Microsoftが2画面Android端末「Surface Duo」を投入するワケITはみ出しコラム

» 2019年10月06日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 秋はハードウェア発表イベントのシーズン。Apple、Amazonの次は、Microsoftが10月2日(現地時間)にニューヨークで開催した「Surface Event」でした。この後、10月15日にGoogleの「Made by Google」イベントが控えていますが、今のところMicrosoftの発表が一番楽しかった。

Panos Panay Surface Eventといえばこの人、パノス・パネイCPO

 何といってもイベントの最後に披露された、5.6型ディスプレイを2枚搭載して折り畳める新端末「Surface Duo」が圧巻。Surface立ち上げから7年目、サティア・ナデラCEOとパノス・パネイCPO(最高製品責任者)が掲げるぶれないビジョンの今年の(発売は来年だけど)到達点は、「ポケットに入るSurface」でした。

 Surface Duoは、イベントでその前に紹介した9型ディスプレイ2枚搭載の2in1端末「Surface Neo」をそのまま小さくしたかのような、映画「オースティン・パワーズ」の「ミニ・ミー」みたいなSurface。

Surface Duo 左が5.6型ディスプレイを2枚搭載した「Surface Duo」、右が9型ディスプレイを2枚搭載した「Surface Neo」

 でも、OSはNeoの「Windows 10X」(2画面PCに最適化されたWindows OS)ではなく、Androidベースです。パネイさんいわく「Microsoftの最高の部分と、Googleと協力してAndroidの最高の部分を1つの製品に統合した」。

 OSをAndroidにしたことは、Surfaceの3つの野望(後述)の1つ、「全てのデバイスでの自然な体験」を大事に考えれば当然の帰結だとパネイさんは言います。

 米Wired米The Vergeよると、ポケットに入るSurfaceは、3年前から構想していたそうです。ナデラさんがイベントの最初に語った、Surfaceの3つの野望、「コンピューティングをあらゆる場所、デバイスに組み込む」「フォームもファンクションも、全てをイノベートする」「全てのデバイスで自然な体験を広げる」の先に、通話もできるSurfaceが当然あったのでした。

Satya Nadella サティア・ナデラCEO

 イベントの最後、2画面端末のSurface Neoで盛り上がった会場で、これで終わりと見せかけてステージから帰りかけたパネイさんはステージ中央に戻り、「One more thing」とは言いませんでしたが、「オーライ、まだこれで終わりじゃない。今日見せたのはSurfaceのオーケストラだ。だが、オーケストラにとって、足りない楽器がまだある。見てほしい」と言って、Surface Duoの動画を披露しました。


 会場を見回し、動画への招待客の反応にほっとしたような表情のパネイさんは、「これはSurfaceだ。皆さんがこれを電話だとか、コミュニケーション端末だとか言うだろうと、超ハッキリ(super clear)分かっているけど、それに、確かにこれはその両方でもあるんだけど、これはSurfaceなんだ」と語りました。

Surface Duo 「(スマホではなく)これはSurfaceなんだ」とパネイさん

 メディアのインタビューでも、「電話じゃない」と何度も言っています。大きな違いは、「電話には限界がある」けど、Surface Duoは1つの端末で電話だけじゃなくて何でもできるところだそうです。

 電話だと、通話しながらカレンダーで予定を確認したり追加したり、送ってほしいと言われたファイルを送ったりできないけど、Duoならできる、と。なるほど、私も外出先でスマホで電話しながら予定を聞かれ、困ることがあります。

 Neoもですが、そういうマルチタスクには、2画面が向いているとMicrosoftは考えました。それを実現するためにタブレット向けにはWindows 10Xを開発しましたが、通話もできるフォームファクターにはAndroidが最適だと判断したようです。

 ナデラさんはWiredのインタビューで、「OSはわれわれにとって、もはや最重要なレイヤーではない」ときっぱり。つまりWindowsは最重要事項じゃないということです。これは、2017年に「Windows Graph」構想を打ち出したころ、既に兆しがあったことです。

 「われわれにとって最も重要なのは、アプリモデルと(ユーザー)体験だ。開発者がDuoとNeoのアプリを開発するには、単にWindowsアプリあるいはAndroidアプリを開発するよりもやることがたくさんある。これはMicrosoft Graphの一環だからだ」とナデラさん。

Neo Duo 左がSurface Neo、右がDuoのディスプレイを開いた様子

 NeoとDuoの発売が来年のホリデーシーズンである理由の1つがここにあります。開発者さんに、NeoとDuoの2画面で同じように動くアプリを開発してもらう必要があります。PCでもNeoでもDuoでも戸惑うことなく使えるアプリが、発売段階でそろっていてほしいのです。

 「Microsoftがスマートフォン市場に再々参入」と報じられがちですが、ナデラさんもパネイさんもAppleやHuaweiとスマートフォン市場で争うつもりは毛頭なく、「Surface交響楽団」に欠かせないメンバーとして、通話もできるSurface Duoを加えようとしているのでした。

 そういえば、かつてWindows Mobileでがんばっていたジョー・ベルフィオーレさん(現在はEssential Products Groupのコーポレートバイスプレジデントとして主にソフトウェアを担当)はどうしているかな、と公式Twitterを見てみたら、このイベントを客席から見ていたようで、イベント終了後、「ほっとしたー! 涙を浮かべて満面の笑み状態。チームを誇りに思うし、発表された製品に興奮してる!」とツイートしていました。

 ナデラさんが打ち出しているMicrosoftのミッションは「地球上の全ての人と全ての組織が、より多くのことを達成できるように支援する」というもの。このミッションの下、Microsoftは一丸となって粛々と前に進んでいるように見えます。

 来年のホリデーシーズンが楽しみです。

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