Intelは3月23日(米国太平洋時間)、パット・ゲルジンガーCEOが登壇するプレゼンテーションイベント「Intel Unleashed: Engineering the Future」を開催した。イベントでは、「IDM 2.0」という半導体に関する新しいビジネスモデルが示された。
CPUを始めとする半導体は、大きく「設計/開発」「製造」「販売」の3つのプロセスを経てOEMメーカーまたはユーザーの手に届けられる。
Intelでは、CPUの製造において3つのプロセスを全て自社で行っている。このようなビジネスモデルは、一般的に「IDM(Integrated Device Manufacturing)」、日本語に訳すと「垂直統合型デバイス製造」と呼ばれる。
IDMのメリットは、全ての工程を自社でコントロールできることと、それに伴う外部取引コストを削減できることにある。一方で、新しい製品の製造に伴う工場(製造ライン)への設備投資がかさむというデメリットもある。
プロセスの微細化が著しい半導体の製造では、IDMのデメリットが大きく出てしまいがちだ。そのこともあり、AMDやAppleのように「製造」工程をファウンドリー(受託半導体製造者)に委託して、自社では工場を持たない半導体メーカー(ファブレスメーカー)も少なからず存在する。Intelでも、CPU以外の半導体については既にファウンドリーへの製造委託を進めている(参考記事)。
Intelが新たに発表したIDM 2.0では、従来のIDM路線を強化する一方で、ファウンドリーを活用した半導体生産とIntel自身がファウンドリーとなる半導体生産にも取り組む。
先述の通り、IntelはCPU以外の半導体製品はファウンドリーへの製造委託を進めている。2023年以降は「(Intelの半導体製品の)ポートフォリオ全体でファウンドリーの能力を活用して最高の製品を提供する」という。つまり、CPUの製造でもファウンドリーを活用するということだ。
ただし、ファウンドリーの利用は「補完的かつ戦略的」とのことで、自社が保有する半導体工場とファウンドリーを併用してCPUなどの安定供給を目指す。
最近はあらゆる製造業において半導体へのニーズが高まっている。「半導体不足で自動車生産に遅れ」というニュースを耳にした人もいると思うが、自動車製造業ではその傾向が特に顕著だ。
一方で、半導体に関する業界団体「SEMI(セミ)」のレポート「SEMI World Fab Forecast Dec 2020」によると、半導体工場の約80%はアジア地域に集中している。需要が高まっている割に、その供給源は「地理的なバランスが取れていない」。
Intelの半導体工場は、米国(3カ所)、イスラエルとアイルランドにある。この「地の利」を活用し、同社は半導体の受託生産サービスを開始する。自社の半導体事業とのバッティングを避けるために、このサービスは「Intel Foundry Services(IFS)」という独立したビジネスユニットの下に提供される。
生産を委託するメーカーは、ArmアーキテクチャやRISC-VアーキテクチャなどIntelのアーキテクチャにとらわれずに半導体を設計することができる。メーカーが希望する場合は、x86アーキテクチャなどIntelが保有する知的財産(IP)もライセンス供与するという。
IFSに関しては、大手ITメーカーからの賛同も得ている。中でもIBMとは半導体のプロセスルールやパッケージング技術に関する共同研究を実施する。
自社やIFS事業による半導体製造の増加を見越して、Intelは米アリゾナ州にある「Ocotillo campus」に2つの新工場を建設する。投資額は最大200億ドル(約2兆1702億8000万円)で、3000人を超える高技術/高賃金雇用、3000人を超える建設雇用と、1万5000人の長期雇用を創出するという。
今後同社は、米国やヨーロッパを含む世界各地でさらなる設備投資を計画している。具体的な内容は2021年内にも明らかとなる予定だ。
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