1000人以上の声が生み出した理想のノートPC「Eve V」

» 2017年01月10日 06時00分 公開
[中井千尋ITmedia]

 市場が飽和するPC市場で、フィンランド・ヘルシンキ発のスタートアップ企業Eve-Techが粘り強くも画期的な製品を生み出そうとしている。

 彼らが取り組んでいるのは、1000人以上のガジェットファンからなるコミュニティーの「理想」を体現した2in1型ノートPC「Eve V」の開発だ。

 業界ウォッチャーの間では、実現すれば「Surface Pro 4」や「MacBook」にとって強力なライバルになるとも目されている。そのスペック、開発背景を紹介しよう。

コミュニティーの理想を体現したノートPC「Eve V」

出資目標額の1000%を余裕で超えたその魅力とは

 Eve-Techが開発中のタブレット型ノートPC「Eve V」。同社のコミュニティー「Eve.Community」に参加する1000人以上のガジェットファンお墨付きのスペックとは、以下の通りだ。

  • 第7世代 Core i7-7Y75/i5-7Y54/m3-7Y30
  • 一回の充電で最大12時間持続のバッテリー
  • 8GB/16GBのメモリ
  • 128GB/256GB/512GBのストレージ
  • 解像度2736×1824ピクセルの12.3型アンチグレアIGZO液晶ディスプレイ
  • クアッドスピーカー搭載
  • Thunderbolt 3×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.1×2、microSDメモリーカードスロット
  • アルミニウムユニボディー
  • 取り外し可能なワイヤレスキーボード
  • OSはWindows 10(HomeまたはPro)搭載
  • 指紋認証機能
  • サイズ295.9(幅)×205.3(奥行き)×8.9(厚さ)mm

 また、別売り(39ドル、約4500円。先行予約では本体付属)の「V Pen」はN-trig製で1024段階の筆圧検知に対応しており、付せんやスケッチパッド、画面スケッチなどの機能をまとめた「Windows Ink」を利用できる。

Eve Vのスペックと競合製品の比較(公式サイトより)

 同社は、クラウドファンディングサイト「Indiegogo」で2016年11月中旬より先行予約と資金調達のキャンペーンを開始した。

 スタイリッシュな北欧発のデザインに加え、コミュニティーメンバーの提案を元に構想された高いスペック、そして業者を介さない販売方法だからこそ実現できる低価格(先行予約価格は1399ドル、約16万5千円)で注目を集め、開始3時間で先行予約分が売り切れるほどの人気だ。

 キャンペーンは12月22日に締め切りとなったが、最終的には目標額の1888%である約140万ドル(約1億6千万円超)が集まり、大盛況に終わった。

Eve V開発の道のり 消費者から多くの声を得られた製品第1弾 

 創業者でCEOのKonstantinos Karatsevidis氏は、長年世の中のスマートデバイスに不満を感じていた。デザイン性は低く、パフォーマンスも満足いくものではない、それでいて高価格だと。

 そんな彼は2013年、ハイスペックなWindows搭載のタブレットを作って、Appleなど大手ブランドに対抗しようと決意。1年後の2014年12月には、Windows 8.1搭載のタブレット「Eve T1」を発売した。

2014年に発売されたタブレット端末「Eve T1」

 Eve T1に対する消費者の反応は良かったものの、改善すべき点を指摘されるなど社内だけでの開発に限界を感じた。そこで今度は消費者に直接意見を聞くことで、「Unbeatable(無敵)」の製品を開発しようと考えたのだ。

 コミュニティーが立ち上げられたのは、2016年1月。Konstantinosさんと同じく、世の中に出回っている製品に物足りなさを感じているガジェットファンが次々と参加した。

 コミュニティーでは求めるスペックに関するアンケートや、メンバーのPCの使用に関する経験談が提供されるなど、現在までにトピックごとに600近くのスレッドが立ち上げられている。

コミュニティー「Eve.Community」には1000人以上が参加

 同社はコミュニティーで集められた情報や意見を元に、デザインやコンセプトを決定した。製造パートナーの選定と交渉、機械・電子設計など、開発は急ピッチで進められた。

 そして11月中旬にはIndiegogoのキャンペーンを開始。11月末〜12月初旬にフィンランドで開催されたスタートアップイベント「Slush」にも出展し、会場にはサンプルを展示した。

 Indiegogoでの先行予約分の発送は、2017年2月を予定。ほぼ全部入りと言ってもいいほどのハイスペックではあるが、すでに実現のメドは立っているようだ。3月にはウェブショップをオープンし、量産していく考えだ。開発に関わったファンにとっては発送が待ち遠しいだろう。

ライター

執筆:中井千尋

編集:岡徳之


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