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» 2019年10月08日 12時00分 公開

Windowsフロントライン:Surface Pro XとSurface Laptop 3にみる、MicrosoftがSnapdragonとAMDプロセッサを採用した理由 (1/3)

Microsoftが発表した新モデル「Surface Pro X」と「Surface Laptop 3」。それらに搭載されるプロセッサから、ぶれないMicrosoftのハードウェア思想を見ていく。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 本連載の前回(「Windows 10Xと『Surface Neo』『Suface Duo』の疑問を整理する」)で、“2画面”Surfaceに関する素朴な疑問への回答や考察をまとめたが、今回は10月2日(米国時間)にニューヨーク市内で開催されたMicrosoftの製品発表イベントにおいて登場した他の製品、特に「Surface Pro X」と「Surface Laptop 3」について取り上げたい。

 両モデルは、それぞれQualcommのSnapdragon SoCとAMDのプロセッサを搭載するMicrsoftにとって初のPC製品となるが、その背後にある事情をたどることで、同社がSurfaceビジネスで実現しようとしているものの本当の姿が見えてくると考えている。

カスタムプロセッサを搭載した「Surface Laptop 3」と「Surface Pro X」

1世代だけで終わらないMicrosoftとAMDの関係

 今回発表されたArmデバイスであるSurface Pro Xと、AMDプロセッサを搭載した15型Surface Laptop 3に共通するのは、「Surface向けにカスタマイズされた専用チップ」を採用した点にある。

 前者はQualcommとの共同開発品である「Snapdragon QC1」というオリジナルSoCで、後者はAMD Ryzen Mobileに相当する製品だが、実際には15WのTDPで11 Compute Unitを搭載したVega GPUのモデルは存在せず、Microsoftの公式Blogによれば、「AMD Ryzen Surface Edition processor」という名称になっている。つまり、SoCやプロセッサの供給で先端を走る2社が、わざわざMicrosoftという1社がリリースする1製品のためにカスタムチップを用意し、それを供給したというわけだ。

 残念ながらMicrosoftを含む各社が現時点で公開している情報は非常に限られており、公式情報から参照できる情報はない。ただ、AnandTechの「Already Working on 2nd Gen: AMD’s Ryzen Microsoft Surface Edition and what Semi-Custom Means」と、The Vergeの「Inside Microsoft's New Custom Surface Processors with AMD and Qualcomm」という2つの記事は関係各所への複数のインタビューを通じて背景についてよくまとめており、このSurface 2製品発表のバックグラウンドにどのようなやり取りが存在し、今後製品がどのような方向性を目指しているのかが浮き彫りになっている。

 両社ともフルスクラッチでプロセッサを起こすのではなく、AMDは既存のRyzen Mobileを、QualcommはSnapdragon 8cxを若干カスタマイズする形で顧客の要望に応えている。コストと開発時間の関係だが、台数が出てこそというクライアントPCのビジネスで、こういった特別待遇は割と珍しい。

 このような取り組みを可能にしたのは、Microsoft(というよりもSurface開発チーム)が明確な目標を持って比較的長期の視点で製品開発を行っていること、そしてそれを実現するために2社が長期のパートナーシップをもって製品提供を確約していることによる。

 例えば、AnandTechの記事では米AMDコーポレートバイスプレジデント(CVP)でセミカスタム部門担当ジェネラルマネージャのジャック・フィン(Jack Huynh)氏と、同社CVPでシニアフェローのセバスチャン・ナスバウム(Sebastien Nussbaum)氏へのインタビューの中で、AMDとMicrosoftの提携が今回の1製品限りの関係ではなく、複数年にわたるパートナーシップであることを紹介している。

 これは今後も提携が続くことで、複数世代の製品に渡ってMicrosoft、つまりSurfaceへのプロセッサ供給を同社が行っていくということを意味している。両社の関係が長く続いていることを示すものとして、Surface Laptop 3向けのカスタムチップも設計段階からの調整で2年の歳月を費やしており、7nm製造プロセスを用いた最新のZen 2アーキテクチャではなく、現行の12nm製造プロセスのものがベースとなっている。

 これは製品サイクル上の理由だが、両社の関係が続く限りは次世代アーキテクチャのチップを搭載した製品が登場するということになる。The Vergeの記事によれば、両社のエンジニアは同じビルで開発作業を続けていたということで、このあたりも興味深い点だ。

 同様に、「SQ1」も比較的長期の視点からのパートナーシップで登場した製品だ。

 MicrosoftとQualcommの関係については、もはや言及するまでもないと思うが、The Vergeは記事中のMicrosoft Surfaceエンジニアであるパバン・ダブルリ(Pavan Davuluri)氏へのインタビューの中で「At the time when we conceived the Surface Pro X, several years ago, there was no available silicon that could give us the performance we wanted with the power we wanted and the form factor we wanted.(われわれが数年前にSurface Pro Xを思い描いた当時、われわれが望むパフォーマンスやフォームファクターを実現する半導体は存在しなかった)」とコメントしている。

 ターゲットとしていたのはiPad Proのような“タブレット”市場で競合となるデバイスだが、IntelとQualcommを含め思い描いた製品を実現するためのチップは存在していなかったという。つまり、2018年末に発表されたSnapdragon 8cxでも不十分で、それをさらに望む形でSurface向けにカスタマイズしたのが「SQ1」というわけだ。

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