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» 2019年12月20日 12時00分 公開

Windowsフロントライン:Windows+Snapdragonが飛び立つ日 (1/3)

Qualcommが「Snapdragon Tech Summit 2019」を開催した。そこで明らかにされた新SoCによって、Windows on Snapdragonはどのように羽ばたいていくのだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 筆者がWindows+Armと付き合いだしたのは、2012年に発売された「Surface with Windows RT」までさかのぼるが、この当時のArm PCは前評判ほどにはブレイクせず、2世代目にあたるSurface 2の登場をもって世の中から姿を消してしまった。

あれから7年が経過して

 理由は主に3つあると考えており、1つは従来のWindowsアプリケーションを動作させることができず、Arm版アプリ(しかもWinRTベースのもの)を新たに開発しなければならなかったこと、2つめはパフォーマンスが十分でなく用途が限られていたこと、3つめはIntelなどの競合プロセッサで価格や消費電力面で十分対抗できるラインアップがそろっており、あえてWindows RTを使う理由がなかったことが挙げられる。

 3つめの理由について、実際に後にリリースされたSurface 3はAtomベースのSoCを搭載しており、従来のSurface RTラインの戦略が“失敗”だったことを物語っている。

 一方で、1つめの「アプリケーションがない」と2つめの「パフォーマンス」については「限られた用途なら十分じゃないか」ということで、欧州を周遊取材中の2週間をSurface RTとともに過ごしてみたが、既存のPCを置き換えるほどのものではなく、常用は難しいという結論に至った。

 時は過ぎ、MicrosoftはQualcommとのパートナーシップで再び世界に戻ってきた。

 「Always Connected PC」のコンセプトを掲げ、「Armバイナリのアプリが必要」という弱点を「x86エミュレーション」機能で補いつつ、「Windows on Snapdragon」は2017年夏のComputex Taipeiでデビューした。

 この時点では「Windowsアプリが動作する」という話ではなく、「普段使いのアプリケーションがそのままx86 PCと同じ感覚で利用できる」という点をアピールする形でデモが行われており、「機能の限定されたマシンをいかに活用するか」ではなく、「ここまで普通のPCとして利用できる」というものになっていた。

 ベースとなっていたSnapdragon 835が既に当時のハイエンドスマートフォンで高い性能を発揮しており、“PC的”なアプリケーションを動作させても遜色ない程度にまでパフォーマンスが向上していたことも大きい。しかも、モデムとの接続が前提のSnapdragonであり、「いつでもどこでも常時接続」というコンセプトは従来のPCにはない特徴だった。

Windows+Snapdragon 「Always Connected PC」(常時接続PC)というMicrosoftが掲げたコンセプト

 さて、2019年12月も米ハワイ州マウイ島でQualcomm主催の「Snapdragon Tech Summit」が行われ、新SoCなどの最新情報が発表された。“PC向け”を明確にうたう初の「Snapdragon 850」が2018年夏のComputex Taipeiで、Hyper-V対応でWindows 10 Enterpriseが動作する初のSoCとして「Snapdragon 8cx」が2018年12月のTech Summitで発表されたが、今回のアップデートで2020年以降のPCシーンはどう変化するのだろうか。

Windows+Snapdragon PC向けSnapdragonがアップデート
Windows+Snapdragon PC向けをうたうプラットフォームとしては3世代目に当たる。次は5G対応へと進む

「PC」をうたう限りは「PC」でしかない

 Windows on Snapdragonの世代のPCが初めてリリースされたのは2018年春のこと。それから1年半以上が経過したが、おそらく現状では「普及した」と呼ぶにはほど遠い状況ではないかと筆者は考えている。

 販売店やメーカーなどのコメントを聞いていると「顧客の関心は高い」というものの、実際のセールスには結びついていない。日本においてSurface Pro Xが2020年1月に販売開始されるが、同世代のSurface ProやSurface Laptopほどには販売が伸びないと予測している。パフォーマンスは以前に比べて大幅に向上し、x86/x64搭載PCと比べて“遜色ない”程度にまでは達しており、“LTEモデム内蔵”にしては価格面でのお得感もある。

 だが、本格普及にはまだ足りない要素がある。それはWindows on Snapdragonを「PC」として並列に扱っているからであり、PCとしての使い方である限りはその特徴をアピールしきれない。

Windows+Snapdragon 既存のx86モバイルPCにはない特徴をアピールポイントとする

 これまでは、主に「Always Connected PCによる常時接続」と「低消費電力」の2点を特徴としていたように思える。前者は利用シーンの異なるスマートフォンとは違い、PCの作業において「常時接続」のメリットを打ち出しにくく、後者はおそらく多くのユーザーにとっては明確なアピールポイントとなりにくい。

 そうした経緯もあるのか、今年のTech Summitでは「AI」関連のアピールが目立ったように思える。現状、PC関連の作業においてAIを前面に押し出したアプリケーションは少ないと考える。同業者の間で人気の「Otter」というスピーチをテキストに書き起こすサービスがあるが、変換作業は音声データをクラウド上に投げて結果を待つだけなので、PCで利用する限りローカルでの処理は行われていない。こうした「クラウド任せ」のアプリケーションは数多く、それもPCがブロードバンド接続された環境で使うことが多いためだ。

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