レノボ・ジャパンは11月8日、同社の大和研究所(横浜市西区)において「製品開発におけるESGの取り組み」に関する説明会を開催した。この説明会では、同研究所のサイトリーダーで、同社のDistinguished Engineer(特別エンジニア)を務める塚本泰通執行役員が登壇。昨今の技術/製品開発の動向を解説した。
レノボ・ジャパンの大和研究所のルーツは、1992年に「ThinkPad 700c」(※1)を世に送り出した日本IBMの「大和事業所」である。一部を除くThinkPadの研究/開発を担ってきた同事業所は、2005年5月に一部の部門を除きレノボ・ジャパンへと移管された。
移管後もThinkPadの研究/開発拠点として活動してきた同研究所は、2010年12月に「大和研究所」として横浜市西区の「みなとみらい地区」に移転された(参考記事)。現在、大和研究所はThinkPadに加えてインターネット会議デバイス「ThinkSmart」の研究/開発にも取り組んでいる。
(※1)日本では「PS/55note C52 486SLC」として発売された
1992年のThinkPad 700cの登場以来、Thinkブランドの製品は「意味のあるデザイン」「絶え間ない革新」「信頼できる品質とセキュリティ」を哲学として貫いているという。開発過程も、ビジネスユーザーの成功(≒生産性の向上)につながるかどうかを意識しているとのことだ。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、企業におけるテレワークは一気に拡大した。一方で、テレワークの拡大に伴いオフィスワークのメリットを見直す動きも出ている。今後は、都市圏を中心にテレワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」が広がると思われる。
働き方の1つとしてハイブリッドワークを選ぶ上で、重要になるのがいつでもどこでも仕事のパフォーマンスを最大化できることである。レノボでは「Smarter technology for all(全ての人によりスマートな技術を)」を合言葉にThinkPadを始めとするビジネスツールを提供している。
大和研究所では「ユーザーの役に立たない技術」を無理やり製品に落とし込むのではなく、ユーザーの声を生かして「ユーザーの役に立つ技術」を開発して製品に盛り込むことを第一に考えているという。加えて、研究者自身も“ユーザー”であることから、日々の業務で利用しているソフトウェアやツール類について、「あれ?」と思ったことはパートナー企業にフィードバックする活動にも取り組んでいるとのことだ。
ハイブリッドワーク時代の「コラボレーションツール」として、昨今のThinkPadはさまざまな改善を加えている。
ThinkPadといえば独自のポインティングデバイス「TrackPoint」が特徴だが、昨今のユーザー動向を踏まえて、最近のモデルではタッチパッドの面積を拡大しているという。これにより、マウスポインターの移動やジェスチャー操作がしやすくなった。ThinkPadの強みであるキーボードの品質改善も継続して行っているとのことだ。
Web会議に欠かせないスピーカーやマイクの改良も行っている。最近のThinkPadでは、米Dolby Laboratoriesのリモート会議向けの音声改善技術「Dolby Voice」に対応するモデルも用意した。専用のヘッドセットを用意しなくても良好な音質で会議できることが好評だという。
どこでも仕事をできるようにするという観点では、無線WAN(ワイヤレスブロードバンド)対応モデルの拡大や、ハードウェアベースのセキュリティ機能の強化も進めている。セキュリティ機能は「大和研究所にとっての最優先事項」として、製品単体にとどまらない、ライフサイクル全体で対策を講じているとのことだ。
もちろん、ThinkPadならではの丈夫さを担保する「拷問(トーチャー)テスト」も継続しており、現在はハードウェア関連の検証テストを約200種類行っているという。さらに、使い勝手を高めるために約700種類のソフトウェア互換テストとユーザー体験(UX)テストも実施しているとのことだ。
2022年、ThinkPadは初代の登場から30周年を迎える。レノボ・ジャパンでは、この30周年に向けた“仕込み”を行っているという。その内容について筆者が質問した所、「乞うご期待」とのことで詳細が語られることはなかった。
かつての「ThinkPad 25」のような記念モデルが登場するのかどうか、続報を期待して待ちたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.