ユーザー向けの新機能が多かったiOSのアップデートだが、デベロッパーにとっても重要な進化があった。中でも大きいのがARKitだ。ARKitは「ARKit 2」へとバージョンが上がり、顔のトラッキングや、複数ユーザーでのAR共有が可能になる。これによって、ARを活用した対戦ゲームアプリも実現する。Pixarが開発したARのファイルフォーマット「USDZ」にも対応。メッセージやSafari、メールなどでも、ARを活用できるようになる。さらに、Apple自身のアプリとして、カメラに映し出した物体のサイズを測定する「Measure」も導入される。
Watch OSについても、ユーザーインタフェースが刷新されたWatch OS 3や、Apple Musicに対応したWatch OS 4と比較すると、着実な機能の底上げが目立った印象だ。目玉になりそうなのが、「Walkie-Talkie」。Walkie-Talkieとは英語圏で「トランシーバー」を指す言葉だが、その名の通り、片方向の通話を繰り返すことでコミュニケーションを取れる機能となる。
先に挙げたSiriのShortcutsはWatch OS 5も対応。ワークアウト中に友人と成果を共有して競えるようになるなど、Apple Watchが得意とするスポーツ分野の機能も強化されている。ワークアウトの自動検出が行えるようになる他、ヨガやハイキングといった新たなワークアウトにも対応する。
これまで、Apple Watchではメールが送られてきても、リンク先のサイトなどを見ることができなかったが、Watch OS 5ではこの機能も追加されている。Safariのようなブラウザがアプリとして搭載されるわけではないが、Apple Watchに届いたメールなどからより深い情報を確認できるようになるのは便利。iPhoneを取り出さなければならないシーンも減りそうだ。
この他、Apple TVはtvOS 12で臨場感あふれるサウンドが楽しめるDolby Atmosに対応。Dolby VisionとDolby Atmos両対応のセットトップボックスに進化を遂げる。Mac OSはメジャーアップデートとして「macOS Mojave(モハーヴェ)」が発表された。macOS Mojaveでは、黒を基調としたユーザーインタフェースの「ダークモード」が用意されることを発表。「ソースコードやインタフェースビルダーが、ものすごくかっこよく見える」というフェデリギ氏の発言には、会場に集う開発者から喝采が上がった。
macOS Mojaveの発表に際し、フェデリギ氏は「iOSとmacOSを統合するのかという質問が出ているが……」と自らウワサに触れつつ、これを全否定した。代わりに発表したのが、Mac用アプリのAppKitとiOS用アプリのUIKitを融合させる取り組み。まずはApple自身がこの仕組みを使って、ボイスメモやApple Newsといった自社アプリをMacに移植していく。開発者は、「来年(2019年)にこれが使えるようになる」(同)見込みだ。OS自体は2つを並走させていく一方で、iOSの豊富なアプリをMacに取り込んでいくというのがAppleの方針といえる。
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