それでは、いつものようにまとめていきましょう
といったところでしょうか。
ここで初めて書いた非常に重要な情報が、「替え芯買えない問題」です。まさかと思ってチャットと電話で別々の問い合わせ担当者に聞いてしまいましたが、同じ回答でした。お絵描き用途としてはこれだけでもノーディールになり得ると思います。
総じて、ノートPCとして見れば上質でデザイン性も高く、デスクトップPC並の高性能であり、メモリ上限が16GBなのが若干惜しい以外は、イラスト制作業務にメインで使って困ることのないPCです。これに十分な運搬性と、業務用途で頼れるサポートプランが提供されていて、1台で何でもできる「モバイルなスタジオ」として見て、本当に良いものでした。
ですが、ペンで画面に描くデバイスとして見ると評価は反転します。4000段階の筆圧や傾き検知での正確な表現が訴求され、商品ページでもアートを製作している様子が掲示され、ペン自体も「プレミアム」の名を冠してApple Pencilより高価に設定されています。これに加えて、Dell Canvasなどで製作用途のペンデバイスへの取り組みの実績があることから、自然に期待できるレベルというのはあると思います。
ただ残念ながら今回は、そのレベルではありませんでした。性能もそうですが、PC本体への豊かなサポートからは想像しづらい、ペン自体へのサポートの欠如は、何年も前によくあった「付けました。これでいいよね」という、Windowsのペンデバイスの印象のままです。
これが数年前ならば、満足とは言いづらいけど実用できなくもないペンデバイスがもう1台登場した、という感想で済むのですが、今はワコムは性能以上に感触の領域の進化を果たし、Apple Pencilは圧倒的な性能で登場し、Surface Proもそれを追い上げている時代です。そこにプレミアムと言いながら出すのがこのレベルでは、ちょっと無頓着なのではというか、絵を描く人がネグレクトされているような悲しさすら覚えます。
逆に言えば、問題なのはペンだけです。例えば、Surface Proの新ペンよりちょっと優れているぐらいの出来だったら、普段は省電力な制作PCとしてCintiq Proを接続して使い、帰省や授業などには単体で持ち出し、Cintiq Proが故障した際のバックアップになる液タブとして、かなり真剣に購入を検討したと思います。
デルも昔から好きなメーカーなのでがんばってほしいですし、AESというソリューションを提供しているワコムにもがんばってほしいと思います。ワコムは一時期Cintiq Proで、ある条件下でジッターが出やすくなることがありましたが、きちんと修正してくれました。
現在のワコムはAESや外販デバイスなどのソリューション事業が、CintiqやIntuosなどの自社ブランド事業に近い規模の売上高に急成長しています。このように、業界の標準化に取り組み、重要度が増していくソリューション事業の中でも、「絵師が安心して使える」「ペンの品質は良いよね」というワコムのイメージが形成できるのか、それとも「ワコムの技術が載っているからといって油断ならない」のままで行くのか……今後も注目していきたいです。
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