実は一番日本語入力をしやすい? ゲーミング超小型PC「OneGx1」で文字入力をしてみよう超小型PCの道(2/2 ページ)

» 2020年11月10日 12時00分 公開
[長浜和也ITmedia]
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フットプリントは小さいが厚みに注意

 超小型PCでも“高性能”が望まれる中、画面サイズの主流は7型から8型台にシフトしつつある。当然、それに伴い本体サイズも大きくなる傾向だ。そんな中、OneGx1は7型ディスプレイとCore i5-10210Yを搭載していることは注目に値する。

 本体サイズは、同じCore i5-10210Yを搭載するOmeMix3 Proが約204(幅)×129(奥行き)×14.9(厚さ)mmであるのに対し、コントローラーなしのOneGx1は約173(幅)×136(奥行き)×21(厚さ)mmと、幅が31mm短くなり、フットプリントベースでは10%近く省スペースとなっている。

 ただし、本体の厚さは21mmと最近のモバイルノートPCと比べても厚い。重さはLTEモデルで約645g、LTEなしモデルでも約625gと、一回り大きなディスプレイを搭載するOneMix3 Proとほぼ同等となっている。

背面 本体の左右にオプションのゲームコントローラユニットを接続するため、主要なインタフェースは背面に集中。USB 3.2 Gen2(USB 3.1) Type-C端子、USB 3.2 Gen1(USB 3.0) Type-C端子、USB 3.0 Type-A端子、ヘッドフォン/マイクコンボジャック端子を備える
左側面 左側面にはnanoSIM(LTEモデルのみ)とmicroSDメモリーカードのスロットを備える。トレイ式で、着脱にはピンが必要だ
右側面 右側面にはMicro HDMI出力端子を搭載する。OneGx1では唯一の映像出力インタフェースとなるが、ゲームコントローラを接続すると使えなくなる

どうかこのままであってほしいキーボード

 本体の幅が短くなったおかげで、8型台ディスプレイを搭載するOneMix3シリーズと比べると「両手持ち親指タイプ」はだいぶやりやすくなった。

 キーピッチは実測で約14mmと、8型台ディスプレイ搭載の超小型PCのキーピッチで平均的な18〜19mmと比べると明らかに狭い。そのため、一般的なノートPCのように本体を卓上に置いてキーを打つ場合、片手で4本指、両手で8本指を使うようにしても、タイプで指が“擦れて”狭く感じてしまう。評価作業では、片手で3本、両手で6本指にしてようやくストレスがなくなる、といった状況だった。

キーボード 評価機のキーボードは米国英語(US)配列で、キーピッチは約14mmだった。評価機固有の問題かもしれないが、キーボードの左よりのキーが“ふかふか”としていて、打つとその周辺がたわむ現象が見られた

 やや狭めなOneGx1のキーボードだが、従来のOneMixシリーズからレイアウトが変更されたおかげで、日本語入力におけるタイピングが大幅に改善している

 ただし、今回評価したOneGx1には米国英語(US)配列のキーボードが搭載されており、実際に日本で出荷されるものは日本語配列のキーボードが搭載される。当然、記号などのレイアウトは両者で異なる。

 これまでのOneMixシリーズでは、日本語キーボードモデルと米国英語キーボードモデルの両方を取りそろえていたが、10月30日現在、OneGx1の正規代理店モデルは日本語キーボードモデルのみ取り扱っている。ここから先のキーボードの話は、USキーボード構成に対する評価であることをご了承いただきたい。

 OneGX1のキーボードレイアウトは、キーボード最下段の下に光学式ポインティングデバイスを搭載し、その両脇に左右のクリックボタンを用意したタイプだ。今までのOneMixシリーズに当てはめると、OneMix3 Proシリーズに近い。ただし、キーは「アイソレーション」ではなく、懐かしい感もあるキートップを隣接して敷き詰めるタイプとなっている。

 OneMix3 Proシリーズではキーボード最上段の右端に指紋センサーを配置し、その左隣に電源ボタンを備えていた影響で、その段に用意していたカギカッコや長音などの記号キーが左側に寄せられていた。それに対して、OneGx1では、最上段から指紋センサーと電源ボタンを廃し、その分だけ記号キーを右側にシフトしている。

 そのおかげで、日本語入力で多用する長音や「9」キーの真上と通常のキーボードとほぼ同じ場所にきて無理な運指をしなくてもタイプできるようになった。わずか1つのキー、それも長音キーを右に寄せただけの変化だが、その変化がもたらす効果はすこぶる大きく、キーピッチがOneMix3 Proシリーズより狭いのに、日本語の文章入力ではOneMix3シリーズを超える快適さをもたらしている。

 一方で、日本語入力で多用するカギカッコキーは、キーボード最上段中央にあって(それでもOneMix3Proシリーズと比べてキートップ1つ分右に寄せているが)通常とは異なる運指が必要になる。

OneMix3 Proシリーズ OneMix3 Proシリーズの日本語キーボード。キーボードの右上に指紋センサーと電源ボタンを備えたため、記号キーが左側に寄せられている

 気になるのは、このUSキーボードの日本語入力における快適さが日本語キーボードにも受け継がれているか、である。

 前例となるOneMix3 ProにおけるUSキーボードから日本語キーボードの変更を確認すると、最上段において「P」キーの右隣に「@」キーを配置し、そこにあった「BackSpace」キーを上隣りに、そして、その場所にあった「Delete」キーを最上段の右端から2つ目(右端は電源ボタン)に移し、その左隣には「チルダ」「バックスラッシュ」キーを並べ、長音キーはそれらキーのさらに左隣に追いやられた。その結果、これらの記号キーはキーボードの最上段中央という、タイプしにくい場所に置かれることになってしまった。

 「@」「チルダ」「バックスラッシュ」の変更は日本語キーボードに合わせたチューニングと推測できる。それにしても、日本語入力で多用する長音をタイプしにくい場所に追いやってしまったことで、キーボード自体の作りは優れていたものの、日本語入力はやりづらかった。

 OneGx1の日本語キーボードでもOneMix3 Proに準じた変更がなされる可能性は高いが、願わくは、英語キーボード搭載モデルの併売か、もしくは、長音キーだけでいいのでキーマッピングを変更できるユーティリティーの登場を願うばかりだ。

編集部注:OneGx1の日本語キーボードについて

 11月10日現在、One-Netbookの公式ストアにおける製品情報には、日本語配列のキーボードのイメージが掲出されています。

日本語配列キーボード 日本語配列キーボードのイメージ

全力回転と抑制回転で表面温度と騒音はどう変わる?

 OneGx1は、7型ディスプレイ搭載のボディにCore i5-10210Yを備えているため、強力なクーラーユニットを搭載している。クーラーユニットは2基のクーラーファンと2本の銅製ヒートパイプ、そして、銅製ヒートシンクを組み合わせで構成しており、負荷と内部温度、そして、実装する制御システムによってファンの回転数を動的に変更している。2基のファンが全力で回転した状態での騒音はさすがに“迫力”がある。

背面 背面の突き出した部分に2基のファンと2本のヒートシンクを組み合わせたクーラーユニットを備える
背面 2基のファンで底面から外気を取り込み背面のスリットから排出する

 OneGx1のような「コンパクトなボディーに高性能CPUを搭載した超小型PC」で気になるのが、ボディー表面の温度だ。強力なクーラーユニットを搭載しているが、これによってどのくらい温度上昇を抑えられているのだろうか。3DMarkの「Night Raid」を実行している際の実行中に、騒音計でファンの音、非接触タイプの赤外線温度計で温度を測定してみた。

 なお、OneGx1では、ファンアイコンを記したキーを押すことでファンの動作モードを3段階に変更できる。今回はパフォーマンスを優先した“ファン全開”モード、静音性を優先した“ファン抑制”モードのそれぞれで騒音と温度を測定している。

ファン回転設定 全開回転 抑制回転
発生音量 47.4dBA 37.6dBA
表面温度(Fキートップ) 41.3度 38.6度
表面温度(Jキートップ) 41.5度 39.6度
表面温度(パームレスト左) 40.1度 39度
表面温度(パームレスト右) 42.2度 40.9度
表面温度(底面) 51.0度 48.7度
3DMark(Night Raid)のスコア 4337 3058

 キートップとパームレストは共に、表面温度が40度前後に達している。抑制回転モードでは各測定ポイントとも2度ほど温度は下がるものの、それでも40度をわずかに下回る程度だ。

 騒音は、全開回転モードでが50dBAとかなりのものだった。音量に加えて、小口径ファンにありがちな「ヒイィィィィィンン」という高音なので、余計に耳につきやすい。一方、抑制回転モードではファンが回っていることは認識できるものの、その音量はわずかだ。

 ファンの音がほとんどしないのに、測定温度が全開回転モードより(わずかながら)低くなっているのはある意味驚き……なのだが、そのからくりは3DMarkのスコアを見れば分かる。処理能力を抑制しているのだ。

 3DMarkのMonitoringグラフによると、最も負荷の高い「CPU TEST」において、全開回転モードではCPU動作クロックが2GHz近くまで上がるのに対して、抑制回転モードにすると1GHz近くまで落としていることが確認できた。

全開 全開回転モード(電源ボタンのLEDが青く輝いている)における3DMark Night RaidのMonitoringグラフ
抑制 抑制回転モード(電源ボタンのLEDが水色に輝いている)における3DMark Night RaidのMonitoringグラフ

汎用的な小型PCとしても使いやすいOneGX1

 超小型ゲーミングPCとして注目されているOneGx1ではあるが、コントローラを外した「汎用」PCとしてその素性はいい。「英語キーボードでの評価」という条件付きだが、日本語入力のしやすさはOneMixシリーズを上回るし、気になる表面温度と騒音もOneMix3 Proと同レベルに収まっている。その分、本体の重さは同等で厚みはあるものの、フットプリントはコンパクトで、設置における自由度は高い。

 日本語キーボードのレイアウトが英語キーボードに近い、特に長音キーの位置が同じならば、汎用の超小型PCとしても選択する理由は十分にある。コンパクトなゲーミングPCと汎用PCを兼ねるデバイスを探しているなら、有力な選択肢となるはずだ。

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