先述の連携協定における大きな目玉である「『未来を創る学び』の共同研究」では、大きく8つのテーマが設定されている。そのうちの1つである「Teams協働×共同研究の可能性とその評価」は、名前の通りMicrosoft Teamsを活用した教職員間のコラボレーション(協働)に関する研究を行っている。
今回の講演では、この研究のメンバーである岐阜県立東濃フロンティア高等学校の岩川光一朗教諭と岐阜県立東濃実業高等学校の海老千鶴教諭による講演が行われた。なお、この講演は「相談・提案・実践報告を全てTeams上」で行った約半年間の成果を元に組み立てられている。
研究チームの約半年間のミーティングとチャットを分析してみると、Teamsを使った協働はさまざまな効果が得られることが分かったという。講演では、中でも効果の高かったという「実践の産生」と「アイディアのふ化」の2点に絞って話が展開された。
研究チームの会議では、必ず自動文字起こしを実行していたという。それをいわゆる「ワードクラウド」として可視化してみた所、研究を進めるための会議ではあるものの、それぞれの教職員メンバーの“興味”が研究を進める大きなドライバーとなったことが分かった。教職員メンバーが日本マイクロソフトから参加しているメンバーから興味のある分野や項目について質問を重ねて、そこから“やりたいこと”を全メンバーに共有し、議論を深めていった様子が見て取れたという。
その成果の1つとして生まれたのが「つながるデジタル評価」である。これは課題研究の日誌を紙からデジタルに置き換えるという実践で、「日誌作成に掛かる時間の短縮」「日誌の文字数増加」といった具体的な効果を得られたという。その上、副次的な効果として年輩の教職員メンバーもFormsを使いこなせるようになったとのことだ。
チームでは、Teams上で行われた約半年分のチャット(投稿)を匿名で(発言者を特定できない処理をして)整理し、特徴的なスレッドにタグ付けをして「マインドマップ」も作成した。あえて匿名としたのは「人」ではなく「投稿」によるつながりを見るためだという。
すると、Teamsを使って協働するとアイディアやアクションが並列的に進んでいき、アイディアが結実するまでのスピードが速いことが判明し、成果物に他の人のアイディアが取り込まれやすいという傾向も見て取れたという。
Teamsを使えば「誰がやった」ということは関係なく、誰でもクリエイティブな成果を出しやすいことがメリットだと2人は語る。
Teamsを使った協働では、時間や空間にとらわれないことやツールの使いやすさになどによって、アイディアの発生/共有に至るまでのプロセスや参加者の意識変化が相互に起きたという。
この研究を通して、「自分1人だけ」「自校内だけ」では難しいアップデートや成長が起こりやすいこの仕組みは、これからの新たな研修としての可能性を秘めていることが分かったと2人は語る。「このチームは維持すべき」との声がチーム内外から挙がったこともあり、2022年度も新メンバーを迎えつつ継続されることになったそうだ。
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