一方で、MacBook Proとの設計における差別化要素として、新しいMacBook Airは機能面において“ミニマルさ”を追求している。搭載する機能の線引きが明確になされているのだ。
それが一番分かりやすく表れているのがインタフェース類である。14/16インチMacBook Proで搭載されていたSDメモリーカードスロットやHDMI出力端子は、新しいMacBook Airには搭載されていない。Thunderbolt 3/USB4端子(※1)もわずか2つだ。「外部ディスプレイをたくさんつないだり、SDメモリーカードから大量のデータを取り出したりしたいならProをどうぞ」ということだろう。
ただし、Thunderbolt 3/USB4端子が2つしかないとはいっても、実は先代のMacBook Airよりは余裕がある。というのも電源入力端子として「MagSafe 3」が新たに搭載されたからである。電源入力のためにThunderbolt 3/USB4端子をふさぐこともないため、使い勝手の面では向上している。
(※1)一般的にUSB4も利用できるThunderbolt端子は「Thunderbolt 4端子」と名乗ってもおかしくないのだが、画面出力においてThunderbolt 4の要件を満たしていないためこのような呼び方になっているものと思われる
なお、新しいMacBook Airには14/16インチMacBook Proのようなモデル名を示すエンボス加工がない。もっというと、モデル名の刻印や印字はどこにもない。
スピーカーも見える部分からはなくなったことで、ディスプレイパネルを閉めると、まるでアルミの一枚板のようにクリーンな外観となる。天板のAppleロゴを見て「ん、これは何かMacBookかな?」と分かる程度である。
ちなみに、外気が出入りするスリットだが、先代と同じくヒンジ部分に隠されている。ただ、本体の厚みが約1.13cmということもあり、ヒンジ部の構造を垣間見るだけのすき間はほとんどない。スリットはあるけれど見えない――そんな状況に近い。
さらにAppleは、MacBook Airのスピーカーも狭いヒンジ部に押しやってしまった。
この2ウェイ4スピーカーは、それぞれ異なるヒンジ部のポートから音が放出され、ディスプレイパネルの下端に反射されて耳元に届く仕組みとなっている。「音が良さそうに感じられないだのだけど……」と思う人もいるかもしれないが、そこまで心配する必要はない。
確かに、対向する形で2基のユニットを並べたウーファーを持つMacBook Proと比べれば、低音域の再生能力は低い。しかし、M2チップの音声処理回路を活用した「コンピュテーショナルオーディオ」の力もあり、中音域以上の再現性は高い。各周波数帯域の位相管理も厳密に行われており、空間オーディオの再現性は結果的に過去のMacBook Airよりも大幅に良くなっている。
「低音域の再生能力が低い」とはいうものの、バランスが崩れて高音域がうるさく聞こえるということはない。音楽も自然に聞こえる。特に音声の帯域は耳当たりがよく、テレワークなどでオンライン会議をする機会が多い人なら、良さを実感できる機会は多いだろう。
前モデルから引き継がれている3アレイマイクを始め、空間オーディオの再現性が良く音声帯域も聞きやすいスピーカーなど最新Macのたしなみともいえるサウンド回りの装備に、輝度が向上した液晶ディスプレイが組み合わさったおかげで、新しいMacBook Airは動画コンテンツを楽しむ上でも質の高いコンピュータに仕上がっている。
色鮮やかかつ正確な色再現と高いピーク輝度で「Netflix」や「Apple TV+」の映像を楽しめるだけでなく、オーディオトラックが「Dolby Atmos」フォーマットのタイトルなら仮想サラウンドまで満喫できる。低音域の再生能力が高くなくとも、音声の帯域が心地よければ、セリフは聞き取りやすい。
しかも、M1チップを搭載する先代モデルと同様に、新型MacBook Airは動画再生時の消費電力が極めて低い。輝度設定にもよるが、動画再生時に18時間というスペックは控えめなもので、出先で映画の数本を観たとしてもバッテリーが減ることを心配する必要はない。
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