プロナビ

Qualcommの最新SnapdragonからPC市場のトレンドを考える:Windowsフロントライン(1/2 ページ)

» 2021年12月07日 12時00分 公開

 米国時間で11月30日から12月1日に渡って米ハワイで開催された、米Qualcomm主催の「Snapdragon Tech Summit 2021」において、PCプラットフォーム向けの「Snapdragon 8cx Gen 3」と「Snapdragon 7c+ Gen 3」が正式発表された。

 前回、いわゆるSnapdragonを搭載したWindows PC、通称「Windows on Arm」の最新事情について「『MicrosoftとQualcommの独占契約が間もなく終了』報道を考える」のタイトルで紹介したが、Qualcommから最新製品群が発表されたことを受け、改めてこのあたりをチェックしていきたい。

Snapdragon 8cx Gen 3 PC向け最新SoCの「Snapdragon 8cx Gen 3」

CPUコアからみる「Snapdragon 8cx Gen 3」

 両SoCともに2022年前半中の出荷を予告しており、最終製品の出荷ターゲットとしては夏前後が予想される。Qualcommのカテゴライズによれば、Snapdragon 8cx Gen 3は「Performance」、Snapdragon 7c+ Gen 3は「Entry」にあたり、いわゆるハイエンドとローエンドの両極端の領域をカバーすることになる。

 今回、普及価格帯にあたる「Mainstream」の製品は発表されていないが、ラインアップの傾向からQualcommがWindows on Armの世界で当面目指している目標が見えてくるといえる。

 AppleがMacBook Proのラインアップを一新して「M1 Pro」「M1 Max」の2種類のSoCを発表したことで、PC業界においてもIntelプロセッサに替わるArm利用が注目を改めて集めることになり、Snapdragonもまた、その比較対象としてM1シリーズのようなApple Siliconが挙げられる機会が増えた。

 ゆえに、Snapdragon 8cx Gen 3は宿命として「M1と比べてどうか」という話が必ず出てくるが、実際に両者を直接比較する機会がないため、今後ベンチマークを含めた性能評価が行われていくことだろう。ただ、比較では必ず最上位モデルが引き合いに出されることもあるが、Snapdragon 8cx Gen 3はパフォーマンスと同時に、そのプラットフォームの性質を表す方向性を示す役割も担っている。筆者的にはこの部分が興味深いと思う。

 Qualcommによれば、前モデルの「Snapdragon 8cx Gen 2」と比較してCPUパフォーマンスで85%、GPUパフォーマンスで60%性能が向上しているという。1年間でこのパフォーマンス上昇は、半導体の進化サイクルから考えればかなり高いといえる。スペックシートには出ていないものの、CPUコアのKryoはArm Cortex-X1となっている(Cortex-A78をベースにパフォーマンスを強化したもの)。

 実は、Cortex-X1は2021年のTech Summitで発表されたSnapdragon 888で採用されていたものであり、最新のスマートフォン向けSoCである「Snapdragon 8 Gen 1」では改良モデルである「Cortex-X2」が採用されている。

 「なぜ?」という疑問があるかもしれないが、諸般の事情を鑑みてQualcomm(とSoCを採用するOEM)がこれをベストだと判断して実装したのだと考える。XDA DevelopersではPC業界とモバイル業界の製品投入サイクルの違いを例に挙げており、特に前者は製品投入までのリードタイムも18カ月程度と長く、仮にCortex-X2ベースのSoCを発売しても、実際に製品が市場に出回る頃には既に次の世代の製品がモバイル市場向けに出荷されていることを示唆する。つまり、世代の違いがそれほど大きな意味を成さないというわけだ。

Snapdragon 8cx Gen 3 「Snapdragon 8cx Gen 3」のCPUコアブロックであるKryoの構成図
Snapdragon 8cx Gen 3 「Snapdragon 8 Gen 1」のKryoのコアブロック図

 もう1つ注目したいのが、コアの構成だ。Snapdragon 8cx Gen 3ではCortex-X1ベースのパフォーマンスコアが4つ、残り4つを高電力効率の“Efficiency”なコアが4つの“オクタコア”プロセッサとなっている。

 Snapdragon 8 Gen 1ではCortex-X2のプライムコアが1つ、Cortex-A710のパフォーマンスコアが3つ、Cortex-A510の高効率コアが4つのオクタコア構成だ。この「1+3+4」の変則コア構成を採用したのはSnapdragon 855以降だが、当時はクロック周波数をいじるのが主な変更点で、明確にコアのアーキテクチャが変更されたのはSnapdragon 888以降になる。

 なぜこのようなヘテロジニアスなコア構成を採用するかといえば、モバイル分野では「プライマリで稼働しているアプリの動作が優先される」という事情による。チップのサイズや消費電力(発熱)の問題もあり、限られた条件の中で最大限パフォーマンスを引き出すための工夫というわけだ。

 一方でPCの世界ではマルチタスク動作が重視されるため、プライムとパフォーマンスの区別なくホモジニアスなコア構成が選ばれることになる。Snapdragon 8cx Gen 3ではクロック周波数も全てのコアが3.0GHzなのに対し、Snapdragon 8 Gen 1ではプライムコアのみが3.0GHz動作になっている。これはPC向けの方がチップサイズや消費電力(発熱)面で余裕があるからだ。

 このように、モバイル向けに端を発したアーキテクチャであっても、ターゲットによって明確に設計方針が異なってくる。ここで話題のApple M1 Pro/Maxを引き合いに出せば、パフォーマンスコアと高効率コアで「8+2」の構成になっている。同世代のApple A15 Bionicが「2+4」の構成であることを考えれば、その違いが分かるだろう。

Apple M1 Apple M1 Proのブロックダイアグラム

 興味深いのは、M1 ProとM1 MaxではCPUのコア構成に違いはなく、むしろGPUのコア数で差別化が図られている。M1 MaxのマシンはM1 Proと比較して消費電力で1.5倍ほど伸びるため、それだけGPU性能が強化されていることが分かる。今後Snapdragon 8cx Gen 3がどういった方向性を目指すかは分からないが、M1登場を受けてGPUの強化をさらに目指すのか、あるいは全体のバランスを重視するのかが気になるところだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月24日 更新
  1. “置き場所に困る”大容量ポタ電の壁を打破! 冷蔵庫を3日動かすEcoFlow「DELTA Gen4」シリーズが日本上陸 (2026年10月23日)
  2. 若者向けのカラフルな新「Dell 14S」が日本上陸 11月1日まで4.5万円引きの14万9800円から (2026年10月22日)
  3. 折りたたみ型から薄型まで! スマホやタブレットで“本気”の文字入力に使える持ち運び用キーボードを選ぶコツ (2026年10月23日)
  4. FCCLが「FMV Keyboard X」の一般販売を開始 ハイスペックマウス「FMV Mouse X」も同時発売 (2026年10月22日)
  5. 「Galaxy Watch9」を1週間使って分かったこと Pixel Watchと比べた使い勝手は? (2026年10月23日)
  6. 「iPhone Duo」を1週間使って分かった、全部盛りではない“上質さ” 心地いい開閉ヒンジの内部を見るために“非破壊検査”してみた (2026年10月21日)
  7. 天空が12月25日に発売する「GPD WIN Max 3」国内正規版 実機に触れてきた (2026年10月23日)
  8. 約22万円の新型「Mac mini」で初めてのローカルAI体験 ストレージの価格高騰対策にピッタリかも (2026年10月20日)
  9. スマホは「バッグの中」から「外」へ AULUMUのスリングバッグ2種で移動時のプチストレスを解消した (2026年10月22日)
  10. PFUから33万円キーボード「HHKB Professional Elite」登場! 英語配列のみで有線特化の“原点回帰” 全世界300台限定 (2026年10月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー