続いて、3Dグラフィックスの描画性能を計測するベンチマークテスト「3DMark」の結果を見ていこう。今回は、DirectX 12ベースの「Time Spy」と、DirectX 11ベースの「Fire Strike」のテストを複数の描画解像度で実施した。
Time Spyテでは、フルHD(1920×1080ピクセル)で描画する通常テストと、WQHD(2560×1440ピクセル)で描画するExtremeテストの2種類を実行した。総合スコアは以下の通りとなった(前段が通常テスト、後段がExtremeテスト)。
通常テストの総合スコアを比べると、Ryzen 9 5950XとRyzen 5 5600Xで2000ポイント近い差が出ている。CPUスコアと合わせて見ると、CPUの性能差が総合スコアの差として示されたといえるだろう。
DirectX 12では、CPUの並列利用が強化されている。コアとスレッドの数がより多いRyzen 9 5950Xのスコアが伸びるのは、ある意味で当然の結果でもある。
一方、DirectX 11を用いるゲームやベンチマークテストでは、CPUのシングルスレッド性能がパフォーマンスを大きく左右する。Fire Strikeシリーズのテストも、この点において例外ではない。
今回はフルHDで描画する通常テスト、WQHDで描画するExtremeテストと、4K(3840×2160ピクセル)で描画する「Ultra」テストの3種類を実行した。総合スコアは以下の通りだ(前段が通常テスト、中段がExtremeテスト、後段がUltraテスト)。
CPUの物理演算パフォーマンスを見る「Physics」のスコアでは両CPUのパフォーマンス差は一応確認できるものの、総合スコアではあまり差が出ない。特に、Ultraテストではほぼ“横並び”状態になる。
シングルコア性能がモノをいう場面では、Ryzen 9 5950Xの強みが生かしにくい。逆に、Ryzen 5 5600Xは価格の割にシングルコア性能がよいと見ることもできる。「シングルコア性能こそ全て」という使い方なら、Ryzen 5 5600Xは大変コストパフォーマンスに優れる選択肢といえるだろう。
実際のゲームをベースとするベンチマークテストの結果も、合わせてチェックしてみよう。
まずは、負荷の軽い「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」において、設定は最高品質、3つの解像度(フルHD、WQHD、4K)においてフルスクリーン表示でテストを実行してみた。結果は以下の通りだ(前段がフルHD、中段がWQHD、後段が4K)。
前回の記事でも指摘したが、Ryzen 5000プロセッサは過去世代のRyzenプロセッサやIntelの第10世代Coreプロセッサ(開発コード名:Comet Lake)よりもスコアは良好だ。これはひとえに、シングルスレッド性能の高さに起因する。特性を踏まえればRyzen 5000シリーズは最強のゲーミングCPUと言ってもよいだろう。
ただ、このテストではCPUのモデルごとのポイント差はごくわずかにとどまっている。
「それなら」ということで、グラフィックスの負荷がより大きい「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」も実行してみよう。設定は高品質、3つの解像度においてフルスクリーンテストでテストした結果は以下の通りだ(前段がフルHD、中段がWQHD、後段が4K)。
グラフィックス負荷が大きいテストではあるが、ここでもRyzen 9 5950XとRyzen 5 5600Xの差はわずかだった。計測回によっては、下位モデルであるはずのRyzen 5 5600Xの方が高いスコアを記録した。
ここまでのテストでも明らかなように、DirectX 11ベースのゲームをプレイする場合は、Ryzen 5000シリーズのどれを選んでも快適性に大差はない。遊ぶゲームが用いるAPIによっては、Ryzen 9 5950Xの強みを十分に生かせない可能性もある。
ただし、DirectX 12を用いるゲーム、3Dグラフィックスのレンダリングや動画のエンコードなど、コアやスレッドの数がモノをいう用途ならRyzen 9 5950Xを思う存分生かせるはずだ。
最後に、システム全体の消費電力をチェックしてみよう。
起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Extremeを動作させた際の最高値を「高負荷時」として、ワットチェッカーで計測した。結果は以下の通りだ(前段がアイドル時、後段が高負荷時の値)。
アイドル時の電力は、どちらのCPUも大きく変わらない。しかし、高負荷時はRyzen 9 5950Xが440W超、Ryzen 5 5600Xが約400Wと、消費電力に少なくない差が生じた。
Ryzen 9 5950Xの場合、システムや使用状況によっては消費電力が500Wを超えることも考えられる。できれば、電源ユニットには余裕を持たせる意味で850W以上のものを選びたい。
前回のレビューの追加検証という形にはなったが、やはりデスクトップ向けRyzen 5000プロセッサの性能は確かなものだ。ほとんど文句の付けようがない。
これまでにも度々指摘しているが、目下の課題は製品の供給量だ。特にRyzen 9 5950Xは、発売から3カ月経過した2021年2月22日現在も入手困難な状況にある。AMDは最新GPUの「Radeon RX 6000シリーズ」も品薄が続いている。
優秀なCPUやGPUがすぐ手に入らないというのは、非常にもったいない。在庫状況の改善に期待したい。
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