ところが今後、PCにおいてもアプリケーションの使われ方が変化し、スマートフォンライクな使い方が増えてきたらどうだろうか。Always Connected PCではあるものの、必ずしも全ての処理をクラウド側に投げるのは現実的ではない。
今後ユーザーインタフェースがキーボードやポインティングデバイスだけでなく、音声認識や各種ジェスチャーなどにまで拡大していったとき、全部をクラウド処理にするのか。また、画像認識やテキスト抽出、翻訳などの作業を全てクラウド側で処理するのかといったことを考えたとき、ローカル処理の可能性は広がっていく。
もちろん、常に持ち歩いているスマートフォンとは利用シーンが異なると思うが、PC上のアプリケーションが変化していけば、PCの利用シーンもまた少しずつ変化していく可能性がある。これはAlways Connected PCも同様で、現状では単に「Wi-Fiが使えない場所でもインターネット接続できる」というものでしかなくても、バックグラウンドでの通信が前提のアプリケーションが登場することで、新たな提案が行えるかもしれない。
こうした処理を効率よく実行できるのがWindows on SnapdragonのアピールポイントだとQualcommでは考えており、少しずつスマートフォンの世界の流儀をPCの世界へと持ち込もうとしている。
スマートフォンや薄型PCというフォームファクターの制約上、どうしてもピークパフォーマンスよりは電力効率の部分に比重を置かざるを得ないSnapdragonは、やはりPC向けハイエンドプロセッサと比較すると総合パフォーマンスで見劣りする弱点があった。
だが近年、多くのユーザーが利用するPCアプリケーションの環境が変化しない一方で、スマートフォンそのものの性能は着実に上昇してきており、もはやパフォーマンスが普及のネックとは言いづらい状況になりつつある。
2020年前半にはArm向けにもChromium Edgeがリリースされ、多くのアプリケーションはWebブラウザをベースにGPU処理にも大きく依存すること、そして「x64エミュレーション」などのうわさもあり、着実にWindows on Snapdragonに風が吹きつつある。
SnapdragonはCPUの機能向上もさることながら、近年のPC向けプラットフォームでは主にGPUの強化を行っており、さらには前述のようにAI処理向上のための演算ユニット強化やライブラリ対応を本格的に進めている。
例えばSnapdragon 865の実験機でベンチマークテストをしたところ、Geekbenchで前世代の855の約2〜3割程度アップ、AI関連の2つのベンチ(AImarkとAITuTu)で2倍程度のスコアをたたき出しており、この数字はQualcommの公称値とほぼ一致する。既存アプリケーションについてはエミュレーション動作というハンディはあるものの、「Arm PCは非力」というのはもはや過去の話だと考えていいだろう。
Qualcommは、普及に向けて新たな手を打ち出した。
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