ソケットAM4の第3世代Ryzenでは、「チップレット」が取り入れられている。チップレットは、「CCD」と「cIOD」で構成され、CCDはCPUコア、cIODはこれを接続するI/Oダイだ。この仕組みとCPUコアをいくつ有効/無効(歩留まりとも関連する)とするかによって、エントリーからハイエンドまでスケーラブルに製品ラインアップを展開できる。
8コアを超える上位モデルの場合、CCDは2つ内蔵される。これまで最上位だったRyzen 9 3900XもCCDは2つだ。ただし1つのCCDあたり、有効化されていたのは6/8なので12コア24スレッドにとどまっていた。Ryzen 9 3950Xは8/8、つまりCCDの8コアすべてが有効化された、ソケットAM4版第3世代Ryzenの完全形と言える。
| 第3世代Ryzenの主なスペック | ||
|---|---|---|
| モデル名 | 3950X | 3900X |
| コア | 16 | 12 |
| スレッド | 32 | 24 |
| ベースクロック | 3.5GHz | 3.8GHz |
| 最大ブーストクロック | 4.7GHz | 4.6GHz |
| L1キャッシュ | 1MB | 768KB |
| L2キャッシュ | 8MB | 6MB |
| L3キャッシュ | 64MB | |
| TDP | 105W | |
| 付属CPUクーラー | − | Wraith Prism with RGB LED |
仕様表の通り、Ryzen 9 3900Xとの違いはコア/スレッド数と、それに伴うL1〜L2までのキャッシュ容量、そして動作クロックだ。L1〜L2に関してはコアに数に依存するものなので分かりやすい。動作クロックはベースクロック側がRyzen 9 3950Xの方が低く、ブーストクロック側は高い。矛盾しているようにも見えるが、より多くのコアが活性化するベース側はコア数の多いRyzen 9 3950Xの方がTDPの関係から抑えられ、Ryzen 9 3950Xが選別コアの可能性を考慮すると、シングルスレッドのターボ時クロックは高めに設定できるとすれば筋が通る。
1つ、Ryzen 9 3950XにはCPUクーラーが付属しない。ユーザーは自前でCPUクーラーを用意することになるが、このクラスのCPUを求める人であれば、それなりにCPUクーラーへのこだわりもあるだろう。そして、発売前からAMDが公言しているように、クーラーの冷却性能はそれなりに気を使うことになるだろう。AMDはRyzen 9 3950Xに組み合わせるCPUクーラーに、「280mm以上の簡易水冷クーラー」を推奨している。
Ryzen 9 3950Xは、Ryzen 9 3900Xと同じ105WのTDP枠だ。それもおそらくRyzen 9 3950Xは選別されたコアだろう。それでも2コア4スレッド分の増加は、選別コアでカバーできる限度を超えているようだ。105WのTDP枠の中で上限により近い、マージンが少ないものであろうことが想像される。
簡易水冷ラジエーターを搭載できないミニケースや、スモールフォームファクターで使いたい、空冷CPUクーラーを組み合わせたいといったニーズに対して、AMDは「Eco-Mode」を用意することで対応しようとしている。
Ryzen Masterから利用可能なEco-Modeは、TDP上限を105Wから65Wへと引き下げる。上限が65W、40W分引き下げられれば当然クロックが抑えられる。Ryzen 9 3950Xのパフォーマンスを100%引き出すことはできなくなるが、ノーマルのRyzen 9 3950Xとはまた異なるワット/パワーのCPUとして活用できることになる。
それでは、ベンチマークテストでパフォーマンスを見ていこう。
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