完成度を極めた新型「MacBook Air」 進化は「M2チップ」だけにあらず本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/5 ページ)

» 2022年07月14日 22時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

M2の能力はファンレス設計でどこまで引き出せるのか

 このように、新しいMacBook Airのデザインは、最新世代のMac向けの技術を取り入れつつ再構成されている。とはいえ、ファンレス設計でM2チップのパフォーマンスをどこまで性能が引き出せるのか気になる所だろう。

 M1チップ搭載機同士で比較すると、冷却ファンを備える13インチMacBook Proの方がコンスタントな性能を発揮するという意味でやや有利だった。しかしM2チップは機能強化されているため、単純に考えると放熱面で厳しくなることは容易に予想が付く。

 チップの部位別に見れば、CPUコアは恐らくM1とM2で同等の発熱だろう。CPUコアの処理効率を高めている分、同じワークロードであればM2チップの方が少し余裕が出そうだが、CPUコアを常時使い込むようなアプリではM2チップの方が少し発熱量が大きくなりそうである。また、Neural Engineの処理パフォーマンスが向上したりGPUコアが増えたりした分、これらを駆使するアプリでもM2チップの発熱は増えるだろう。

 先日レビューした新しい13インチMacBook Proなら、発熱時にファンによって冷却できる。しかしそれがないMacBook Airでは、いわゆる「熱だれ」を防ぐためにパフォーマンスを抑制せざるを得ない。

 実際、新型MacBook Airはどれくらい性能を“維持”できるのか気になる所である。そこで、M2チップを備えるMacBook Proと比べてどこまで性能が落ちるのか(あるいは落ちないのか)を主軸に据えて、10コアGPU構成の新型MacBook Airのパフォーマンスをチェックしてみることにした。

 なお、先に言っておくが、連続して高負荷の掛かるアプリケーション以外では両者に有意なパフォーマンス差は見られない(M1チップを搭載する前世代と同じ関係性)。そのため、今回はあえて高負荷なベンチマークテストに絞って結果をご紹介する。

CINEBENCH R23

 「CINEBENCH R23」は、クロスプラットフォームのベンチマークアプリで、3Dレンダリングを通してCPUのマルチコア/シングルコアの性能を確認できる。とにかくCPUをフル回転させるため、ファンレス構造のMacBook Airには若干厳しい内容ともいえる。今回は気温26度の環境でテストを行った。

 まず、1ループのみマルチコアテスト(全コアを使うテスト)を行った結果は以下の通りとなった。

  • MacBook Air:8458
  • 13インチMacBook Pro:8521

 1ループ程度の比較的短時間のテストでは、MacBook Pro比で1.5%ほどの性能低下にとどまっている。ファンレス設計による影響はほとんど出ないといって良いだろう。

 だが、このテストをループ(繰り返し)実行したらどうなるだろうか。MacBook Airで10分間ループする設定(※2)設定にして計測すると、以下のスコアとなった。

  • MacBook Air(30分ループ後):8008

30分以内に可能な限り繰り返しテストを行い、30分経過時点で進行していたテストのスコアを表示する設定

 約5%のスコア低下――これを大きいと見るか小さいと見るかは議論が分かれそうである。このスコア差は外気温やMacBook Airの周辺の温度にも左右される面もあり、筆者が計測した限りでは最大で約6.5%のスコア低下を観測したパターンもあった。その間、冷却ファンを備える13インチMacBook Proはループしてもスコアの変化はほとんどなかった。

 とはいえ、見方次第ではファンレスで8コアをフル稼働しても大幅なパフォーマンス低下は起こらないともいえる。事実、これくらいのスコア差では普段使いにおける体感に差を覚えることはないだろう。

 なお、シングルコアテストではMacBook Airと13インチMacBook Proのスコアには有意な差は生じない。1コアをフルに使うような使い方では、サーマルスロットリング(発熱を抑制するための性能制限)を起こさない程度には放熱に“余裕”があるということだ。

 総じてCPU性能に関しては、ファンレス設計の影響は小さい、あるいは外気温が快適な範囲であれば、ほぼ体感することはないと結論づけられると思う。

CINEBENCH CINEBENCH R23の結果

3DMark Wild Life Extreme Stress Test

続けて、Apple Silicon(M1/M2チップ)を搭載するMacでは、iOS/iPadOS用のアプリも一部を除いて利用できることを生かして、iPadOS向けの3Dベンチマークアプリ「3DMark Wild Life Benchmark」内にあるStress Test(ストレステスト)を実行してみよう。

 その名の通り、Stress Testはシステムに高負荷を掛け続けた場合のパフォーマンスへの影響をチェックできる。サーマルスロットリングが発生すれば、テストを繰り返すほどスコアが落ち込むというわけである。その推移はグラフで分かりやすく示される。

 このテストでは気温26度、28度、36度の環境下で実施してみたのだが、13インチMacBook Proではいずれの環境でもスコアの落ち込みはほとんど見受けられない。冷却ファン効果がてきめんだったといえるだろう。

 しかし、ファンレスのMacBook Airは外気温の差によってパフォーマンスの落ち込みが目立つ結果となった。もう少し詳しく見ていくと、気温26度の環境では1ループ目(6298ポイント)をピークに6ループ目(5230ポイント)まで緩やかに落ちていき、7ループ目以降はピーク時の8割前後のスコアで推移する。

8割くらい 気温26度の環境でループテストを実施した結果。スコアの最高値は6298ポイント、最低値は5043ポイントで安定度(Stability)は80.1%と判定された

 これが28度の環境になると、1ループ目がピークであることは変わらず26度の時とスコアに大差はない(6269ポイント)のだが、5ループ目(4739ポイント)以降はピーク時の7割程度のスコアで安定する。わずか2度の差で、パフォーマンスに10%程度の差が出たということになる。

7割くらい 気温28度の環境でループテストを実施した結果。気温にするとわずか2度だが、1割程度の性能低下を起こしたということになる

 これが36度になるとどうなるか。1ループ目は2回と変わらないスコア(6292ポイント)を記録するのだが、2ループ目(6156ポイント)から3ループ目(5202ポイント)、3ループ目から4ループ目(4060ポイント)でスコアがガクッと落ち込む様が見て取れた。

 その後4〜10ループ目まで4000ポイント前後で推移し、それ以降はポイントが上がったり下がったりを繰り返し、15ループ目に最低スコア(2105ポイント、ピーク時の約32%)を記録した。スコアが上がったり下がったりしたのは、GPU(SoC)の温度を見てパフォーマンスの微調整を繰り返したことが要因だと思われる。

32% 気温36度の環境でループテストを実施した結果。前の2回のループテストと比べると結果が激しく上下していることが分かる

 もっとも、冷却ファンのようなアクティブな冷却機構を持たないにもかかわらず、ここまで性能を引き出せている点は評価できる。気温が26度以下なら、性能低下をもっと抑えられるだろう。快適に過ごせる室内であれば、あまり目くじらを立てるほどではない。

 なお、8コアGPUモデルでは発熱時の性能低下が緩やかではないか? と予想されるが、手元に製品がないため確認できていない。

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