実力やいかに? 第10世代「Core i9-10900K」と「Core i5-10600K」の性能を検証する(1/3 ページ)

» 2020年06月03日 12時00分 公開
[松野将太ITmedia]

 5月20日から販売が開始されている、開発コード名「Comet Lake-S」こと、Intelのデスクトップ向け第10世代Coreプロセッサ。前世代と比較すると、各モデル(SKU)で動作クロック(周波数)を高め、コアやスレッドの数を増やしたことが特徴だ。

 同社のメインストリームCPUとしては初となる“10コア20スレッド”構成となった「Core i9-10900K」を含む上位モデルでは、「Intel Turbo Boost Max Technology 3.0(TBT 3.0)」「Intel Thermal Velocity Boost Technology(TVB)」といった高クロックを実現するためのブースト機能も新たに導入されている。

 この記事では、インテルから提供されたレビューキットに付属するCore i9-10900Kおよび6コア12スレッドの「Core i5-10600K」を中心に、Comet Lake-Sの主な特徴やパフォーマンスを確認していく。

レビューキット近影 筆者の手元に届いたレビューキット。一般販売用のパッケージとは異なる形状だ
箱を開けて……カバーもオープン レビューキットを開ける。CPUのロゴが印字されている小箱の中に、レビュー用のCPUが収められている

全モデルがハイパースレッディング対応 上位モデルは動作クロックが上昇

 第10世代Coreプロセッサは従来のデスクトップ向け第9世代Coreプロセッサ(開発コード名:Coffee Lake Refrash-S)から幾つか大きな変更が加えられている。これに合わせて、対応チップセットは「Intel 400シリーズ」、CPUソケットは「LGA 1200」に変更された。

 パッと見でのCPUのサイズ感は、第9世代と変わらないものの、コンタクトピンが1200個に増加しているため、従来のIntel CPU向けマザーボードとの互換性はない。発売時点で第10世代Coreプロセッサを搭載できるのは、CPUと同じく5月20日から販売を開始した「Intel Z490」チップセット搭載マザーボードのみとなる。

 Z490は「DDR4-2933」メモリに対応し(実際に搭載できるメモリはCPUに依存する)、2.5GBASE-T規格の有線LANやWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)へのサポートが追加されているものの、それ以外に前世代のチップセットからの大きな機能変更はない。

Core i5-10600K(表)Core i5-10600K(裏) ミドルレンジ向けとしては最上位となるCore i5-10600K。見た目は第9世代までと大きく変わらないが、端子数が1200個に増加しているので、第9世代Coreプロセッサまでに対応するマザーボード(チップセット)は流用できない

 CPUのスペックに目を向けてみると、目を引くのはやはり最上位のCore i9-10900Kだろう。Intelのメインストリーム製品としては初めてコア数が2ケタの大台に乗り、最大10コア20スレッドで動作する。コア数という観点では、近年はAMD製CPUにおけるコア数増加が著しく(参考記事)、さほど目新しいものでもない。

 しかし、Coreプロセッサ同士で比較すると、3世代前(第7世代)までは4コア8スレッドが最上位だったを考えれば、“隔世の感”がある。

Core i9-10900K(表)Core i9-10900K(裏) デスクトップ向け第10世代Coreプロセッサの頂点に立つCore i9-10900K。こちらも見た目に大きな変化がないように見えるが、端子数が増えている

 一方、Core i7以下のデスクトップ向け第10世代Coreプロセッサは、コア数こそ前世代から据え置きとなるものの、ハイパースレッディングを有効化したことで、論理コア数が増え、総合性能が大幅に向上している。

 Core i7は8コア16スレッド(前世代は8コア8スレッド)、Core i5は6コア12スレッド(前世代は6コア6スレッド)、Core i3は4コア8スレッド(前世代は4コア4スレッド)で動作するので、わずか1世代の進歩でも、性能とコストパフォーマンスには大きな違いがあるということになる。

Core i3/i5プロセッサ デスクトップ向け第10世代Coreプロセッサは、Core i3やCore i5(とCore i7)もハイパースレッディングに対応することで全体的にパフォーマンスを向上している

 各モデルで動作クロックも向上しているが、第10世代Core i7/i9では、TBT 3.0を使って動作クロックをより引き上げている。TBT 3.0は従来、超ハイエンドの「Core Xプロセッサ」(一部を除く)にのみ搭載されてきた技術だが、“X”の付かないデスクトップ向けプロセッサにも初めて展開されることになる。

 TBT 3.0を使うと、利用しているコア数が少なく、電力供給と稼働温度に余裕があることを条件として、従来の「Intel Turbo Boost Technology 2.0(TBT 2.0)」よりも動作クロックを1段階引き上げられる。Core i9-10900Kと、それに次ぐ「Core i7-10700K」なら、TBT 2.0利用時よりも動作クロックが100MHz(0.1GHz)向上する。

 Core i9プロセッサでは、TVBも併用できる。“Thermal”と付くことから分かる通り、TVBはCPUの冷却に余裕がある場合に動作クロックを引き上げる技術だ。少々ややこしいが、TBTとTVBの“合わせ技”で2段階のブーストができるという理解でいいだろう。

 Core i9-10900Kの場合、TBT 2.0利用時は最大5.1GHz、TBT 3.0利用時は最大5.2GHzで稼働するが、TBT 2.0+TVB利用時は最大5.2GHz、TBT 3.0+TVB利用時は最大5.3GHzと、動作クロックがさらに100MHz上がる。

 なお、TVBはTBT 2.0/3.0が働かない全コア稼働時でも有効で、Core i9-10900Kなら10コアを最大4.9GHzで稼働させられる(TVB無効時は最大4.8GHz)。

Core i9-10900KのCPU-ZCore i5-10600KのCPU-Z Core i9-10900K(左)とCore i5-10600K(右)の情報を「CPU-Z」で取得した。Core i9-10900Kの倍率を見ると、Turbo Boost Technology 2.0適用時の最大倍率である「51倍」が上限となっており、しっかり5.1GHzを超えるクロックが出るようになっている

 なお繰り返しだが、TBT 2.0/3.0やTVBはCPUの稼働温度や電源供給に余裕がある場合のみ働く。そのため、第10世代Core i7/i9ではCPUクーラー選びがこれまで以上に重要となる

 第10世代CoreプロセッサのTDP(熱設計電力)は、通常モデルは65Wで据え置かれているが、アンロック(倍率変更によるオーバークロック)が可能な「K」の付くモデルは125Wに増えている。プロセスルール(回路の細かさ)が変わらずに消費電力が増えるということは、発熱量も増すことを意味するので、特にKプロセッサを導入する場合は高い冷却性能を備えるクーラーが欠かせない。最上位のCore i9-10900Kなら、ラジエーターサイズが280mmを超えるオールインワン水冷クーラーを用意するのが無難だろう。

Core i7/i9プロセッサ 第10世代Coreプロセッサのアンロック対応品は、TDPが125Wと高い。TBT 3.0やTVB(Core i9のみ)をしっかり稼働させるには、従来以上に冷却をしっかり意識しなければならない
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