最近のWindows 10を搭載するノートPCでは、「モダンスタンバイ(Modern Standby)」を採用するモデルが増えている。ThinkPadも例外ではなく、2018年に発売された「ThinkPad X1 Carbon Gen 6」からはクラムシェルモデルにも拡大された。
モダンスタンバイは、スタンバイ(スリープ)中も通信や音楽の再生を維持できる機能だ。通常のスタンバイ(ACPI S3ステート)と比べると、システムの復帰にかかる時間も短く、画面を開ければすぐに作業を再開できることもメリットである。
しかし、メリットは見方を変えればデメリットでもある。モダンスタンバイに対応しているノートPCは、スタンバイ中の消費電力が大きくなる。そのため、バッテリー駆動していると「スリープしているのにバッテリーが減ってしまった」という現象が発生しやすいのだ。
「だったら通常のスタンバイに変えられないの?」と思うかもしれない。しかし、モダンスタンバイに対応するノートPCで、通常のスタンバイを利用することは事実上不可能だ。バッテリーがある程度減ったら自動で休止状態にすることは可能だが、休止状態になるとシステムの復帰に少し時間を要してしまう。
モダンスタンバイのメリットを生かしつつ、消費電力を抑制できないか――そこで誕生したのが、レノボ独自の「スマート・スタンバイ」だ。簡単に説明すると、PCを使わない時間帯は自動的に休止状態に移行し、使う時間帯になったら自動的にモダンスタンバイに復帰する機能だ。
スマート・スタンバイは当初、Lenovo Vantageから「PCの使用開始時間」「使用終了時間」「利用する曜日」を指定する必要があったが、現在はThinkPadの使用状況から分析して、休止と復帰のタイミングを自動調整することもできる。自動調整に利用する仕様状況データは、Windows 10のログから取得したもので、Lenovo Vantage/Commercial Vantageでも可視情報として確認可能だ。
最近のThinkPadには、PCの利用状況に応じてパフォーマンスや冷却ファンの回転数を自動調整する「インテリジェントクーリング」という機能が備わっている。
この制御は、主に独自の半導体「ThinkEngine(シンクエンジン)」がCPU/GPU、ストレージの温度情報や加速度センサーから得た情報に基づいて行われる。「加速度センサー?」と思うかもしれないが、膝やももの上で使っていることを検知して、カバーの温度を抑制する制御を行う上で重要なものだ。「ThinkPad X1 Yoga」や「ThinkPad X12 Detachable」のような2in1/タブレットモデルでは、手に持っていることも自動検知して温度を制御するという。
現行のインテリジェントクーリングは、Windows 10の「パワースライダー」と連動して設定されるようになっている。一般的なモデルでは、スライダーを「バッテリー節約機能」「より良いバッテリー」にすると静音モード、「高パフォーマンス」にすると自動モード、「最も高いパフォーマンス」にするとパフォーマンスモードに切り替わる。
ただし、モバイルワークステーションであるThinkPad Pシリーズは、他シリーズとは少し異なる。スライダーを「最も高いパフォーマンス」にすると、さらにパフォーマンスを引き出せる『超』パフォーマンスモード」を利用できる。このモードは「ユーザーエクスペリエンス(UX)よりも動作パフォーマンスを重視するユーザー向けに用意された」(担当者)もので、発熱もそれなりに大きくなる。
大和研究所は、ThinkPadの冷却ファンの“挙動”にもこだわっている。余計にファンを回転させないために、マザーボード(基板)側にも温度センサーを設けることで、ファンの回転制御をよりきめ細かく行っているという。
また、回転させる場合でもできるだけ「非可聴音量(耳で聞き取れない音)」の範囲内で回転させるように制御しているとのことだ。具体的には、早めに冷却(回転)を始めることで、CPUファンがいきなり騒がしくならないようにしている。
このように、ThinkPadは電源や熱の管理をかなりきめ細やかに行っている。少しでも“静か”で高性能なノートPCを必要としているなら、ThinkPadを選択肢に入れるといいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.