ここからはソフトウェア側に目を移し、テキスト入力ツールとしての実力を見ていこう。iPadOS 13.4では、本製品を始めとするハードウェアキーボードを接続することにより、ライブ変換なる機能が利用できる。
ライブ変換とは、文節ごとにスペースキーを押して漢字変換を行うことなく、自動的に漢字変換が行われる方式だ。感覚的には音声入力に近く、変換精度もそこそこ高いが、筆者のようにこれまで何十年もスペースキーを使った文節単位の変換に慣れていると、気持ち悪さも感じる。
こうしたソフトウェアは、ユーザーの慣れに評価が左右されがちで、客観的な評価が難しい。そこで仮に、これが世界で初めて登場していた日本語の漢字変換システムで、逆に既存のIMEが後から遅れて登場していた場合、どのように評価されていただろうか? と考えてみる。するとおのずから答えは出てくる。
仮に現実がそうだった場合、このライブ変換こそが主流になり、遅れて登場した文節単位での変換は、毎回スペースキーを押して変換候補を選択しなければならない、不便極まりないIMEとして酷評されていただろう。このライブ変換だが、いまいち使いづらいという声は多いが、それは慣れの問題であり、優劣だけで言えば圧倒的に上というのが、筆者の見解だ。
ただし筆者の場合、実はこのライブ変換はしばらく使って試した結果、現在はオフにしている。というのもテキストの新規入力ならともかく、既に存在するテキストを部分的に修正する用途では、ライブ変換は慣れうんぬんを差し引いても、使いやすいとはお世辞にも言えないからだ。
例えば上の段落にある「存在する」という言葉を「存在している」に修正する場合、「す」を削除して「してい」に書き換えることになるが、ライブ変換では「してい」と入力した瞬間、すかさず「指定」に変換されてしまう。これでは使い物にならない。
筆者はiPadにキーボードを組み合わせたテキスト入力は、修正用途で使う割合が多いので、やむを得ずオフにせざるを得なかったが、もしライブ変換のオン/オフをもう少し簡単に切り替えられるようなショートカットがあれば、ライブ変換はデフォルトでオンにして使ってもよいと感じる。今後の進化を期待したいところだ。
気をつけたいのが、本製品にはキーボード上段にMacBookシリーズでいうところのTouch Barに相当する列がないことだ。本製品のキーボードはMacBookのそれと同じ配列で、キーピッチも含めて同じ感覚で使える(ただし11インチ版は気になるところがある。詳しくは後述)が、Touch Barがないため、完全に同じ操作ができるわけではない。
Touch Bar列がない最大の問題はEscキーがないことだが、これについては2通りの回避策がある。1つは「cmd」+「.」というショートカットを使うことだ。これにより、Escを入力したものとして扱われる。前述のライブ変換で、意図しない変換が行われた時にこのショートカットを使えば、速やかに確定前のひらがなに戻せる。
もう1つ、任意のキーにEscを割り当てることもできる。コントロールパネルの「一般」→「キーボード」→「ハードウェアキーボード」で、あまり使っていない地球儀キーなどに「Esc」を割り当てるとよい。2つのキーを組み合わせたショートカットよりは直感的に操作できるので、優先的に試してほしい。
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