2019年PC春モデルのトレンドを考察 「ノートPCの地味ながら着実な進歩」とは(1/2 ページ)

» 2019年02月01日 12時39分 公開
[長浜和也ITmedia]

 国内メーカーをはじめとする「2019年PC春モデル」がほぼ出そろった。従来、春モデルは1月にまとめて発表する主に個人向けの新製品を指していた。その“基準”でいうと、NECパーソナルコンピュータ、パナソニック、東芝クライアントソリューション改めシャープ傘下のDynabook、そして、海外メーカーのデルとLGエレクトロニクスの発表した製品が該当する。

 富士通は法人向けモデルのみを発表し、VAIOからは、従来モデルのディスプレイサイズアップバージョンを1モデルのみ(VAIO A12は2018年11月発表)。また、レノボは2019 International CES(以下CES2019)で新モデルを公開したものの、日本市場向けの販売については現時点で明らかにしていない。この事情は日本HPも同様だ。

 この記事では、上記の「日本市場向けに発表した春モデル」で登場した注目モデルを取り上げることで、最新のノートPCにおける動向を確認してみる。

dynabook G 東芝とシャープの融合

 モデル以上にメーカーとのモノに関心が集まったのが1月に発足したDynabookだ。東芝(最終段階は東芝クライアントソリューション)のPC事業がシャープに移り、その傘下で新たに「Dynabook株式会社」としてノートPCの開発と販売に当たることになった。

 東芝時代のメンバーはほぼそのままDynabookに残り、「今のところはこれまでと変わらずやっていますよ」と中の人も話している。シャープも以前は「Mebius」「MURAMASA」といったブランドのノートPCを開発販売していたが、現時点では東芝とシャープの連携によって「東芝の軽量薄型堅牢設計技術とシャープの軽量高精細省電力液晶」をノートPCのメリットとして訴求している。

dynabook G

 そのDynabookの新規格新設計モデルとして登場したのが「dynabook G」だ。そのモデルでDynabookが重点的に訴求していたのが「軽さ」と「堅牢性」。13.3型ディスプレイを搭載しながらも本体の重さを約779g(最軽量構成時)に抑え、かつ、社内堅牢性評価とMIL-STD 810Gで定める試験規格の内10項目をクリアするだけでなく、第三者認定機関による堅牢性試験による検証を説明会では時間をかけて訴えた。

 また、新製品発表会では言及しなかったものの、Dynabookでは製品企画の段階で「購入しやすい価格」も重要な要素と考えていた。そのため、10層システム基板の層をまたがる配線技術で配線デザインの自由度が高い代わりにコストがかかるスタッガードビアではなく、配線デザインに制約はあるもののコストを抑えられるスルーホールビアを採用するなど、コスト圧縮の工夫を施している。

NEC、音声でPCを「起こす」一体型にキーボードを重視したノートPC

 春モデルでNECパーソナルコンピュータ(以下、NEC PC)が特に訴求したのが「音声でシャットダウン状態から起動できるディスプレイ一体型PC」(LAVIE Desk All-in-one)と「キーボードの打ちやすさを重視したノートPC」(LAVIE Note Mobile)だ。

 音声によるPCの操作についてNECは「PC-8001が登場した40年前からユーザーを制約してきたキーボードとマウスから解放して真のHome PCを目指す」ための有力なマンマシンインタフェースとして位置付けている。

 なお、製品発表会では「出掛けるためために化粧をしていて手が使えない女性が音声でインターネット上の情報を表示させたり音楽を再生したりする」デモで音声操作のメリットを訴求していたが、同様な使い方ができるスマートスピーカーに対しては「競合するものではない」と述べ、音声操作はあくまでもPCを使いやすくする操作方法の選択肢という考えを示している。

 ノートPCで打ちやすいキーボードを重視したのは、製品企画の段階で調査した「大学生の使い方」を検討した結果という。調査対象の9割以上がPCを使う理由としてレポート作成を挙げており、長文の入力において重要なデバイスとなるキーボードで、A4サイズノートPC用キーボードに相当するキーピッチの確保と無理のない運指で使えるキー配列、そして、大学生がレポート作成で利用する機会が多い図書館でも使えるタイプ音の抑制の実現を目指している。

 キーピッチの確保と無理のないキー配列の実現では、使い勝手を考慮して通常はノートPCの側面に配置するインタフェースを全て背面に追いやり、キーボードサイズを左右側面ギリギリまで伸ばすことで可能となった。

LAVIE Note Mobile

ディスプレイを大きくしたのにサイズそのままでより軽くなったVAIO新モデル

 VAIOは14型ディスプレイを搭載した「VAIO SX14」を発表した。ボディーサイズが13.3型ディスプレイを搭載したVAIO S13とほぼ同じサイズで、かつ、重さは約999グラムとVAIO S13より軽くなっている。

 これは天板にカーボンウォールを採用したおかげで、軽さとともに堅牢性も確保できたとVAIOは説明している。天板のカラーバリエーションにはブラックとシルバーに加えてVAIO S13にはなかったブラウンもそろえた他、最上位構成モデルではボディー全体を黒で統一した「ALL BLACK EDITON」を用意する。なお、価格は最小構成モデルで16万2800円だが、ALL BLACK EDITIONでは25万9800円となる見込みだ。

VAIO SX14 ALL BLACK EDITION

従来デザインをほぼ踏襲したNew XPS 13に2-in-1モデルが登場したInspiron

 デルが日本市場向けに2019年1月に発表したのは、13.3型ディスプレイを搭載したNew XPS 13とディスプレイを360度回転させてクラムシェルスタイルのノートPCとしてもタブレットとしても利用できるInspiron。

 New XPS 13はCES 2019で公開したモデルを日本市場で展開する。そのスタイルは2018年に登場したNew XPS 13とほぼ共通するが、従来モデルではディスプレイの下に設置していたWebカメラをディスプレイの上に移して、他のノートPCと同等の使い勝手になったのが大きな変更点だ。

 上位構成ではディスプレイの解像度が3840×2160ピクセルでタッチパネルを搭載したモデルも用意する。また、カラーバリエーションでは従来の「プラチナシルバー」と「ローズゴールド」といった金属の質感を持たせたモデルに加えてホワイト系の「フロスト」という非光沢のカラーリングも用意している。

New XPS 13

パナソニック、Let'snoteの基本性能向上に徹する

 パナソニックが春モデルで投入したのは、従来の「SV8」「RZ8」「LV7」「XZ6」各シリーズの性能強化モデルだ。新しいシリーズの追加はない。パナソニックが訴求するのはSV8とRZ8で第8世代Coreを採用したこととワイヤレスWANモデルの追加、そして、Windows 10で用意しているモダンスタンバイへの対応など電力管理機能の強化や漏れ電流対策といった回路レベルでの改良によるバッテリー駆動時間の向上だ。

 バッテリー駆動時間では最長で21時間にも達している。製品のコンセプトは光学ドライブや本体搭載インタフェースの種類と数の多さと軽量で堅牢なボディー、長時間のバッテリー駆動と従来と共通する。各シリーズそれぞれの本体サイズと重さも従来と大きく変わることなく、価格も20万円台前半(SV8シリーズ)から後半(XZ6シリーズ)とほぼ同じで、ディスプレイサイズにCPU、ストレージとシステムメモリの容量などがほぼ同等の競合製品と比べてやや高めなのも変わらない。

Let'snote SV8
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