学校でのICT機器の活用は、「アクティブ・ラーニング」や「個別最適化された教材」といったより効率的な学習を児童や生徒にもたらすだけではなく、教員の業務の効率化にもつながる。
教員のICT機器利活用における先進事例の1つとして、大阪市教育委員会の取り組みが挙げられる。
同教育委員会では、2011年度から順次「ICT(情報通信技術)活用事業」を進めてきた。2013年度にはモデル校31校を対象に「校務支援システム」を試験導入し、2014年度から全ての市立学校に対象に本格導入した。NECはその基盤の構築と保守・運営を受託している。
このシステムは国内の教育委員会としては最大規模のもので、現状の規模は以下の通りだ。
校務支援システムはプライベートクラウドによって実現されており、大きく「グループウェア」「校務支援」「コミュニケーション」の3つのアプリケーションから構成されている。
グループウェアは、一般的に想像されるグループウェアそのもので、「掲示板」「メール」「予定表(スケジューラー)」などを利用できる。教育委員会と各市立学校を結び、教職員の情報共有をサポートする役割も果たすことが期待されている。
校務支援アプリケーションは、名簿の管理、出席簿、日常の所見、通知表、指導要録などを作成する機能がある。子どもたちの情報は学校内で共有することも可能で、「全教職員で子どもを育てる」環境の構築を目指している。
コミュニケーションアプリは、学校のWebサイトの作成機能や保護者に対するメール送信機能などを備えている。学校と家庭との情報のやりとりを円滑化すべく用意されたものだ。
このシステムを導入する最大の目標は、「ICTの活用により教員が児童・生徒と向き合う時間を増やす!」(資料原文ママ)ことにあった。試験導入前は「年間100時間の創出(校務にかかる時間の削減)」を目標としていたが、結果はどうだったのだろうか。
モデル校では、校務支援システムの導入によりクラス担任の校務時間が1年間で168.1時間、教頭の校務時間が136.3時間も短縮されたという(いずれも1人当たりの平均値)。目標を大きく上回る結果だ。結果を受けて全校導入を決定したのも納得といえる。
校務支援システムの導入は、副次的な効果として教員のICT活用率の底上げにもつながっている。
2015年の調査では、大阪市立学校の教員のICT活用率は51.3%と、同年の全国平均の66.2%と比べても低かった。しかし、2年後の2017年には67.5%に上昇し全国平均に追いつき、その翌年の2018年には73.5%と全国平均を上回ったと予想される(全国平均は現状で未算出)。
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