このような事情を解決するには、有線で接続するのではなく無線で接続するのが望ましい。そこで、D-Sub 9ピンのRS-232CをBluetoothに“変換”するアダプターを利用してみた。今回使用したのは、ラトックシステムの「REX-BT60」(税別2万4000円)だ。D-Sub 9ピンのオスコネクタ(EIA/IA-574準拠)を備え、これを周辺機器のD-Sub 9ピンメスコネクタと接続する。2013年に登場した“息の長い”製品だが現在も現役だ。
本体に備えているスイッチ類は、リセットボタンと4つのディップスイッチのみ。起動ボタンはなく、REX-BT60の電源コネクタに5Vの駆動電力を供給した時点で起動する(製品にはACアダプターが標準で付属する)。
ディップスイッチでは、工場出荷状態への初期化と転送レートの9600bps固定、フロー制御有効/無効に9番ピンからの駆動電力供受給のオン/オフを切り替える。ボーレートやデータビット、パリティーの有無、ストップビットなどRS-232Cのシリアルデータ通信に必要な設定は、製品に付属するCD-ROMに収録するWindows、Androidそれぞれのサンプルプログラムから実施する。
これらのサンプルプログラムは、USBメモリやクラウドにフォルダごとコピーすれば、コピーしたフォルダからインストートルプログラムを起動することでWindows、およびAndroidにそれぞれ導入できる。また、Google Playに対応したAndroidデバイスなら、「BtSerialUtility」を検索して導入してもいい(というか、この方法が最も簡単だ)。
なお、REX-BT60とのペアリングはWindows、AndroidともにOSの標準手順にのっとる。ただ、起動してからすぐ(STATUSインジケータが青く2回ずつ点滅している間。1分程度)にペアリングをしないと休止状態になって接続処理ができなくなる。この場合、リセットボタンを押すか(先のとがった針状の器具が必要。経験では“つまようじ”でも大丈夫)、電源コードを一度抜いてから再び差してREX-60BTを“再起動”する必要がある。
PCもしくはAndroidデバイスとBluetoothで接続し、周辺機器のD-Sub 9ピンコネクタにREX-60BTを取り付け、REX-60BTに電源ケーブルをつないで起動させる。そして、PCまたはAndroidデバイスとペアリングができてサンプルプログラム(実態はシリアルポート設定ユーティリティー)を導入できれば、後はサンプルプログラムを起動して、周辺機器の仕様に合わせてボーレート、データビット、パリティー制御、ストップビットを設定すればいい。AndroidデバイスとRS-232C対応周辺機器、Bluetooth接続が正常であれば、BtSerialUtilityに受信したデータのコードが表示される。
AndroidやiOSで動作する電子海図と航法支援アプリは数がだいぶ増えてきた。日本水路協会が提供するPC版「航海用電子参考図(new pec)」のiOS版「new pec smart」(Android版はリリース未定)は、小型船舶で航海区域が沿岸の法定備品に認可されている。Android版でもNAVICSやEmbark、OpenCPN、Transas iSailor、iNavXなど、高機能で実績もある電子海図と航法支援アプリが存在する。その中にはAISデータの重畳表示対応を訴求するものがいくつかある。また、AISデータ表示アプリも数多くある。
しかし、その多くは船舶がVHFで送出するAISデータを陸上の施設で受信し、それをインターネットを通じて配信するデータとなるため、洋上でインターネット接続が確立できない状態ではAISを表示できない(例えばnew pec smart)。さらに、船舶がAISデータを送出してからインターネット越しに受信して表示するまでタイムラグが発生することがある。長いときには数十分のラグが発生することも珍しくない。
そうなると、AISデータとして表示した状況(AISデータには位置情報の他、針路、速度、船の状態なども含む)と洋上にある状況とで異なることになり、安全のために活用する航海情報としては役に立たない(その意味で、法定備品たるnew pec smartがAIS対応をうたうのは問題ありと考える)。
AISレシーバー、または、AISトランスポンダーから直接AISデータを受信してリアルタイムの状況を表示できるアプリとなると、まだ数は少ない。今回はその中からBluetooth接続に対応したIBC srlの「AISpilot」とiacobusの「Sailtracker」を試した。
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