AMDのいうAPUは、CPUコアとGPUコアのパッケージである。この点で、CPU版Ryzenと異なり、グラフィックスカード不要のコストでPCを組める。これはLGA 115x系のIntel Coreと同様だ。
その上で、今回のAPUはCPUコアがZenコアへ、GPUコアがVEGAへと進化した。従来のAPUは、GPU性能こそ高かったものの、CPU性能については少々劣り、それを高クロックで駆動していたため消費電力も大きかった。今回のAPU版Ryzenでは、そうした部分も大幅に改善されることが見込まれる。それではスペックを見ていこう。
製品名 | Ryzen 5 2400G | Ryzen 3 2200G | Ryzen 5 1400 | Ryzen 3 1300X |
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CPUコア世代 | Zen | Zen | Zen | Zen |
コア/スレッド数 | 4/8 | 4/4 | 4/8 | 4/4 |
コアベースクロック | 3.6 | 3.5 | 3.2 | 3.5 |
コアブーストクロック | 3.9 | 3.7 | 3.45 | 3.7 |
L3 | 4MB | 4MB | 8MB | 8MB |
TDP | 65W | 65W | 65W | 65W |
対応メモリ(最大) | DDR4-2933 | DDR4-2933 | DDR4-2666 | DDR4-2666 |
メモリチャネル数 | 2ch | 2ch | 2ch | 2ch |
GPUコア世代 | Radeon VEGA | Radeon VEGA | - | - |
GPUコア数 | 11 | 8 | - | - |
GPUクロック(最大) | 1.25GHz | 1.25GHz | - | - |
PCIeレーン数 | 8 | 8 | 16 | 16 |
まず、Ryzen 5 2400GのCPUコア部分については、4コア8スレッドとなっており、CCX×1基を搭載しSMTを有効化した構成だ。1000番台のRyzenでいうところの下位モデルと同様の構成といえる。動作クロックは定格が3.6GHz、ブースト時が3.9GHzで、Ryzenとしてはほどほど、Intel Coreを比較に加えればそこまで高クロックというわけではない。
GPUコア部分については、11CU構成となっている。ハイエンドグラフィックスカードのVEGAと比べればかなり少ないが、単純にCU数で比較をすれば、従来のAPUのA10-7870Kあたりが8CUだったのでそれよりも多い。アーキテクチャも違うため同列にはできないが、期待はできるだろう。
また、メモリもDDR4-2933までサポートされている。AMDは以前からOCメモリをサポートの範囲に入れている。統合GPUの場合は、メインメモリをグラフィックスメモリとしても利用するため、高速であれば高速であるほど性能は高まる。
OCメモリはJEDECメモリと比べて高価だが、グラフィックスカードを追加するほどの価格差ではないので、APU版Ryzenのパフォーマンスを引き出したいなら、積極的に狙っていきたい。もちろん、DDR4-2666などJEDECメモリでも問題なく動作する。
Ryzen 3 2200Gは、4コア4スレッドなので、SMTが利用できない点でRyzen 5 2400Gと異なる。また、動作クロックも定格が3.5GHz、ブースト時が3.7GHzと若干抑えめだ。GPU部分では、8CUとなるのでここも削減されている。ただしメモリはDDR4-2933までサポートされていて、ここは同じである。
Ryzen 5 2400GとRyzen 3 2200GのTDPはともに65W。TDPの意味がIntel CPUと異なるが、おおよそそのくらいの消費電力になることが期待される。また、従来のAPUの上位モデルでは、TDPが95Wであることも一般的だったため、ここが削減された。
おそらく、CPUコア部分の電力効率がZenコアによって劇的に改善されたところが大きいのだろう。統合GPUのニーズでもっとも大きい「低消費電力」という点を強くアピールできる。
ここで評価キットに含まれるマザーボードを見ておきたい。すでに市場にはRyzenを搭載できるSocket AM4のMini-ITXマザーボードがいくつかリリースされているが、今回はその新顔であるMSI「B350I PRO AC」が含まれていた。TDP65Wクラスの、Mini-ITXでも使いやすくグラフィックスカード不要のAPUが登場したことで、Socket AM4のMini-ITXマザーボードもこれまで以上に盛り上がっていくことだろう。
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