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» 2016年05月06日 10時30分 公開

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windowsの会社から脱皮するMicrosoft 悩ましいのはMobileか (2/2)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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Windows 10 MobileとWindowsストアの今後

 2016年のMobile World Congress(MWC)開催を受けて、以前にMicrosoftのモバイル戦略に関する所感をまとめたが、現在のMicrosoftにとって最も扱いが難しい製品の1つになっているのが「Windows 10 Mobile」だと考える。

 米Microsoftが3月末に開催した開発者会議のBuild 2016では、基調講演で同OSについて直接触れられることがなかったため、「既にMicrosoftはWindows 10 Mobileを見放している」という論評も見られたが、これは恐らく違う。実際、米Windows CentralではWindows&デバイス部門トップのテリー・マイヤーソン氏が他の幹部やパートナーらに宛てたという手紙を入手し、同氏が「今後もWindows 10 Mobileにコミットしていく」と確約したことを紹介している。

 筆者の予想だが、実際にMicrosoftは最後のギリギリまでWindows 10 Mobileを諦めるつもりはないだろう。「必ずしも必要なものではないが、ないと戦略上困る」という位置付けの製品なのではないか。

テリー・マイヤーソン氏 Windows&デバイス部門トップのテリー・マイヤーソン氏。Windows 10 Mobileの責任者でもある

 2015年のやや古いデータではあるが、米IDCの報告によれば、世界のスマートフォンOSシェアはトップがAndroidの82.8%、2位がiOSの13.9%、3位がWindows Phoneの2.6%だ。2015年第2四半期のデータのため、この集計時点ではWindows 10 Mobileを搭載した初の端末である「Lumia 950」は登場していないが、恐らく数字的な変化はほとんどなく、むしろ減少している可能性さえある。

 Androidが引き続きシェアを伸ばす一方で、Windows Phoneは低空飛行のまま微減を続けており、これはOEMメーカーの数が一挙に増えた2016年以降のタイミングでもそれほど変わらないとみている。

Lumia 950 初のWindows 10 Mobile搭載端末となった「Lumia 950」だが、売り上げは芳しくないようだ……

 こうした状況ではあるものの、主に2つの理由からMicrosoftはWindows 10 Mobileを止められない。1つは「ニーズ」の部分だ。iOSはAppleデバイス専用のOSであることから、OEMメーカーが端末を開発したり、ユーザーがiOS以外のデバイスを導入しようと考えたりしたとき、Microsoftが撤退すると市場にはAndroidしか存在しないことになってしまう。これはメーカーやユーザーにとっても不幸な話であり、MicrosoftもクライアントOS側の制御を持てないことになり都合が悪い。

 2つ目は「MicrosoftクラウドやPCとの連携」だ。Continuum for Phonesが代表的だが、「Mobile first」の視点から新しい機能やサービスをユーザーに提供する場合、プラットフォームを持っているとアピールがしやすい。マイヤーソン氏を含むMicrosoft関係者の多くは「エンタープライズ市場」にWindows 10 Mobileの可能性を見いだしており、低空飛行ながらも一定の支持を得て今後もビジネスを継続していくのではないだろうか。

 一方で、MicrosoftはWindows 10 Mobileの存在をそれほど重視していない側面もある。これが「Cloud first」の部分で、同社のサービスは基本的にデバイスやプラットフォームをそれほど選ばない方向を指向している。

 例えば、Officeを含む同社のモバイルアプリやサービスの提供においては、Windows以外に必ずAndroidやiOSを含めるようにしており、Windows 10最大のセールスポイントの1つである「Cortana」でさえ、外部プラットフォームへと提供を行っている。

 現状で、企業向けのアプリケーションを含む多くのWebサービスはモバイル端末への対応をせざるを得ず、そのターゲットにAndroidとiOSを必ず含むようにしている。結果として、Microsoftがモバイル対応を打ち出す場合には、Windows 10 Mobileの前にまず必ずAndroidとiOSをサポートしなければならないため、Windows 10 Mobileならではのメリットを打ち出しにくい。Microsoftとしては、自社のクラウドやサービスをアピールするにあたって、プラットフォーム中立をうたわなければいけない点で皮肉だ。

 今後、企業ユースを中心にUWP(Universal Windows Platform)への対応が少しずつ進むことが期待できるものの、短期や中期でWindowsストアの大幅改善は難しい。UWPはアプリの管理面において有利だが、一方で本格的にアプリを拡充していくにはモバイルやゲーム機といったWindows 10ファミリーとの連携が欠かせないため、コンシューマー方面では若干不利になるだろう。

 ただし、これ自体はそれほど悲観するものではないとも考えている。モバイルOS向けの「アプリストア」はAppleが「iPhone 3G」をリリースした2008年以降の文化だが、登録されるアプリの数は増える一方で、その人気は特定のアプリに集中する傾向がある。利用するアプリやそのジャンルはユーザーごとに異なるが、主要なアプリをある程度カバーできれば、多くのユーザーのニーズは満たせるだろう。

 逆に、ここでユーザーにインストールしてもらえなかったアプリやサービスを提供する企業は、別の形でユーザーにアプローチをする必要がある。それはWebアプリケーションだったり、あるいはFacebookやLINEなど、大手サービスやアプリに相乗りする形かもしれない。

 Build 2016で「Bot Framework」を紹介する際にも登場した米GoMomentのラジ・シンCEOは、同社がホテルの自動応答サービスの窓口に、モバイルアプリではなくSMSのテキストインタフェースを選択した理由として、「誰もホテルに泊まるためだけにアプリは入れたくない」と説明していた。

 恐らく、多くのユーザーのユースケースにとって、アプリの数がそろっていること自体はそれほど重要ではなくなるのかもしれない。もちろん「やりたいゲームが遊べない」と不満を持つ人もいるだろうが、そうでないユーザーはWindows 10 Mobileでもそれほど不自由しなくなるだろう。

 真の意味で、ユーザーが好みのデバイスを選択できる時代が近づいてきているのかもしれない。


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