テレワークとディスプレイ、テレワークと電気代を考えるシリーズ「私とテレワーク」(3/4 ページ)

» 2020年12月11日 14時10分 公開
[奥川浩彦ITmedia]

テレワークで電気代、増えていませんか?

 知り合いから「夫婦2人がテレワークしたら夏の電気代が2万円を超えた」と耳にしたことがあった。1人暮らしの人はもちろん、共働きで夫婦ともテレワークとなると、それまで誰もいなかった自宅で長時間仕事をすることになる。当然、電気代が急増することも考えられる。

 オフィスの電気代が減った分を会社が社員に還元/補填(ほてん)してくれるとよいのだが、個々の電気代の増加分を算定することは容易ではない。実際に増えた電気代を直接補填することは難しそうだ。

 そこでITmedia PC USER読者のテレワーク生活に役立つ情報を、ということでは電気代について考えてみよう。筆者自身、起業して電気代が急増した経験がある。起業直後に「リーマンショック」で売り上げが激減し、慌てて節電をした。その経験もあり、2011年の東日本大震災で計画停電が行われたときには節電の連載を執筆したこともある。

 今は当時ほどの節電はしていないが、さまざまな電気製品の電力を計測し続けている。そこで得られた節電のヒントをさわりだけ紹介しよう。

ワットチェッカー 筆者が10年近く使用しているワットチェッカー(左)と、2年ほど前から使用しているラトックシステムのBluetoothワットチェッカー「REX-BTWATTCH1」(中央)、2020年に購入した新製品「RS-BTWATTCH2」(右)。ワットチェッカーは、消費電力の“見える化”に役立つ
ロガーたち 一定間隔で温度を計測できる温度データロガー(中央)と赤外線温度計(左)もあると役立つ

そもそも、電気代はどうやって決まる?

 まず基本は、電気料金の仕組みを知ることである。電気料金には地域差があり、電力自由化もあって多様化している。今回は東京電力エナジーパートナーの「従量電灯B」の料金を見てみよう。

料金一覧 東京電力エナジーパートナーの「従量電灯B」の料金

 分かりにくいので計算してみよう。一般家庭でアンペア(A)契約が30Aだと、基本料金が858円(税込み、以下同)かかる。それに加えて、電力量(kWh)に応じた従量料金が上乗せされる。1kWh当たりの料金は、120kWhまでが19.88円、120kWhを超え300kWhまでが26.48円、300kWhを超えた分は30.57円と、電力量が大きくなると単位料金も上がる仕組みとなっている。

 例えば、30A契約の家庭において1カ月間で400kWhの電力量となった場合、料金は以下の通りとなる。

  • 基本料金:30A=858円
  • 従量料金(第1段階):120×19.88円=2385.6円
  • 従量料金(第2段階):(300-120)×26.48円=4766.4円
  • 従量料金(第3段階):(400-300)×30.57円=3057円
  • 合計:1万1067円

 上記の合計料金に対して、月ごとに「燃料費調整」が入る。2020年11月は1kWh当たりマイナス4.64円だったため、上記の利用状況では1万1067円から1856円が割り引かれる。

 ……が、これで電気料金が確定するわけではない。「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という加算料金があるからだ。この賦課金は、2021年4月まで1kWh当たり2.98円という設定となっているため、上記の利用状況では1192円が加算される。最終的な電気代は、1万1067円−1856円+1192円=1万403円ということになる。

 電気料金の明細は、電力会社が書面やWebで交付する「電気使用量のお知らせ」に明記されている。燃料調整費は毎月変動するし、細かい部分は無視するとして、電気代が気になる人は「電力量(従量)料金」だけでも意識したい

 今回取り上げた東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの場合、大ざっぱにいえば以下のような感じとなる。

  • 電気代が3000円以下の人:1kWh当たり約20円、1円で50Wh
  • 電気代が3000円から8000円の人:1kWh当たり約26円、1円で38Wh
  • 電気代が8000円以上の人:1kWh当たり約30円、1円で33Wh

 このことは、この後話すことに重要な意味を持つ。

エアコンの電気代は要注意 冷蔵庫は季節による消費電力差が大きい

 ご存じの人も多いと思うが、エアコンは温度設定によって消費電力量が変わる。控え目な温度設定で平均330Wで稼働していると仮定すると、電気代が1万円の人は1時間当たり10円の電気代が掛かる。「たった10円じゃん」と思うだろう。そう、たった10円だ。

 しかし、これを10時間続けると100円になる。夫婦2人がエアコンのある別々の部屋で仕事をすると、1日当たり200円掛かるという計算だ。1カ月当たり20日仕事をすると、エアコンの電気代だけで4000円が上乗せされてしまう。休日や仕事をしていない時間、他の部屋もエアコンを稼働させれば、電気代がさらに上乗せされて、5000〜6000円となるかもしれない。たった「1時間当たり10円」だが、ちりも積もれば高い電気代となる。

 夏にエアコンの温度設定を「20度」にしてフルパワーで使用すると、消費電力は1000Wを超える。冬にTシャツで過ごせるほど温めようとすると、暖房するとやはり消費電力が1000Wとなる。少し極端な温度設定であるような気もするが、消費電力が1000Wとなると、エアコンの電気代だけで1カ月1万円を超える可能性が高くなる

エアコン エアコンは温度設定によって電気代が大きく変動する。そのことは強く意識しよう(写真はイメージです)

 住む地域の気温にも左右されるが、夏はエアコンと冷蔵庫、冬はエアコンと他の暖房器具が電気代の「主役」である。参考に、筆者の自宅にある冷蔵庫の夏と冬の30日間の消費電力の差を見てみよう。

消費電力の差 冷蔵庫の夏と冬の消費電力の差。夏は単に消費電力が大きいだけではなく日による変動も大きめだ(横軸は「日数」)

 計測時期が真夏や真冬から少し後ろにズレているが、大ざっぱにいうと夏の消費電力量は冬のおよそ2倍となっている。30日間で夏は4kWh、冬は2kWhを消費したと仮定し、電気代を1kWh当たり26.48円として計算すると、夏は1000円、冬は500円ほどとなる。

 夏の消費電力の変動が日によって大きいのは、窓を開けていることによる気温変動の影響を大きく受けたことが原因だろう。一方で、冬の変動が少ないのは、窓を閉め切っているため設置場所(キッチン)の温度変化が少ないためだと思われる。

エアコンの節電は「仕組み」を把握することが重要

 本格的な冬を見変えているが、気温の下がる早朝に、約9畳の仕事部屋でエアコン暖房の実験をしてみた。外気温は9度くらい、室温は19度くらいの環境で、朝4時頃にエアコンの設定温度を「26度」として1時間稼働した後に換気をして、朝6時台に設定温度を「22度」にして1時間稼働し電力量を比較してみた。

 青線が26度設定の電力の推移、青の点線が同設定における室温、赤線が22度設定の電力の推移、赤の点線が同設定における室温となる。

消費電力 エアコンの設定温度を22度と26度にした場合の消費電力

 26度設定では、消費電力がすぐに950W近くまで上昇した。その後は600W、950W、600W、800W、600Wと推移した。室温は40分くらいで25.5度付近で安定し始めたので、停止しなければ800Wと600Wを交互に繰り返す動作を続けたと思われる。1時間の電力量は約720Whで、1kWh当たり26.48円と仮定すると、電気代は19円となる。

 一方で、22度設定では消費電力が600Wまで上昇した後に300Wへと下がり、室温が22度を超えたところでほぼ0Wとなった。室温が下がると再び300Wとなり、その後は300Wと0Wを繰り返した。約1時間稼働して、エアコンが切れると室温は急激に下がり30分ほどで20度以下となった。1時間の電力量は約260Whで、1kWh当たり26.48円と仮定すると、電気代は7円だ。

 エアコンは基本的に、暖房でも冷房でもこのような挙動となる。消費電力は「設定温度」「室温」「外気温(室外機付近の温度)」「建物の構造」によって左右される。

 運転開始時に室温と設定温度の差が大きければフルパワーに近い電力を消費する。夏であれば外気温が高い日、冬であれば外気温が低い日は消費電力が増える傾向にある。

 気温差が大きいと消費電力が大きくなるのは、エアコンが温度を上げ下げする「熱交換」という仕組みに原因がある。

 暖房運転する場合、エアコンは電気で熱を発生させるのではなく、屋外の熱を室外機で吸収し、その熱を室内機から部屋に放出することで部屋の気温を上げようとする。外気温が10度くらいであれば、熱を効率的に吸収できるが、氷点下になると効率が落ちるため、消費電力がどうしても増えてしまう。寒冷地ではエアコンによる暖房はあまり利用されないのはそのためだ。

暖房時の熱交換 エアコンの暖房運転時における動作イメージ

 暖房に限っていえば、ハロゲン、セラミック、オイルなどを用いる各種電気ヒーターやコタツ、ホットカーペットなど電気を使って暖める機器は他にもある。石油ストーブ(石油ファンヒーター)、ガスストーブなど、電気以外のエネルギーを利用する機器も選べる。夏の冷房と比べると、選択肢は多い。

 外気温が高めな場合は、仕組み上エアコンの方がエネルギー効率が高い。電気ヒーターと比べると、電気代が数分の1で住む可能性もある。逆に、外気温が低い環境では、電気ヒーター、もっといえば各種ストーブ類を使った方がトータルコストを抑えられる可能性がある。

 もっとも、ストーブを使う場合に必要な灯油代やガス代も、電気代と同じく変動する。暖房機自体の性能(熱効率)も絡むことから、正確な損益分岐点は求めづらい。とはいえ、大ざっぱにいえば「チョイ寒はエアコン、激寒は灯油かガスが低コスト」となる。筆者の場合、外気温が5度以上であればエアコン、5度未満であれば石油ファンヒーターを使うようにしている。

 ただ、現実を見てみると、都会ではクルマがないと灯油を買ってくることが困難だ。賃貸住宅では入居規約(約款)によって石油やガスを使うストーブの利用を禁止されていることもある。困難をクリアしてストーブを導入したとしても、その購入コストをペイするまで数年はかかる。

 石油やガスを使ったストーブ/ファンヒーターは、一気に熱風が出るのでエアコンよりも暖まりが早いが、特に石油ストーブ/ファンヒーターは臭いがどうしても生じてしまう。

 結局は、選択は個人の抱える事情や好みに応じて暖房は選ぶことになるだろう。

石油ファンヒーター 石油ファンヒーターは特に低温時に効率が高く、設置場所の移動もしやすいものの、賃貸住宅では利用を禁止されていることもある(画像はイメージです)

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