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» 2016年06月10日 06時00分 公開

過激なWindows 10アップグレード推進策でMicrosoftが失うもの鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

タダだからといって、ユーザーが望まない新OSへの移行を強引に進めてもいいのか。MicrosoftのWindows 10無料アップグレード推進策は、同社の信頼性を損ねる危険もはらんでいる。

Windows 10無料アップグレードは強制になったのか

 直ちにWindows 10へのアップグレードを行う気がないWindows 7/8.1ユーザーにとって、新OSへの移行を迫ってくる「Windows 10を入手する」(Get Windows 10、通称「GWX」)アプリは、もはや悩みの種になっているかもしれない。

 Microsoftは7月29日の無料アップグレード期限を目前に控え、「Windows 10への無料アップグレード日時を自動で予約して通知し、ユーザーが設定を変更しなければ日時通り実行する」といった“より過激”な方向にGWXアプリを仕様変更して自動配信してきたのだ。

 この強引な施策の影響は一般ユーザーにも広がって波紋を呼び、「Microsoft vs. 旧Windowsユーザー」で戦いの様相を呈していると言っても過言ではない。

Windows 10 Windows 7/8.1からWindows 10への無料アップグレードは2016年7月29日まで
GWX 5月に更新されたGWXアプリを開くと、このようにWindows 10のアップグレードが自動予約されている。「ここをクリックすると〜」の文字をクリックすると、スケジュールの変更やキャンセルが可能だが、クリックできる領域は「ここ」の2文字と小さく分かりづらい

 そんな中、ついに「キャンセルできないWindows 10アップグレード通知」が現れたと海外メディアが報じ、日本でも同様のことが起こるのではないかと一部で話題になった。

 報道したのは英メディアのThe Registerだ。読者からのレポートとして6月1日に掲載した記事によれば、Windows 10へのアップグレードを促す通知ウィンドウには「アップグレード日時の確認」と「直ちにアップグレード」の2種類のボタンが表示されるのみで、「キャンセル」するためのリンクや、ウィンドウを閉じる「×」ボタンが省かれてしまっている。つまり、ユーザーはアップグレード日時を決めるしかないというわけだ。

The Register The Registerの記事で話題となった画像。Windows 10へのアップグレードを促す通知ウィンドウには「アップグレード日時の確認」と「直ちにアップグレード」の2種類のボタンがあるだけで、「キャンセル」のためのリンクや、ウィンドウを閉じる「×」ボタンがない。一見、強制アップグレードのようだ

 しかし、この記事には2つの注意点がある。1つはウィンドウがGWXアプリのものではなく「Windows Update」を通じて表示されていること、もう1つはそもそも現行のGWXアプリでもウィンドウ右上の「×」ボタンを押した際にアップグレードがキャンセルされないということだ(既にアップグレードの日時が予約されており、GWXアプリのウィンドウ内にあるテキストリンクからキャンセルする必要がある)。

 筆者は実際にThe Registerが報じた画面を確認できていないが、もしこのようなウィンドウが表示される場面にユーザーが出くわしたならば、一度アップグレードを了承し、後の操作でキャンセルするしかない。つまり、やっていることは現行GWXアプリの「アップグレードの自動予約」と変わりがなく、表示されるウィンドウの内容が変化したため、多少操作がトリッキーになっただけと言える。

 その後、このThe Registerの報告はどうやら誤報だったことが明らかになった。同記事を受けて米Microsoftの公式コメントを掲載した米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、The Registerの記事は誤りで、これはWindows 10へのアップグレードを「了承」した後に、日付を変更するタイミングで表示されるメッセージとのことだ。なんともお騒がせな話だが、それだけ過激なWindows 10無料アップグレード手法に世界中が敏感になっているということだろう。

 まとめると、Windows 7/8.1ユーザーに対するWindows 10への無料アップグレードは現時点でかなり強引なものだが、完全な強制アップグレードまでには至っておらず、ユーザーから導入しないという選択肢が省かれたわけではない。

 Microsoftでは、Windows 7/8.1から10へのアップグレードに際して、必ず「ソフトウェアライセンス条項(EULA)」の確認を行うようにしており、この時点で「拒否」を選択すれば、アップグレード処理は途中でキャンセルされる。よく「朝起きたらPCがWindows 10になっていた」という話を聞くが、Microsoftによれば仕組み的にこのようなことはないという。

 ただし、EULAは読み飛ばして無意識的に「同意」を押してしまうユーザーは多いだろうし、GWXアプリによるアップグレード予約設定はキャンセルの仕方が分かりづらくなっている点に注意が必要だ。

EULA(1) アップグレードが開始された直後に表示されるメッセージ。この時点ではまだWindows 10にはなっていない。インストーラが起動中の状態だと思えばいいだろう
EULA(2) ソフトウェアライセンス条項(EULA)確認の画面。ここで「拒否」すればアップグレードを中断して旧バージョンの環境に戻せる
EULA(3) 再度確認してくるが、アップグレードを望まないのなら「拒否」で終了できる

※EULA関連の解説画像(上記3点)を追加しました(PC USER編集部/2016年6月13日13時)

 無料アップグレード期間の終了まであと50日。Microsoftがこれ以上にGWXアプリを変化させてさらに強引なアップグレードを推進してくる可能性はゼロではないものの、恐らく現在の仕様がほぼ最終形態となるだろう。

 6月7日には、こうした強引なWindows 10へのアップグレード策が法的に問題ないのかという参院議員の質問主意書に対して、政府が答弁書を決定し、「答えるのは困難」と回答を避けるなど、政治の世界にまで話題が出てくるようになった。無料アップグレードの期限が切れる7月29日まで、この混乱は続きそうだ。

GWXアプリの通知を受け取っているユーザーは多い

 実際、GWXアプリと格闘しているユーザーは多い。NetMarketShareの発表によると、2016年5月時点でPC用OSのシェアは、トップがWindows 7の48.57%、2位がWindows 10の17.43%、3位がWindows XPの10.09%、4位がWindows 8.1の8.77%となっている。つまり、少なくとも5〜6割のPCユーザーがGWXアプリの通知を受け取っている計算だ。

NetMarketShare 2016年5月時点でのデスクトップOSシェア(出典:NetMarketShare)

 この調査結果を見る限り、月ベースの推移でWindows 10のシェアは微増しているが、旧OSユーザーの大移動が見られるほどのペースは実現できていない。無料アップグレード終了直前の駆け込み需要を含めても、20〜25%程度のシェアに収まるとみられる。OSの先進性より、既存のアプリケーションやハードウェアを問題なく使い続けたいという旧バージョンのユーザーが重い腰を上げることはなさそうだ。

 無料アップグレード期間が終了した後は、コンシューマー、ビジネスともにPCのリプレースによる新OSへの入れ替えに期待しつつ、年単位で徐々にWindows 7/8.1を含む旧バージョンのユーザーを巻き取っていくしかない。2020年1月14日にWindows 7のサポートが終了となるため、そこまでは緩やかに移行が進むことになりそうだ。

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