4月23日、日本マイクロソフトがICT教育に関するオンライン講演会「Microsoft Education ICT教育フォーラム」を開催した。この講演会は大きく3つのセッションに分かれており、1つ目のセッションでは岐阜県における取り組み、2つ目のセッションでは東京都における取り組みの紹介、3つ目のセッションは前2つのセッションの登壇者によるパネルディスカッションという構成となっていた。
この記事では、岐阜県におけるICT教育に関する取り組みを紹介したセッションの模様をお伝えする。
セッション1では、始めに岐阜県教育委員会 学校支援課長の下野宗紀氏が「岐阜県におけるICT環境整備とその活用」と題する講演を行った。
同県の教育委員会では2019年3月、2019年度から2023年度までの「岐阜県教育振興基本計画(第3次岐阜県教育ビジョン)」を策定した。
この基本計画では「ふるさと教育の充実」と「ICT環境の整備と利活用の推進」という2項目を“重点的に取り組む施策”として盛り込んでいる。
ふるさと教育の充実は、小学校から高校までの12年間を一貫して「ふるさと」をテーマにした探究的な学びを推進する、という取り組みだ。小学校と中学校では体験活動を通して自分が住む地域や岐阜県全体の魅力を知り、高校では小中学校で学んだ知識を下敷きとして、学科(普通科、専門課程)や生徒の人数に応じた形で地域の課題解決に向けた学習を進めるという。
ICT環境の整備と利活用の推進は、ふるさと教育を含めた「探求的な学び」を支えるための基盤作りとして行われる。基本計画に基づき、初年度である2019年度には県立学校におけるICT環境の整備に着手したという。具体的には、以下のツールを全ての県立学校の普通教室などに配備した。
教職員には、基礎編と実践編の2冊からなる「活用ガイド」を配布した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、次の2020年度の前半は急きょ「オンライン学習支援」を行うことになった。前年度にツールの配備を進めたことが奏功し、比較的速やかに支援を始められたという。
2020年度の後半には、国からの「コロナ臨時交付金」を活用して、県立高校や特別支援学校の児童/生徒(約4万2000人)に対して1人1台のタブレット端末を配布した。高校の全生徒に対して「Microsoft 365 Education」のアカウントも発行したという。
2021年度は「1人1台タブレット端末活用元年」と位置付けて、教育委員会内に新たな組織「ICT教育推進室」を新設した。県内の各地区に「ICT推進指導主事」を配置し、定期的に学校を訪問することで各校における取り組みを支援しているとのことだ。
岐阜県立岐阜高等学校では、MetaMojiが開発した「MetaMoji ClassRoom」を活用してグループ単位の探究学習を行った。また岐阜県立大垣養老高等学校の農業科では、実習の現場にタブレット端末を持ち出して、カメラ機能などを使って果樹の生育を記録し、最適な生育環境を研究した。
オンライン学習支援については当初、教室にセットを組んで授業をそのまま配信する「ライブ形式」で行っていたが、教職員の工夫によって簡素な機材を使って配信できるようにしたという。PowerPointのプレゼンテーションを活用することで、授業の内容によってはホワイトボードのない執務室(教科ごとの準備室など)でも配信できるようになった。
岐阜県教育委員会、日本マイクロソフトと慶應義塾大学SFC研究所は2021年6月、「未来を創る学び」を目指す連携協定を締結した。
現在、この協定に基づく取り組みは順次進められているという。ただし、全ての教員が学習支援アプリを習熟しているわけではないので、今後も継続してICT活用の底上げとさらなる授業改善を進めていくという。
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