「Samsung SSD 850 EVO」徹底検証――“3D V-NAND”搭載で5年保証の主力モデルは買いか?先代の840 EVOとじっくり比較(2/4 ページ)

» 2014年12月16日 11時00分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

TurboWriteバッファ外でも高速に

 ハイエンドの850 PROは、MLC(マルチレベルセル)の3D V-NANDを利用しているのに対し、850 EVOではTLC(トリプルレベルセル)の3D V-NANDを採用している。

 メモリセルに1ビットの情報しか記録しないSLC(シングルレベルセル)や2ビットの情報を記録するMLCに対し、TLCでは1つのメモリセルに3ビットの情報を記録できるため、メモリセルあたりに記録できる容量が多く、大容量化、低コスト化に有利だ。一方、電圧制御が複雑になるため、SLCやMLCに比べるとメモリセルの耐久性が短く(書き換え可能回数が少ない)、書き込みにも時間がかかる傾向がある。

 850 EVOのTLCは、耐久性に優れ、書き込み性能でも有利な3D V-NANDを採用しているため、従来のプレナー型NAND TLCほどその傾向は極端ではないが、3D V-NAND MLCに比べればやはり不利な面はある。

先代モデルである840 EVOの発表会で解説された「TurboWrite Technology」の仕組み。データ領域とは別に確保したTLC 3D V-NANDをSLCシミュレート動作させ、バッファ(TurboWriteバッファ)として利用することで、高速書き込みを可能にする

 それを補うのが「Turbo Write Technology」だ。これは、データ領域とは別に確保したTLC 3D V-NANDをSLCシミュレート動作させ、バッファ(TurboWriteバッファ)として利用する仕組みだ。つまり、3ビット記録できるセルに1ビットしか記録しないことでSLCと同様の高速書き込みを可能にし、書き込み時はこのバッファを経由して記録することで高速化する。

 もちろん、TurboWriteバッファに収まりきらないデータの場合は、3ビットMLCの通常領域に直接書き込みが発生するため、その部分はバッファの効果は得られない。

 850 EVOは、ターボバッファ領域外の書き込み性能も明らかにされており、それを下表にまとめた。840 EVOに比べてかなりの改善が見られ、特に1TバイトモデルではTurboWriteバッファなしでもシーケンシャルライトはバッファありと同じ数値だ。3D V-NANDの本質的なメリットに加えて、大容量のモデルは並列アクセスなどにより帯域を上げやすいためだろう。大容量データのコピーなどをしても性能は下がりにくいと言えそうだ。

TurboWriteバッファ外のライト性能
容量 120Gバイト 250Gバイト 500Gバイト 1Tバイト
850 EVO シーケンシャル(Mバイト/秒) 150 300 500 520
840 EVO シーケンシャル(Mバイト/秒) 140 270 420 420
850 EVO ランダム(IOPS) 38000 70000 80000 80000
840 EVO ランダム(IOPS) 36000 70000 80000 80000

定番ベンチマークテストで850 EVOと840 EVOの性能を比較する

テスト環境
CPU Core i7-4770K(3.5GHz/最大3.9GHz)
マザーボード ASUS Z97I-PLUS(Intel Z97)
グラフィックス Intel HD Graphics 4600
メモリ PC3-12800 4Gバイト×2(CFD W3U1600HQ-4G)
システムストレージ Crucial m4(CT128M4SSD2)
ストレージドライバ IRST 13.1.0.1058
OS 64ビット版Windows 8.1 Pro Update
電源プラン 高パフォーマンス

 それでは、ここからは各種ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 今回入手した850 EVOの評価機は最大容量となる1Tバイトのモデルだ。比較対象として、先代の840 EVOも1Tバイトモデルを用意した。1Tバイトモデル同士の比較表を掲載しておく。

 テスト環境は別表の通りだ。システムSSD、テスト対象のSSDともにIntel Z97チップセットのSerial ATA 6Gbpsポートに接続して計測している。OSは64ビット版のWindows 8.1 Pro Updateだ。

850 EVOと840 EVOの比較(1Tバイトモデル)
製品名 Samsung SSD 850 EVO Samsung SSD 840 EVO
容量 1Tバイト 1Tバイト
コントローラ Samsung 3-Core MEX Samsung 3-Core MEX
NAND Samsung 32layer 3D V-NAND Samsung Toggle DDR 2.0(19ナノメートル)
キャッシュ LPDDR2 1Gバイト LPDDR2 1Gバイト
シーケンシャルリード(Mバイト/秒) 540 540
シーケンシャルライト(Mバイト/秒) 520 520
4K、QD1ランダムリード(IOPS) 10000 10000
4K、QD1ランダムライト(IOPS) 40000 33000
4K、QD32ランダムリード(IOPS) 100000 100000
4K、QD32ランダムライト(IOPS) 90000 90000
動作時消費電力(ライト時) 4.35ワット 4.4ワット
アイドル時消費電力 0.004ワット(Device Sleep時) NA
TBW 150TBW 44TBW
保証期間 5年間 3年間
Windows 8.1 Pro上でのフォーマット後、容量は約931Gバイトだった(画像=左)。CrystalDiskInfoでの情報表示画面(画像=右)

CrystalDiskMark 3.0.3のスコア

 まずは定番のストレージ用ベンチマークテスト「CrystalDiskMark 3.0.3」(ひよひよ氏)で基本性能を見ていこう。テストデータのサイズは1000Mバイトと4000Mバイト、データタイプは標準のRandomを利用している。

 データサイズ4000Mバイトの場合、1000Mバイトに比べて少しランダム4Kリードのスコアが落ちているが、この傾向は先代からも見られていた。

 先代の840 EVOと比べると、全体的にほとんど同じようなスコアで、1000Mバイト/4000Mバイトともに、ランダム4Kのライトのスコアが少し上がっている。

CrystalDiskMark 3.0.3の結果(データサイズ1000Mバイト/5回)。左が850 EVO、右が840 EVOのスコア
CrystalDiskMark 3.0.3の結果(データサイズ4000Mバイト/5回)。左が850 EVO、右が840 EVOのスコア

AS SSD Benchmark 1.7.4739.38088のスコア

 SSD向けベンチマークテスト「AS SSD BenchMark 1.7.4739.38088」の結果も見ていこう。転送速度のテストはCrystalDiskMarkより少し低めだが、似たようなスコアが出ている。4KのリードIOPSは公称スペックの10000を超えた。ライトは公称の40000(840 EVOは33000)からは少し遠いものの、840 EVOよりは5%ほど向上している。

 ファイルコピーテストでは全般に850 EVOの優位が感じられる。特に「Program」データ(多くの小さなファイルで構成される典型的なプログラムフォルダ)では840 EVOに対して13.5%と大きな差を付けた。ちなみに「ISO」は2つの大きなファイル、「Game」は大小のファイルが混在するゲームフォルダのコピーを行なうテスト内容だ。

AS SSD Benchmark 1.7.4739.38088における転送速度テストの結果。左が850 EVO、右が840 EVOのスコア
AS SSD Benchmark 1.7.4739.38088におけるIOPSテストの結果。左が850 EVO、右が840 EVOのスコア
AS SSD Benchmark 1.7.4739.38088におけるファイルコピーテストの結果。左が850 EVO、右が840 EVOのスコア

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー