Wi-Fiメッシュ技術では信号強度、クライアント数、チャンネルの可用性などから通信パスを最適化する。その中には単に端末と直接接続するアクセスポイントの選択だけでなく、アクセスポイント同士の通信パスも含まれている。当然のことではあるが、無線で通信を行うのはアクセスポイント間も同様であり、そのバックホールの通信分、通信量は増加することになる。
これは中継機にもあった問題で、単純に考えれば端末が2台目の(有線接続されていない)アクセスポイントに接続された場合、このアクセスポイントは端末・アクセスポイントの通信と同量の通信を1台目のアクセスポイントと行わなければならず、帯域の半減を招いてしまう。
つまり、メッシュWi-Fi技術の実現には通信パスの最適化といったフロント側の問題解決だけでなく、アクセスポイント間のバックホール通信が端末との通信に与える影響を抑える必要もある。
この問題に対するアプローチは両モデルとも同じで、端末とアクセスポイント間、アクセスポイント同士の両方でデュアルバンドを兼用し、必要に応じて最適な通信帯域・経路を選択するというものだ。高価なWi-Fiメッシュ対応ルーターにはバックホール通信専用あるいは兼用としてもう1バンド追加し、トライバンドに対応してパフォーマンスを向上させたものもあるが、これはコストパフォーマンスや本体の小型化とのトレードオフになるだろう。
なお、Wi-Fiメッシュ技術にはIEEE 802.11sという標準規格があり、同規格を採用したアクセスポイントであればメーカーに関わらずWi-Fiメッシュネットワークを構築できる。しかし、両モデルともWi-Fiメッシュネットワークは同社製品に限定されている。TP-Link demo M5は独自のTP-Link ART(Adaptive Routing Technology)を採用しており、Google Wifiは現在ではIEEE 802.11sに対応しているとは言っていないようだ。
また、Google WifiがAC1200クラスであるのに対し、TP-Link demo M5はAC1300クラス。両モデルとも2.4GHz・5GHzデュアルバンドであり、5GHz帯はIEEE 802.11ac 3×3 MIMO 866Mbpsで変わりはない。一方、2.4GHz帯はGoogle Wifiが300Mbpsに対し、TP-Link demo M5は400Mbpsと100Mbps上回っている。両モデルとも2.4GHz/5GHzで共通のSSIDを使用するため、一般にはアクセスポイントとの距離が近ければ5GHz帯、そうでなければ2.4GHz帯での接続になるはずだ。つまり、5GHz帯でつながれば両モデルとも違いはなし、2.4GHz帯でつながればdeco M5が有利、と考えられる。
実際にGoogle Wifi、deco M5をそれぞれ2台設置して通信速度を測定した結果は次の通りだ。測定は、サーバ側にCore i7-7700と16GBメモリを搭載したWindows 10マシンのiperf 3.1.3、クライアント側はXperia XZ上で動作するMagic iPerfを使用した。現在は多くの無線通信規格があり、それによって通信速度上限も大きく異なる。端末の対応プロトコル、アンテナ数によって規格上の上限が異なること、電波状況などの外的要因によっても大きく変動があることを考慮し、参考程度に見てもらいたい。
両モデルで大きな差が出たのは2台目のアクセスポイント近くでの速度だ。Google Wifiが最速ポイントから3分の1から4分の1くらいまで速度を落としてしまったのに対し、deco M5は8割弱を維持していた。これはアクセスポイント間の通信速度によって差が生じたものだと思われる。
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