無事UEFIの更新が終わった所で、DeskMini X300のパフォーマンスをベンチマークテストを通してチェックしていこう。
今回はRyzen 7 5700G(3.8GHz〜4.6GHz、8コア16スレッド)と、比較対象として「Ryzen 7 PRO 4750G」(3.6GHz〜4.4GHz、8コア16スレッド)の2種類のAPUを用意した。メインメモリにはDDR4-3200規格の16GB SO-DIMMを2枚(計32GB)、ストレージにはPCI Express 3.0接続の1TB M.2 SSDを搭載している。
まず、レンダリングを通してCPU性能を計測する「CINEBENCH R23」を実行してみた。スコアは以下の通りだ。
今回用意したAPUは、いずれも8コア16スレッド構成なので、マルチスレッドのスコアは高水準にある。ただ、Ryzen 7 5700Gは最新の「Zen 3アーキテクチャ」を採用しているため、前世代のRyzen 7 PRO 4750Gと比べると確実にパフォーマンスは向上している。
結果のグラフには載せていないが、一般的なATXフォームファクターのマザーボードでRyzen 7 5700Gを使った場合でもスコアはほとんど変わらない。小型PCだとCPUパフォーマンスが落ちるというわけでもないということだ。
続いて、PCの総合的な性能を計測する「PCMark 10」の結果を見てみよう。総合スコアは以下の通りとなった。
総合スコア以外の個別テストの結果も含めて、Ryzen 7 5700Gが優勢となった。少し細かく見ると、アプリ起動やブラウジングでの性能を測る「Essentials」や、オフィススイートなどでの作業性能を測る「Productivity」では、Ryzen 7 PRO 4750Gとのスコア差が有意に開いた。しかし、クリエイティブな用途での性能を見る「Digital Content Creation」でのスコア差はそれほど大きくない。
実は、両APUはCPUコアこそ前世代からパフォーマンスアップを果たしたものの、GPUコアは事実上同一である。しかも、Ryzen 7 5700GではGPUコアの動作クロックが100MHz低くなったため、理論上のGPUパフォーマンスは“微減”している。Digital Content Creationのテストでは、GPUも多用される。ある意味で、CPUで伸びたスコアをGPUが少し削ってしまっているという構図だ。
もっとも、普段使いのPCでは、GPUよりもCPUのパフォーマンスの方が重要になりがちである。CPU部分のパフォーマンスが向上したRyzen 7 5700Gは、その点において有利といえる。
3Dグラフィックスの描画性能をチェックする「3DMark」も試してみよう。今回は、DirectX 12を利用する「Time Spy」とDirectX 11利用する「Fire Strike」を実行した。
総合スコアは以下の通りだ。
先述の通り、Ryzen 7 5700GのGPU部分は、Ryzen 7 PRO 4750Gと比べると理論上の性能が微減している。しかし、実際のスコアを見てみると、僅差ではあるがRyzen 7 5700Gの方が高い。
もっとも、Ryzen 7 5700GもRyzen 7 PRO 4750Gも、GPUを統合したCPUとしてはグラフィックス性能は良い部類に入る。DirectX 11世代のゲームなら、そこそこ快適にプレイできそうである。
実ゲームベースの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」の結果も見てみよう。今回は解像度をフルHD(1920×1080ピクセル)、フルスクリーン設定で、「最高品質」と「標準品質(デスクトップPC)」の2パターンでスコアを計測した。結果は以下の通りだ。
3DMarkと同様に、僅差でRyzen 7 5700Gの方がスコアが良い。ただ、本当に僅差なので、両者において体感差はほとんどないといえる。
最高画質にすると「設定変更を推奨」という判定になるが、標準画質では「やや快適」判定になる。MMORPGのようなそれほど負荷の高くないゲームであれば、画質設定次第で十分にプレイ可能である。ブラウザゲームや負荷の軽い「VALORANT」のようなFPSタイトルをメインでプレイするゲーマーであれば、APU搭載のDeskMiniは1つの選択肢になりえるはずだ。
DeskMini X300とRyzen 7 5700Gの組み合わせは、CPUのパフォーマンス向上によって、性能面でより堅実な小型PCを組み上げられるようになった点でメリットが大きい。 インターネットの閲覧、オフィスアプリの利用、動画の視聴や多少の画像/動画編集など、一般的な用途なら極めて快適に使えるはずだ。
グラフィックス処理性能も決して低いわけではない。さすがに高負荷なタイトルを遊ぶのは厳しいが、大半のPCゲームは設定次第で十分に遊べる柔軟性も備えている。
VESAマウントでディスプレー裏に配置する、Wi-Fiキットを追加して無線LANに対応させるといった拡張性も含め、省スペース性とある程度の性能を両立させたPCを求めるのであれば、DeskMini X300とRyzen 5000Gシリーズは心強い味方となってくれるだろう。
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