Intelの最新CPU「第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)」は、10nmプロセスで作られている。一方で、同社の競合企業であるAMDの最新CPU「第4世代Ryzenプロセッサ(開発コード名:Vermeer)」は7nmプロセスで作られており、次世代のアーキテクチャでは5nmプロセスへの移行も示唆されている。
当初の予定では、Intelは2021年には7nmプロセスのCPUをリリースする予定だった。しかし、内部の歩留まりの問題からプロセスの移行が遅れている。
同じ性能を備えるCPUを作る前提に立つと、一般にプロセスは細かいほど消費電力を下げられる。一方で、プロセスの細かいCPUは高度な生産技術を求められる上、量産効率(歩留まり)が低くなる。
もっとも、半導体の処理性能は設計にも左右されるため、「プロセスが細かい方が性能が良い」とは言いきれない。あえてプロセスに余裕を持たせて生産数を多くするという選択肢も考えられる。
しかし、いち早く7nmプロセスに移行したAMDは、CPUの性能を着実に改善している。結果として、第4世代RyzenプロセッサはIntel製CPUを上回るシングルコアの演算性能を手に入れた(参考記事)。
IntelもAMDの“攻勢”に手をこまねいているわけではない。7nmプロセスへの移行を進めるべく準備を進めている。2019年段階では「2021年内」に7nmプロセスを採用したCPUの投入を予定していた。
しかし、2020年7月に行われた2020年第2四半期決算では、7nmプロセス製品の投入が「当初予定から発売時期が約6カ月遅れる見込み」とされた。その主因は「歩留まりが社内目標と比べると12カ月遅れで推移していること」にある。
この“遅れ”を挽回する手段として、Intelは7nmプロセスの製造ラインを持つファウンドリー(受託生産者)にCPUの生産を委託することを検討している。CPUの自社生産を貫いてきた同社からすると、これは大きな方向転換だ。それに先立つ動きとして、同社のゲーミングPC向けGPU「Xe-HPG」には、外部ファウンドリーで生産を行う計画がある。
Intelの日本法人であるインテルが12月10日に開催したプレスセミナーにおいて、この件について記者から質問がなされ、同社の鈴木国正社長が答えた。
―― 7nmプロセスの進ちょくについて教えてください。
鈴木社長 先日(第2四半期決算で)発表された通り、実際に(7nmプロセスに関する)遅延は発生しております。具体的な(7nmプロセスを採用する製品の)発表時期は決まっていませんが、現時点では10nm(の製品)に対する大きな需要があると予測していますし、第11世代プロセッサをしっかりと作り込んでいきます。
本社(Intel)CEOのボブ・スワンも説明している通り、2023年については自社、あるいは外部ファウンドリー、もしくは両者の7nmプロセスを採用することで、リーダーシップのある製品を提供する可能性を考えています。
自社と外部ファウンドリーの両軸で、7nmプロセス製品を供給する可能性を検討していることを改めて示唆した。
10nmプロセスのCPUの改良を進めつつ、7nmプロセスへの移行を進めるIntel。競争環境を考えると、これ以上の遅れは厳しい。どのような選択肢を取るのか、注目だ。
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