Apple Arcadeという新ゲームプラットフォームだが、そこでティム・クックCEOも期待を寄せる待望のファンタジアンとは一体どんなゲームなのか?
その名前からも、これまでの坂口さんらしいファンタジーの世界をテーマにしたRPGであることは想像がつく。
「ファンタジーワールドの中でキャラクターの目を通して泣いたり、笑ったりできて、ゲームをやり終えたときに、キャラクターの目を通して映画を見終えたかのような感動を味わってもらいたい」とい語る坂口氏。
「せっかくApple Arcadeの話をもらったので、大掛かりな大作にしたいと思った。元々、ファイナルファンタジーを作っていたこともあり、例えばFF6くらいのボリュームのゲームにしたい」とも語っている。
「1つのストーリーなり世界観を語るのであれば、やはり、ある程度のボリュームは必要。Apple Arcadeのゲームでは、プレイを始めた後は、かつての家庭用ゲーム機でのゲームのように追加の課金などもなくゲームに没頭できる。であれば、久しぶりに巡ってきたチャンスだし、やっぱり大作をつくりたい」
「エンディングを迎えた時に、このゲームは面白かったよね。感動したよね。キャラクターに思い入れができてしまって手放したくないよね」と思われる作品にしたいとも語っていた。
その感動を生む一要素になっているのが、今回の目玉の1つでもあるジオラマを使った制作だが、これはどのようにして決まったのだろう。
「Apple Arcadeの話をもらった時、いくつかアイデアを提示しました。その中でも、やはり絵、つまりどのような映像表現をするかが大事だと思っていました。元々は(ファミコン上で)ドット絵で始めて、その後はCG(コンピューターグラフィックス)の表現を使用するようになった」という坂口氏。でも、「新しい絵作りの方法を模索していた」という。そうした中で、他のゲーム用にジオラマを撮影してリアルな世界を描き出す、ということを試していた背景があり、ファンタジアンでこれを採用することが決まったのだという。
ところで、スタジオのパソコンで3Dスキャンしたジオラマを自由回転して見せていたため、もしかしたら自由視点(キャラクターが見る向きを自由に変えられる)ゲームになるのかと思っていたが、これは筆者の誤解だったようだ。
ジオラマはあくまでも、これまでになかったリアルな描写をするために使用されるのであって、ゲームの画面はこれまでのRPG同様に決まったアングルから表示される。
ただ、例えば岩の間をキャラクターが駆け抜けていくような画面では、岩の後ろを通り過ぎている間はキャラクターの姿が岩かげに隠れ、通り抜けると再び姿が出てくるといったリアルかつ立体的な描写をするために、ジオラマを3Dデータとして取り込んでおく必要があったのだという。
ちょっとぜいたくなジオラマの使い方にも思えるが、だからこそこれまでになかった新しい映像表現、新しい感覚で楽しめる世界観が期待できる。昨今の利益優先のゲーム作りでは生まれてこなかったであろう、まさにApple Arcadeだからこそ可能になったゲームとなりそうだ。
このゲームを通してApple Arcadeで提供される他のゲームにも、何かしらの良い影響を与えられたらと語る坂口氏だが、一方で、このゲームがきっかけで「JRPG」が、世界にもう少し広まることにも期待を寄せている。
「Apple Arcadeは世界150カ国で展開され、既に数億人のユーザーがいます。その中にはこれまでJRPGに触れる機会がなかった人たちも大勢いる」(坂口氏)
「JRPG」とは「ジャパニーズ・ロールプレイングゲーム」の略で、ファイナルファンタジーなどに端を発する日本式のロールプレイングゲームのことだ。欧米圏でも主流ではないが、一定のファン層を築き、ゲームの1ジャンルとして確実に認知され始めているが、プレイするのに必要な家庭用ゲーム機は中国など1部の市場では販売されていないし、販売されていてもその国の所得水準では高価過ぎて普及していないことも多く、新しいグローバルゲームプラットフォーム、Apple Arcadeへの期待は大きい。
ティム・クックCEOも、去り際にこう語っていた。
「Apple Arcadeは、まだまだ始まったばかりだが、非常に好調で、今後の先行きには私も大きな期待を寄せている」
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