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» 2020年01月10日 06時00分 公開

目指すは過去に自分が作ったファイナルファンタジーと同じような作品:Apple Arcadeは大きなチャンス――ティム・クックCEOも期待を寄せる大作JRPG「ファンタジアン」が目指すこと (1/3)

坂口博信氏が率いるミストウォーカーがApple Arcade向けに新タイトル「ファンタジアン」を開発している。坂口博信氏や同社に訪れたAppleのティム・クックCEOに話を聞いた。

[林信行,ITmedia]

 2019年3月、Apple Special EventでApple Arcadeが発表された時、世界中のゲーム好きがどよめいた。人気ゲーム「ファイナルファンタジー」を生み出し、世界にJRPGというジャンルを知らしめた伝説のゲームクリエイター、坂口博信氏が映っていたからだ。

 坂口氏は2004年に自らのゲームスタジオ、「ミストウォーカー」を設立しXbox 360やWii向けタイトルも作りながら、最近ではスマートフォンRPG「テラバトル」シリーズを出して自らゲーム運営を行うと、小説化や漫画化もする大ヒット作になった。そんな坂口氏率いるミストウォーカーが、現在、総力をあげて開発しているのが初のApple Arcade用タイトルとなる「ファンタジアン」だ。

 2019年12月10日、その開発の現場をAppleのティム・クックCEOが電撃訪問。このゲームへの大きな期待を語った。

クックCEOを驚かせたゲーム用のジオラマ

 ミストウォーカーのオフィスに、Appleのティム・クックCEOが現れた。この日は、氏の突然の訪日がスタートして3日目。早朝にセイコーアドバンスを訪れ、その後は特撮映画の樋口真嗣監督を訪問と精力的なスケジュールをこなすクックCEOだったが、一切の疲れを感じさせることなく、撮影している筆者を見かけるやピースサインをして元気なところを見せていた。

Fantasian 坂口博信氏と、ご機嫌な様子で現れたティム・クックCEO

 そんなクックCEOを迎えた伝説のゲームクリエイター、坂口博信氏がさっそく社内の案内を始めた。

 フロア当たり200平方メートルほどのビルの1フロアに居を構えたミストウォーカー。現在、同社ではオフィスの2部屋を新作「ファンタジアン」のために割いている。クックCEOが案内された最初の部屋には、まるで特撮映画の撮影にでも使われそうな、極めて精巧に作られたジオラマが10個ほど置かれていた。

 山岳地帯のようなジオラマ、未来都市のようなジオラマ、何か秘密基地のようなジオラマなどなど……。樹木ですら乾電池ほどのサイズなのに、その下の小さな草花まで作り込まれている。

 もちろん、肉眼で細かく見ると作り物だと分かるのだが、試しにiPhoneで接写をしてみると、補正もかかってそれなりにリアルに見える。

ミストウォーカーの一室に置かれたジオラマの精巧さに驚くクックCEO

 「これはあなた方が作ったジオラマですか?」クックCEOが訪ねる。

 「はい。日本の各所にある工房にて、ジオラマの職人さんたちと一緒に制作しています」と坂口氏。

 ジオラマの精巧さによほど驚いたようで、クックCEOは矢継ぎ早に坂口氏への質問を繰り出していた。聞けば、ジオラマ制作会社の1つは、久しぶりに若い人が自ら参加し、このファンタジアンの主要なジオラマの仕事にも携わっているらしく、後継者育成ができて喜んでいるといった話もあるようだ。

 ゲームでも重要な役割を果たすという「船」のジオラマを制作した会社は、ティム・クックCEOの訪問の話を聞き、本来の予定よりも前倒しで、この日に間に合うように頑張って完成させたらしい。

 最初はゲームの中の世界観を検討するのに作られたジオラマだと思っていたが、それにしてはあまりにも精巧な作りだ。これらが一体、ゲーム作りに、どのように使われるのか。

Fantasian この日のために間に合わせたという船のジオラマ

 ヒントは次の部屋にあった。

 2つ目の部屋を案内してくれたのは、プログラムを担当する中村拓人氏だ。この部屋は、少し薄暗く撮影スタジオのようになっていた。片方の端にジオラマが1つ置かれており、三脚に設置されたソニー製の一眼レフカメラでジオラマの接写を行っているようだ。

 中村氏によれば、このように用意されたジオラマは、さまざまな角度から200枚近いディテール写真を撮影するのだという。その後、撮影写真を取り込み、画像解析をベースにした詳細な3Dモデルを作り出す。

 スタジオに置かれたパソコンの画面上では、まるで3Dスキャナーで取り込んだかのように、自由にどの角度から見えるジオラマが正確に再現されていた。

Fantasian 撮影を見守るクックCEO
Fantasian スタジオでは、ジオラマを異なる角度から撮影して取り込み、それを別のパソコンで3Dデータ化している

 ゲームでは、こうして作られた3Dデータを深度や隠面の演算に用いつつ、ジオラマ写真の世界の中をプレイヤーが操作するキャラクターたちが冒険するのだという。

 クックCEOは、他のスタッフ達が待つ大部屋に通される。この部分は取材がNGだったが、終わった頃、クックCEOの表情はさらにニコやかになり、ジオラマが展示されている決して大きくはない部屋に30人近い社員たちが大集合してクックCEOと一緒に集合写真を撮っていた。

 その後、クックCEOは「非常に斬新で興味深い発想のゲームだ。このゲームがリリースされるのが楽しみでならない」という言葉を残してミストウォーカーを後にした。

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