新登場のApple Watch SEは、初めてApple Watchを買う人に大きな魅力を提供する機種だ。
これまで述べてきたseries 6の専用機能は利用できないし、画面は節電のためしばらく使っていないと消えてしまう(時計をのぞきこもうとすると自動的に画面がオンになる)。だが、転んで意識を失った時に自動的に救援を呼ぶ転倒検出や、海外における緊急電話、ファミリー共有設定、コンパスや高度計などApple Watchの昨年までの注目機能は全て搭載している。
ケースはアルミ素材だけ、色の選択肢も3種類だけと、本体を選ぶ楽しみこそ減るが、Apple Watchの豊富なバンドはNikeやエルメス用も含めて全て使え、十分に満足がいく体験を1万3000円近くも安い価格(Apple Watch series 6は4万2800円〜)で提供している。
血中酸素濃度や(まだ日本では使えないが、今後使えるようになる可能性がないとも言えない)「ECGM(心電図)」といった機能を聞いて、「欲しい!」と思う人以外は、ほとんどの人が、機能的にはこの「Apple Watch SE」で満足できるのではないかと思う。
Apple Watchのファッション性に注目するなら、得した差額の分を、良いバンドに投資するといった買い方もできるだろう。
通知を受けたり、ちょっとしたアプリを利用したり、ランニングやエクササイズ、日々の生活の中での運動を記録したりといった基本機能しか使わなさそうなユーザーであれば、このApple Watch SEどころか、さらに手ごろなseries 3(1万9800円〜)でも十分かもしれない。
併売される3年前のモデルとなるseries 3は、Wi-Fi通信専用でセルラーモデルがなく、画面面積も小さく、転倒検出やコンパス、騒音による耳へのダメージを計る騒音のモニタリング機能もないが、先にあげたようなApple Watchの基礎となる機能は一通り対応している(ただし、個人的にはやはりSE以上を勧めたい)。
ちなみに3年も前のモデルが現役製品として認められている点も、寿命が短くすぐに価値が半減してしまう他社製品に対するApple Watchの大きな魅力の1つと言えるだろう。
価格的にも、ファミリー共有設定などの初期設定の条件にしても、より買いやすくなったApple Watch、来年に向けてさらに爆発的に利用者が増える可能性が大きいが、それだけにどの本体、どのバンドでコーディネートするか、さらにはどのフェース(盤面)でコーディネートするかのセンスは問われるようになってくると言えるだろう。
幸いにもApple Watchのバンドは最近、ビジネスとしても拡大しており、他社製のバンドもかなり種類が増えてきている。
フェースについては、watchOS 7でさらに種類が増えてきたが、個人的にはイラストレーターのジェフ・マクフェトリッジ(Geoff McFetridge)さんがデザインしたアーティストフェースと呼ばれる盤面が好き過ぎて、なかなか他のフェースに切り替えができなくなってしまったが、筆者は夕暮れの光で写真を撮るのが好きなので、「Lumy」という光のきれいなゴールデンアワーが何時から始まり、何時まで続くかを教えてくれるアプリのコンプリケーションを入れたフェースも用意し、必要に応じて切り替えて使っている。
世界中に数億人のユーザーがいるiPhoneが1台1台、インストールされているアプリも画面の設定も異なるように、Apple Watchも使う人の仕事や趣味趣向によって、千差万別にカスタマイズできる製品だ。
1度、買って自分だけのカスタマイズをしたら、なかなか手放せなくなってしまうので、その点だけは覚悟した方が良い。
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