薄型ボディだけに、TDP(熱設計電力)が4.5ワット、SDP(Scenario Design Power:シナリオに基づいた消費電力設計)が3.5ワットと低く、消費電力と発熱を抑えたCore M-5Y51の処理能力が気になるところだが、Folio 1020 G1 SEではどうなのだろうか。
CPU性能を評価するCINEBENCH R11.5のCPU(マルチスレッド対応)スコアは、1.13ptsと控えめな結果だ。動作クロックは最大2.6GHzとなっており、CPU(シングルコア)スコアでは、0.80ptsとやや挽回した。
ストレージ性能の計測はCrystalDiskMark 3.0.3を使っている。M.2(Serial ATA 6Gbps)接続のSSDとしては良いほうのスコアだ。評価機が搭載するストレージデバイスはMicronの「MTFDDAV256MAZ-1AE1ZABHA」だった。これをSerial ATA 6Gbps対応のM.2に接続している。
実際のアプリケーション動作からシステム全体のパフォーマンスを評価するPCMark 7の総合スコアは3439だ。この結果は、第4世代CoreプロセッサーファミリーのCore i5-4300Uを搭載するSurface Pro 3に比べて約70%、Core M-5Y71搭載の「ASUS TransBook T300 Chi」と比較して約80%のスコアに相当する。また、Atom Z3775を搭載するTransBook T100 Chiに対しては約128%と大きく上回る。ビジネス利用がメインになるノートPCだが、参考までに3D描画能力も3DMarkでチェックした。
Webブラウズとテキスト入力を想定したBBench 1.01におけるバッテリー駆動時間の計測では、満充電から残り5%で休止状態に入るまで、5時間53分動作した。スペック上は、4セルのリチウムポリマーバッテリー搭載で36ワットアワー。約1000回の充放電サイクルを設計寿命とする「高耐久性」バッテリーを採用している。ハードウェア調査ツール「HWiNFO32」で調べてみても、Designed Capacityは、36336ミリワットアワーと同等だった。
1.57ミリの薄型本体にファンレスボディということで気になるのは、やはり“発熱”だ。検証作業では、室温24.6度でファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークを2回実行して時点において放射温度計で各部を計測した。最高温度となった部分は、本体背面の中央で40.5度だった。
また、同じ条件でHWiNFO32が示すCPUの温度は、CPUパッケージで最高59.0度だった。Core M-5Y51の最高動作温度(Tjunction)は95度なので、高負荷の状態でもまだ十分に余裕がある。
Folio 1020 SEは、パフォーマンスが控えめな一方、省電力の面でメリットがあり、バッテリー駆動時間、静音性、放熱性については満足できる結果を得た。
ボディ表面温度の計測結果(FF14ベンチ2回以上実行) | |||||||||
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本体の底面 | |||||||||
計測部 | 左上 | 中央上 | 右上 | 中央左 | 中央 | 中央右 | 左下 | 中央下 | 右下 |
計測値 | 33.6度 | 34.1度 | 28.2度 | 40.5度 | 34.1度 | 27.5度 | 32.0度 | 29.7度 | 26.3度 |
キーボード/パームレストの表面 | |||||||||
計測部 | 左上 | 中央上 | 右上 | 中央左 | 中央 | 中央右 | 左下 | 中央下 | 右下 |
計測値 | 29.4度 | 33.4度 | 35.9度 | 27.6度 | 31.3度 | 26.6度 | 28.6度 | 29.2度 | 32.8度 |
液晶の表面 | |||||||||
計測部 | 左上 | 中央上 | 右上 | 中央左 | 中央 | 中央右 | 左下 | 中央下 | 右下 |
計測値 | 27.1度 | 26.8度 | 26.4度 | 27.1度 | 27.8度 | 27.5度 | 28.4度 | 29.4度 | 29.0度 |
※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測
Folio 1020 SEは、1キロと軽量で最厚部が15.7ミリと薄型ながら、米軍調達基準「MIL-STD-810G」もクリアした堅牢なボディを実現した。これは、マグネシウムリチウム合金を天板やパームレストへ採用したことが大きい。マグネシウムリチウム合金といえば、NECの第1世代、第2世代のLaVie Zですら底面部分でしか使っていない。天板への採用は、第3世代(2015 International CESで参考展示したLaVie Hybrid ZERO HZ750/AA)に入ってからだ。HPは、加工が難しいこの素材を、いきなり天板に採用しただけでなく、キーボードやタッチパッドなどほかの素材と取り付けが必要で、加工が多いパームレスト(C面)にまで導入してみせた。
Folio 1020 SEは、中国生産と刻印があるものの、東京都昭島市にある日本HP昭島工場でカスタマイズと最終検査を行って出荷をしている。日本HPもこの東京出荷を品質を訴求するキーワードとして使っている。
サポート面でも、ビジネスノートPCであるFolio 1020 SEは、日本HPによる延長保証サービスを最長5年まで延長できる(同社の個人向けノートPCは最長3年までのサポートまでしか提供していない)。サービスパーツなどの保守用部材の供給期間が長くなることも“安心”といえるだろう。
PCを絶対的な性能や価格でななく、バランスのとれた総合力で選ぶユーザーに勧めたい1台だ。
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