インテルは9月7日、オンラインイベント「インテル PC Forum 2021」を開催した。このイベントでは、主にビジネス向けのセキュリティ/管理機能「Intel vPro」を搭載するPCの導入事例や最新動向が解説された。イベントの模様は後日、特設サイトで公開される予定だ。
同社の鈴木国正社長の基調講演では、世界的に不足傾向にある半導体の供給状況について言及があった。
半導体の不足は、用途や種類を問わず深刻になりつつある。世界半導体市場統計(WSTS)の2021年春季半導体市場予測(参考リンク:PDF形式)によると、2021年の半導体市場は、出荷価格ベースで前年比19.7%の成長が見込まれている。これは過去にない伸び率だという。
理由の1つは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うPCやクラウドへの需要の高まりである。テレワークや在宅時の過ごし方の変化への対応に加えて、企業や教育機関がDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資を加速したことも半導体の需要増につながっているという。
新型コロナウイルス感染症を巡っては、2020年前半は工業製品の工場閉鎖(生産見合わせ)も相次いだ。2020年後半に入ると感染対策も進み、工場閉鎖は少なくなったが、特に自動車産業では“反動”から生産数が一気に跳ね上がった。
自動車の生産数が急増したことに伴い、自動車で使う半導体への需要も急増し、供給が追いつかない状況になってしまった。半導体不足による自動車の減産や生産見合わせも発生した。
半導体需要の高まりに応える形で、ファウンドリー(受託製造者)を含む半導体製造者は設備投資を加速し、生産能力の向上に努めている。
しかし、半導体の製造ラインは簡単に増設できるものではなく、少なくとも1年の準備期間を要する。また、製造ラインが稼働したとしても、半導体の製造には3カ月〜半年程度かかる。「半導体の供給回復は、長期戦を覚悟しなければならない」状況にあるのだ。
さらに、半導体生産には「地政学リスク」もある。IC Insightsの調査レポート「Global Wafer Capacity 2021-2025」によると、2020年12月時点における半導体の「真水の生産能力」(参考リンク)は以下の通りだという。
これを足し算すると、半導体の生産能力の72.9%がアジアに所在する特定の国に集中していることが分かる。特定の地域や国に半導体生産を依存することは、特に欧米企業にとっては大きなリスクとなりうる。そのため、欧米や中国では、政府が半導体の自国内生産能力を高める政策を進めている。
一方、この調査レポートを見る限りにおいて、日本は世界第3位の半導体の生産能力を備える国である。しかし、日本が得意とするのはパワー半導体(高い電圧や大きな電流の制御を行う半導体)、デジタルカメラ用のセンサーやNANDフラッシュメモリで、微細化が進んだ先端半導体では、台湾や韓国に水を開けられている。
そんな中で米Intelが打ち出した「IDM 2.0」は、その間隙(かんげき)を縫う作戦であるとも見なせる。Intelは米国の他、イスラエルとアイルランドにも半導体工場を保有している。生産能力的な意味で「空白」に近い場所に所在する地の利を生かして、半導体の受託生産も推進しようとしている。
ともあれ、供給不足に端を発した半導体産業の“激動”は、しばらく続きそうである。
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