MicrosoftはWindowsでPC市場を席巻したが、スマートフォン市場では先行してアプリエコシステムを築き上げたiOSのAppleや、AndroidのGoogleに対抗できていない。
そのAppleの強力なiOSアプリエコシステムを支える開発環境において、2014年6月の世界開発者会議「WWDC 2014」で発表された新しいプログラミング言語「Swift」は、重要な役割を担っている。
同社は翌2015年12月リリースのバージョン2.0からSwiftをオープンソース化し、2016年にはコード作成を学べるiPad用アプリの「Swift Playgrounds」も提供するなど、その普及に努めてきた。2017年現在のSwiftは、それまで広く使われてきた「Objective-C」と共存しつつ、本格的にiOSおよびmacOSの開発言語として定着しつつあるようだ。
特にスマートフォンのアプリで成功したいならば、iOS向けアプリを作るためのSwiftやObjective-Cは開発者にとって重要な言語と言えるが、米InfoWorldはこうした状況に「異変が起きつつあるのではないか」と指摘している。
開発言語の人気度を指標化した「TIOBE Index」では、最近になってSwiftとObjective-Cのランキングが急落しており、「開発者離れが起きているのではないか」というのだ。
TIOBE Indexは複数の検索エンジンや関連ページの利用状況などを勘案し、月ごとに開発言語のランキングを発表している。最新の2017年11月版によれば、Swiftは20位、Objective-Cは19位と、いずれも前年同月から8位のランクダウンになっている。
ただし、TIOBE Indexの開発言語ランキングは、指標とはいえ曖昧な人気を数値化したものであり、特に今回は変動幅が大きかったことから、ノイズ的影響として信頼性を疑問視する向きもある。
なお、GitHubのリポジトリ数や各種サイトでの問い合わせ数などを基にした開発言語のランキングも複数存在する。例えば「PYPL」のランキングでは、SwiftとObjective-Cの順位が比較的安定しており、いずれも10位前後のポジションを前年同様にキープしている状況だ。
しかし、何らかの変化がSwiftやObjective-Cに起きつつあり、その兆候が一部TIOBE Indexに現れたという可能性は否定できない。
TIOBEのポール・ジャンセンCEOは、近年までAndroidアプリの開発言語と言えばJava、iOSとmacOSの開発言語と言えばSwiftやObjective-Cといった形で固定化しており、これが「iOSでのプログラム開発を避けられない」という昨今のスマートデバイス事情と合わせて、開発者がSwiftやObjective-Cを学ぶモチベーションになっていたと指摘する。
一方で、InfoWorldが言うように、Microsoftが買収した「Xamarin」あるいは「Apache Cordova」のようなマルチプラットフォーム開発環境の利用が進んでおり、あえて特定の言語に特化しない開発スタイルも選択できるようになった。SwiftやObjective-Cの影響を完全に排除できるわけではないが、以前ほど影響を受けないというのは事実だ。
今後こうした開発環境におけるトレンドの変化は、実際にXamarinなどを使ってリリースされる製品がさらに登場することで顕在化するのかもしれない。
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