携帯性により優れたPCを欲するユーザーにとって今見逃せないトピックと言えば、MicrosoftとQualcommが共同で開発を進めている「Snapdragon 835プロセッサを搭載したフル機能のWindows 10 PC」だ。
Microsoftが2016年12月に開催した開発者向けイベントのWinHEC Shenzhenで発表されてから1年近くが経過し、その全容が明らかになる日は近づいている。
これは、ARM系SoC(System on a Chip)であるQualcommのSnapdragon 835を用いて、モバイルOSのWindows 10 Mobileではなく、PC向けフル機能版のWindows 10を(x86エミュレーションで)動かすというものだ。
10月中旬に香港で開催されたQualcomm主催イベントの4G/5G Summitでは、LTEの内蔵に加えて、「従来比で最大50%のバッテリー駆動時間」という数字をアピールしており、驚異的なスタミナを実現すると予告している。
一方で気になるのが、x86エミュレーションでどれだけのパフォーマンスを出せるのかという点だが、ベンチマークテストアプリの「Geekbench」に“それらしいPC”のスコアとスペックが掲載されており、話題になっている。既にGeekbenchのサイトからは当該スコアのページは削除されているようだが、Google Cacheに残されたスナップショットで確認できる。
この謎の製品は「Qualcomm CLS」とされており、メーカーのレファレンスモデルに近いものだと想定される。テスト結果の一例を挙げると、Geekbench 3.3.2のスコアはシングルコアで「1143」、マルチコアで「3626」という値だった。
これを単純にIntelプロセッサ搭載のWindows PCと比較してみると、第4世代Core i3 U(開発コード名:Haswell)の下位モデル程度のスコア、あるいは「Surface 3」が採用するAtom x7-Z8700(Cherry Trail)より多少よい程度のスコアと言える。
Qualcomm CLSはあくまで開発段階のモデルとみられ、実際の製品でどの程度のスコアが出せるのかは不明だが、少なくともIntelで最新の第8世代Core搭載PCにパフォーマンス面で遠く及ばないことは想像に難くない。
やはりSnapdragon 835搭載Windows 10 PCは、LTEの内蔵による常時接続かつ驚異的なバッテリー駆動時間による利便性の高さに価値があるということなのだろう。
なお、ドイツのメディアであるWinFutureでは、このQualcomm CLSに加えて、HPの「HP Proto 2」や、ASUSの「TP370QL」といった型番のそれらしいPCのベンチマークテスト結果もGeekbenchで発見できることを紹介している。
これらのテスト結果にはややばらつきがあるものの、共通スペックとしては32bit版のWindows 10 Proと4GB〜8GBのメモリを搭載している点が挙げられる。64bit版のWindows 10 Proではない点が気になるが、この辺りは各メーカーの続報を期待したい。
こうしたベンチマークテスト結果が出てきている一方、現時点で具体的な製品発表がない時点で、米ホリデーシーズン商戦(11月第4金曜日のブラックフライデーからクリスマスまで)での製品投入は厳しいという見方が優勢だ。
MicrosoftとQualcommは2017年内に市場投入とコメントしていたが、この公約を果たせたとしても、メインの商戦は年明け後の2018年に入ってからになるはずだ。年明け2018年1月に開催されるイベントのCES 2018辺りがターゲットではないかと予想している。
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