Windowsの会社から脱皮するMicrosoft 悩ましいのはMobileか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2016年05月06日 10時30分 公開
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 ここ最近、Microsoftや関係各所との話を通して取材活動を続けていると、同社が明らかに以前とは違う方向を模索していることがうかがえる場面に遭遇する。

 サティア・ナデラ氏が米MicrosoftのCEOに就任した2014年2月4日に全従業員に宛てて送信したメッセージには、今日もたびたび目にする「Mobile first, cloud first」や「One Microsoft」というキーワードが最初から示されている。

サティア・ナデラCEO 3月末に開催された米Microsoftの開発者会議「Build 2016」で講演する同社のサティア・ナデラCEO
MSのスローガン ナデラCEOが掲げるスローガンの1つ「Mobile first, cloud first」

 実際、筆者の実感としてMicrosoftは以前ほど「Windows」というプラットフォームには固執しなくなってきており、従来のOEMからのライセンス収入が主軸だったらスタイルから、よりクラウドをベースとしたものへとシフトしつつある。最終的に、Microsoft全体として整合性がとれた状態で利益を上げられればいいという考えなのだろう。

MicrosoftがWindowsの会社でなくなる日

 米Microsoftは4月21日(現地時間)、同社会計年度で2016年第3四半期(1〜3月期)決算を発表している。売上高は前年同期比6%減の205億3100万ドル、純利益は20%減の37億5600万ドル(1株当たり47セント)だった。非GAAPベースの売上高は前年同期比で2%増の220億7600万ドル、1株あたりの利益(EPS)は前年から変化なしの0.62ドルで、米Thomson Reutersによる米金融街の予想値を2セント下回った。

MSの収益 Microsoft会計年度で2016年第3四半期(1〜3月期)のセグメント別収益(出典:10-Q)

 ドル高による為替の影響を非常に受けている面もあるが、売り上げがほぼフラットな状態になったのは、サーバ製品やクラウドサービス(AzureやOffice 365など)の伸びが好調な半面、全体では縮退傾向にある事業が存在しているからだ。

 これは特に「More Personal Computing」と呼ばれるWindowsやデバイス、ゲームを含むコンシューマーに近い領域で顕著で、「Surface」の販売が好調な一方、WindowsのOEMライセンス事業は減少しており、さらに事業方針を変更してデバイス事業を縮小させたスマートフォン分野でのマイナス46%という売り上げ大幅減によるものが大きい。

 ユーザーの目に直接触れる形でのWindowsから、Microsoftが直接利益を上げる割合はどんどん減りつつあるのが最近の傾向だ。Microsoftは2015年から社内組織を大幅に変更して事業部としての連続性がなくなっているため、正確な数字は分からないのだが、少なくとも筆者が把握している範囲で、2009年ごろから同社のWindows OEMの売り上げは減少傾向にあるとみている。

 理由は2つあり、リーマンショックと呼ばれた世界不況から2008年以降に企業の設備投資がストップしてPCの出荷台数が減少に転じたこと、もう1つはライセンス単価の下落に伴い売り上げ全体が減少したことだ。

 PC販売台数の減少はここ数年の継続的なトレンドであり、例えば米Gartnerが4月11日(現地時間)に発表した最新データによれば、2016年第1四半期(1〜3月期)の世界のPC出荷台数は前年同期比で9.6%減少した。PC減少の穴の一部を(Gartnerの集計には含まれない)タブレット型のPCが埋めている可能性はあるものの、年や季節により多少の変動はあれ、全体として横ばいか微減という傾向は変わらず、今後大きな伸びを期待するのは難しいかもしれない。

 むしろ直近の動きとして大きいのは、後者のライセンス価格減少だ。Microsoftは以前にNetbookにおけるLinux対抗で「古いバージョンのWindows XPを安価にライセンスする手段」に出たが、この時期のMicrosoftのWindowsライセンス売り上げは顕著に下がる傾向が現れた。Netbookブームが一段落するころに、今度は前述のPC市場縮小に見舞われ、そのまま現在に至っている。

 競合のタブレット製品対抗もあり、その後もライセンス費用の引き下げ圧力は常につきまとっており、Windows 8.1 with Bingのような実質無償のライセンスモデルまで登場するようになった。現在ではWindows 7/8.1ユーザーに対して「Windows 10の無償アップグレード」サービスを提供しており、PCの買い換えが発生しない限りはOEM経由でのライセンス収入は望みにくい(無償アップグレードは2016年7月29日まで)。

Windows 10 Windows 7/8.1ユーザーを対象としたWindows 10の無償アップグレードは2016年7月29日が期限となる。この期限を過ぎると、Windows 10 Homeエディションのアップグレード価格は119ドル(約1万3000円)になる

 Microsoftが4月26日に米証券取引委員会(SEC)に報告した10-Qの資料によれば、Windows関連の収入が減少した要因は2つあり、1つは特許ライセンス収入の減少、もう1つがWindows OEMの売り上げ減少だ。Windows OEMの売り上げは全体でみると2%の減少だが、「Pro」と呼ばれる上位版Windowsのライセンス収入は11%のマイナスと減少が目立つ。下位版にあたる「non-Pro」では11%増加したというが、これは昨年2015年の在庫整理に伴う売り上げ減少をカバーする形での業績回復であり、一時的な要因とみられる。

 そして、この10-Qのデータで興味深いのは「特許ライセンス収入の減少」の部分で、前年同期比で26%のマイナスになっている。米Business Insiderの報道によれば、これは「Androidデバイスの販売により、得られる特許収入」が減少したことに起因するもので、例えば中国などでMicrosoftと特許ライセンスを結んでいない端末メーカーがシェアを伸ばすことで、結果としてMicrosoftの収益機会が奪われてしまうという。

 かつて「WindowsとOfficeの会社」と呼ばれたMicrosoftは、遠からずクライアント向けのデバイスから直接得られるライセンス収入が極限まで減少し、筆者予想で収益全体の1〜2割程度まで落ち込むことになるとみている。ライセンス収入が増えるに越したことはないが、それはあくまで数ある収益の1つにすぎないのかもしれない。

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