未来を創る「子どもとプログラミング教育」

忙しい先生を救え! 先進の事例に見る「教員のICT活用」最前線短期集中連載「プログラミング教育とGIGAスクール構想」 第3回(2/3 ページ)

» 2020年08月07日 12時00分 公開
[石井英男ITmedia]

「校務支援システム」で年間約170時間の業務時間を削減できた大阪市

 学校でのICT機器の活用は、「アクティブ・ラーニング」や「個別最適化された教材」といったより効率的な学習を児童や生徒にもたらすだけではなく、教員の業務の効率化にもつながる。

 教員のICT機器利活用における先進事例の1つとして、大阪市教育委員会の取り組みが挙げられる。

 同教育委員会では、2011年度から順次「ICT(情報通信技術)活用事業」を進めてきた。2013年度にはモデル校31校を対象に「校務支援システム」を試験導入し、2014年度から全ての市立学校に対象に本格導入した。NECはその基盤の構築と保守・運営を受託している。

 このシステムは国内の教育委員会としては最大規模のもので、現状の規模は以下の通りだ。

  • ユーザー数:1万6600人
  • 導入学校数:428校
  • クライアント(PC)台数:約1万2300台(ほぼ1人1台
統合型校務支援システム 大阪市教育委員会が導入した「統合型校務支援システム」の概要(2015年度終了時点:大阪市教育委員会が文部科学省に提出した資料より)

 校務支援システムはプライベートクラウドによって実現されており、大きく「グループウェア」「校務支援」「コミュニケーション」の3つのアプリケーションから構成されている。

 グループウェアは、一般的に想像されるグループウェアそのもので、「掲示板」「メール」「予定表(スケジューラー)」などを利用できる。教育委員会と各市立学校を結び、教職員の情報共有をサポートする役割も果たすことが期待されている。

 校務支援アプリケーションは、名簿の管理、出席簿、日常の所見、通知表、指導要録などを作成する機能がある。子どもたちの情報は学校内で共有することも可能で、「全教職員で子どもを育てる」環境の構築を目指している。

 コミュニケーションアプリは、学校のWebサイトの作成機能や保護者に対するメール送信機能などを備えている。学校と家庭との情報のやりとりを円滑化すべく用意されたものだ。

校務支援システム ICT活用事業で導入された校務支援システムが提供する機能。これを見ても、教諭がいかに多くの作業をしているのかよく分かる(大阪市教育委員会が文部科学省に提出した資料より)

「年間100時間」の目標を大幅に上回る成果

 このシステムを導入する最大の目標は、「ICTの活用により教員が児童・生徒と向き合う時間を増やす!」(資料原文ママ)ことにあった。試験導入前は「年間100時間の創出(校務にかかる時間の削減)」を目標としていたが、結果はどうだったのだろうか。

 モデル校では、校務支援システムの導入によりクラス担任の校務時間が1年間で168.1時間、教頭の校務時間が136.3時間も短縮されたという(いずれも1人当たりの平均値)。目標を大きく上回る結果だ。結果を受けて全校導入を決定したのも納得といえる。

モデル校での結果 モデル校における校務支援システムの導入によって創出された時間。グループウェアと通知表の作成支援サービスの効果が特に大きい(大阪市教育委員会が文部科学省に提出した資料より)
通知表の作成 通知表の作成にかかる時間。児童・生徒1人当たりの作成時間が25〜30分ほど短縮できている。ただし、小学校と中学校では時間の削減効果に差が出ているようだ(同上の資料より)
声 モデル校で実証に参加した教員の声。「CIO」は「最高情報統括責任者」のことで、学校の教員の中から選出される(同上の資料より)

 校務支援システムの導入は、副次的な効果として教員のICT活用率の底上げにもつながっている。

 2015年の調査では、大阪市立学校の教員のICT活用率は51.3%と、同年の全国平均の66.2%と比べても低かった。しかし、2年後の2017年には67.5%に上昇し全国平均に追いつき、その翌年の2018年には73.5%と全国平均を上回ったと予想される(全国平均は現状で未算出)。

利活用率向上 校務支援システムの導入によって、教職員のICT活用率も向上(大阪市教育委員会が「関西教育ICT展」で発表した内容をもとにNECが作成した資料を掲載)

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