskMark 3.0.3」(ひよひよ氏)で基本性能を見ていこう。テストデータのサイズは1000Mバイトと4000Mバイト、データタイプは標準のRandomを利用している。
データサイズ4000Mバイトの場合、1000Mバイトに比べて少しランダム4Kリードのスコアが落ちているが、この傾向は先代からも見られていた。
先代の840 EVOと比べると、全体的にほとんど同じようなスコアで、1000Mバイト/4000Mバイトともに、ランダム4Kのライトのスコアが少し上がっている。
SSD向けベンチマークテスト「AS SSD BenchMark 1.7.4739.38088」の結果も見ていこう。転送速度のテストはCrystalDiskMarkより少し低めだが、似たようなスコアが出ている。4KのリードIOPSは公称スペックの10000を超えた。ライトは公称の40000(840 EVOは33000)からは少し遠いものの、840 EVOよりは5%ほど向上している。
ファイルコピーテストでは全般に850 EVOの優位が感じられる。特に「Program」データ(多くの小さなファイルで構成される典型的なプログラムフォルダ)では840 EVOに対して13.5%と大きな差を付けた。ちなみに「ISO」は2つの大きなファイル、「Game」は大小のファイルが混在するゲームフォルダのコピーを行なうテスト内容だ。
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